Re: 【3‐9更新】書き物的なもの【※返D】( No.129 )
  • 日時: 2013/09/25 17:28
  • 名前: しろ (ID: RbY9nfFt)



 己を踏みつけようと降りおろされた化け物の右足をすり抜け、トールは左足へと狙いを定める。
狩りの基本はまず敵の動きを止める事――トールは飛び散る土を盾で払いのけながら、宙を舞う。

「ッせいッ!! 」

 勢い良く振り下ろした剣は金属音を響かせながら、火花を散らせる――弾かれた。
刀剣での攻撃は案の定この化け物には通らない――トールは苦々しげに舌打ちをしつつ、化け物の足元より離脱する。

「せぇりゃぁあぁ! 」

 トールの攻撃に続くようにナイゼも盾を構えつつ、一気に化け物との距離を詰める。
それを迎え撃つように化け物はナイゼを噛み砕こうと巨大な口を開け、彼に噛み付こうとするが……。

「ふんッ! 」

 それを待っていたとばかりにナイゼは左手に持った構えていた盾を思いっきり化け物の頭部へと打ち付け、攻撃を逸らした。
不意をつかれた化け物が動きを止めてしまう。ナイゼがその一瞬の隙を逃すわけはない。

「もらったぁ! 」

 よろけている化け物の頭部――ジーナの攻撃により剥がされた泥によって保護されていない眼下を槍で突く。
それはゆっくりと化け物の皮膚を貫き、肉を抉ってゆく――化け物は咆哮をあげながら、頭部を槍とは反対側へと振り槍を引き抜きつつ尻尾をナイゼへと叩きつける。
盾でその攻撃を受けつつ、冷静に化け物との距離を再度取り、反撃の様子を伺う。

「兄ちゃんやるじゃんッ! 」
「無駄口を叩いてないで援護しろッ! 」

 「はいはい」と舌舐めずりをしつつ、ジーナは弩の狙いを対象の足に定める。
先程も述べたとおり、狩りの基本は獲物の足を止める事――ジーナは周囲を囲まれ動きのとれない化け物の右足に向け、弩を放つ。
沼地に轟く爆音と空気の振動――弩から発射された弾丸は、真っ直ぐに対象の右足へと直進する。
それは爆発の衝撃で空が破れ、対象に当たる前にもう一度内部の火薬が着火――その結果、獲物の足を貫通するという代物であった。
ジーナの放った弾は狙い通りに化け物の右足に直撃、それは対象の泥を打ち砕き、化け物の肉を抉るには十分な破壊力だった。

「あったりー! 」

 流石の巨体もその攻撃には耐え切れず、体制を崩し、地面へと倒れ伏す。
その隙をハンター達が逃すはずもない――始めに動いたのはケイト。
彼はすかさず化け物の負傷している右足の前へと駆け、手にしている太刀を切りつけるのではなく、突き刺す。
化け物の泥が刀剣類の武器から身を保護しているのなら、それがない箇所を重心的に突けばいい――そうすれば殻などないも等しい。
右足より吹き出す血――化け物は身を悶えさせつつ、尻尾をケイトへと向けて叩きつけるが……。

「遅い、遅いッ! 」

 既に敵の攻撃範囲より身を引いていたケイト――これが軽装備者の優れるところだろう。
攻めるときは攻め、引くときはすぐさま引く。これができない者は狩りでは『死』しかない。
ゴロゴロと地面を転がる化け物に休ませることなく自慢の得物を叩きつけるのはセーヤ。
彼は一気に化け物の頭部へと距離を縮め、大剣を振りかぶり、一気に振り下ろす。

「なろおぉぉおッ! 」

 当然攻撃は化け物の付着させている泥と岩により阻まれるが――それで構わない。
セーヤの馬鹿力と、大剣の重さによる叩きつける攻撃には斬る必要はない。叩けばいいのだ。
思いっきり頭部を大剣で殴られた化け物は、一瞬意識を失いそうになりながらも、沼の中へと転がり落ちた。

「あッ! 兄ちゃん、あいつ逃げるよッ! 」
「ここで逃がすわけにはいかないが……これでは手が出せない」

 沼の中に身を隠してから姿を表さない化け物――そこに身を隠されればハンター達は追撃する事はできない。
ハンター達は周囲を警戒しつつ、敵の姿を探すが――化け物はいっこうに姿を見せる気配がない。
セーヤは大剣を地面に突き刺し、額の汗を拭いながら苛立たしげに舌打ちをする。

「とりあえず……行方不明の嬢ちゃんを探すか? ここにいつまでもいるのも考えもんだしな」
「そうですね、セーヤさんの言うとおりです。今は保護対象者を見つけましょう。 奴を狩るより、そちらが優先する事項ですしね」

 ハンター達はひとまず化け物が姿を消した沼地より距離をとり、周囲を警戒しつつ、辺りを探索することとした――。



 彼は暗い闇の中で考えていた。

――なぜ、殺せない?
――なぜ、自分がこれだけやられている?

 確かに先ほどの獲物は、以前に何匹と殺した獲物と同じ。
なのに何故……これほど自分が痛めつけられている?
何故? 何故? 何故?

――数が多いからか? それとも、今までとは違う獲物なのか?

 彼はゆっくりと闇の中を潜水しつつ、考える。
奴らを侮っていた。 侮れる相手などではない事を認識した。
ならばどうする? 答えは一つしかない。
自分の狩りのペースに相手を誘い出す――。

---------------------------------------------------------------

>>125
ようやく戦いの場面へと移れましたw
長かったなぁ(;´Д`)

>>126
いつもご支援ありがとうございます!
なかなか暇がなく…(´;ω;`)
申し訳なさで胸いっぱいです…

>>128
いつもご支援ありがとうございます!
音楽を聴いてると集中して作業できますw
完結まで長い道のりになりそうですが…
これからもよろしくお願いします!