- 日時: 2013/06/12 19:06
- 名前: しろ (ID: qiXQzgoO)
「うわぁ……! 」
レイは思わず息を呑んだ。 どこを見渡しても人、人、人……忙しく行き交う人々の姿に少年は圧倒された。 自慢の一品を売りさばこうと声を張る商人、商人と値段の交渉をして怒鳴る男達の怒声に世間話で盛り上がる女性の笑い声。 思わず耳を覆いたくなるような騒音の中、立ち竦んでいたレイの肩を後ろから叩くセーヤ。 その顔には得意げな笑みが浮かんでいた。
「商業と狩猟の街セズナにようこそ」 「ここがセズナ……」
目の前に広がる無数の露店。レイが今まで目にしたことのない食べ物や生活用品、武具がズラッと並んでいる。 露店を数えようにもあまりのその多さに両手の指でも数えようにも足りないほどだ。 そんな露店を値踏みしながら歩く人々の群れにも彼は度肝を抜かれていた。
「ここがセズナの中心の商業広場だ。 ここで大体の欲しいもんは揃う」 「へぇ……」
感嘆の思いで辺を見渡すレイの姿に、二人の後ろにいたセナは微笑んでいた。
「面白いか? 」
セナの隣で退屈そうに伸びをしているトールが彼女に聞く。彼の問いにセナは小さく頷いた。
「ううん……昔の私みたいって」 「……あぁ。 そうだな、確かお前が初めてここに来たときも似たようなもんだった」
懐かしげに目を細めるトールにセナは苦笑する。
「にしてもお前もでかくなったな」 「それはそうよ、人間だもん」
まるで父親のように感慨深げに目を瞑っていたトールの頭をセーヤが思いっきり引っぱたいた。 パシンッと心地のいい音が広場の雑音の合間に響く。二人の隣を流れゆく人々の視線がトールへと注がれた。
「何辛気臭い顔してやがんだ。 ただでさえ仏頂面のくせに」 「……」
見開いた目で睨みつけるトールの視線を避けるようにセーヤは口笛を吹きながらセナの後ろへと隠れた。
「隊長……これからどうするんです? 」
呆れながら問うセナにセーヤは後ろから返答する。
「まずは……ギルド支部に行く。 金を受け取らなくちゃならん」
ギルド支部に赴き、ギルド支部の男から受け取った小切手にあたる紙と金の交換。 狩猟報酬を受け取る際は必ずこの流れを行う必要があるのだ。
「それから俺達の住処に帰るぞ、いいな」
セーヤ達の傭兵団の拠点もここにあるのだとレイはそのとき思い出した。 この商業地から少し離れた『狩猟居住地区』にあるとセーヤは言う。
「そこはな、ハンターや俺達傭兵団が主に住み着いている地区でな。 俺達の家もそこにある」 「ふーん……」
狩猟居住地区……名前通り多くのハンター、傭兵たちが集まるのだろう。 これから自分はそこで寝起きする事になる……レイは新たな生活の始まりに胸を躍らさせるのだった――。
|