- 日時: 2013/08/17 21:00
- 名前: しろ (ID: bYDysqEC)
「ちッ……臭ぇな」
悪態をつくセーヤの横で頷くセナ。その後ろには無言で腕を組むトール。 彼らはセズナの街を離れ、例の沼地へと足を踏み入れていた。 水の腐敗する臭いだけでなく、何か肉が腐った様な臭いが入り交じり、彼らの気分を害するものだった。
「それにここは草木が伸び過ぎだ……いざ戦闘になった時、視界が遮られますな」 「そうですね、それにここは地盤が緩い。戦闘時に足を捕られる可能性も否定できませんね」
トールの言葉に同意しつつ、冷静に戦場となりうる場所を読み取るナイゼ。 その顔には街を出立する前の余裕はなかった。 そんな彼らの言葉を遮るように、ナイゼの横に立つ女が口を開いた。
「大丈夫、私達なら勝てるよッ! 絶対ッ! 」
そう言いながら笑みを浮かべる彼女の名はレジーナ・シルバーナ。ナイゼの妹である。 彼女も兄と同じようにハンターとして得物を振るう狩人、その肩には巨大な弩を担いでいた。 眼光が鋭く、どこか人を寄せ付けない風貌をしたナイゼとは違い、人形の様な大きな目とほのかに紅いふっくらとした唇は、どこかしら人形を連想させる容姿である。 だがその顔には至るところに傷が残っており、それは彼女の身に付けている装具から出ている肢体にも多く見える。 それほど激戦をくぐり抜けてきた猛者であるという証拠であろう、体は小さいが、弩を引く腕は男顔負けの太さであった。 ニコニコと微笑むジーナの頭をナイゼは優しく撫でながら微笑み返す。
「そうだな、私達なら大丈夫だろうが……いかなる時も油断はできないからな」 「そうだぜ、ジーナ。ナイゼの言うとおり、油断は禁物だぜ。今回の相手は凶暴らしいからな」
そう語るのはケイト・レグ。ナイゼの友であり、彼は腰に2m近くはあろうかと思われる程の長刀を佩いていた。 彼は幼い頃からのナイゼの親友らしく、これまで彼と共にハンター稼業を続けてきた。 短髪のナイゼとは違い、肩を超えるほどの黒い長髪に太く繋がった眉毛が特徴的な男である。 顔もゴリラの様に厳つい顔立ちの彼は、背丈もトールと同じほどに高いため、一番三人の中で存在感を放つ存在であった。 そんな彼にジーナは「大丈夫、大丈夫ッ!」と声をかけ、自身の隣にいたセナに笑顔で「ねッ! 」と同意を求めてきた。
「え、ええ。大丈夫ですよ、私達なら」 「ほらねッ!セナちゃんもそう言ってるんだから大丈夫だよ、絶対ッ! 」
苦笑いで応えるセナと、ニコニコと笑顔のレジーナ。 そんな緩い空気に、セーヤは呆れたように肩を竦めた。
「お前のその暢気さは俺様でも羨ましいかぎりだよ」 「隊長も普段は彼女と似たようなもんだろうが」
すかさずセーヤの言葉に鋭いツッコミを入れてきたトールの光る頭を、セーヤは無言でどついた。 勢いよく前の沼地へと倒れ込むトール。頭から沼地へとダイブしていた。
「ちょっと!隊長ッ!? 」 「あっ、すまん。やりすぎた」
その後、彼らが喧嘩になったのは言うまでもない――。
――侵入者を見失った。
彼は小さな得物を見失っていた。 小さな獲物は草の合間を巧みにすり抜け、上手く彼の足を避け、姿を隠した。 元来、あまり視力も嗅覚も良くない彼にとって、小さな得物を探すことは困難な事であり、また疲労するものである。 ゆっくりと歩を進めつつ、周囲を見渡す……が、そうそう見つからない。 彼は小さな目を更に小さく細める。
――疲れた。
体に泥を付着させる重みからか、彼は少々疲れていた。 この泥は己の身を守ってくれる物になり、敵を仕留める為の武器にもなるが……やや重みがある。 そのために彼ら一族は少々疲労しやすい。 その疲労を癒すために彼らはよく眠るのだが、その眠りを取るためには安全な場所でなくてはならない。 それゆえ彼らは異様に自身のテリトリーに侵入者が入ってきたのを拒むのだ。
彼はこれ以上己の疲労を増やすのは得策ではないと考えた。 こうしてあの獲物を探している間にも、また新たな侵入者が己の縄張りに入り込まないという保証はない。 彼はゆっくりと旋回すると、元の来た道へと歩を進め始めた。
――眠りにつこう。
彼の頭にはもはやあの小さな獲物の姿はなく、己の睡眠欲しかなかった――。
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>>106 お待たせしました(笑) 今ちょっとこれからどのような形式で話を続けていくか考えてます(-_-;)
@今までどおり、1話1話完全に仕上がってから上げるか。 Aとりあえず途中でも出来ている部分のみ徐々に上げて、 最終的に@の完成系へと持っていくか。
よければ皆様のご意見をいただければ幸いですm(_ _)m あとキャラの紹介表みたいなのもあったほうがいいかな? 需要ありそうなら作りたいけど(笑)
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