Re: 【3G雑談】書き物的なもの【移行】( No.7 )
  • 日時: 2013/06/12 18:52
  • 名前: しろ (ID: qiXQzgoO)




レイの顔を暖かな光が照らす。
太陽が煌々と照らす中、彼は黙々と歩いていた。
目的地はアンナの向かった街、セズナ。
そこに一団の拠点がるのだとセーヤからレイは言われていた。

セズナは商業都市として栄えていると同時に、狩猟稼業も繁栄している街で、ギルドの支部も街には存在し、多くのハンターの寄る街。
それに伴いハンター達の補佐の様な役割で自分達傭兵団は生活を送っているとレイはセーヤから聞かされていた。
多くの村、街の要衝地点として栄える街セズナ――レイは期待に胸を膨らませていた。
だが今はそれ以上に彼を悩ませている事態があった。

「熱い……」

額から流れ出る汗をぬぐい、レイは顔を顰めた。
村を出発してからゆうに3時間以上は街へとつながる街道を歩いている。
日は彼の頭で煌々と燃え上っていた。

「んだな……ちっ、嫌になるわ」

セーヤの愚痴に隣を歩いていたレイは苦笑する。
筋肉質であり、やや豊満な肉体の彼にはこの暑さは応えるだろう。

「まだまだかかるぞ、隊長」

セーヤの前を歩いてる男が冷やかに言う。
その横を歩いている女は口元に微笑を浮かべていた。
そんな彼らを忌々しげにセーヤは見つめ、舌打ちする。

「お前れみたいに貧弱な体をしてないもんでね、わたくしは」

それを聞いた男と女は鼻で笑い、また黙々と歩き始める。
それから先は特に会話もなく歩き続ける一団。
暑さに項垂れながらもレイは必死に痛む足を動かして彼らに付いて行くのだった――。


「おおっ……こりゃいいねぇ……!」
「あぁ……久々だからなぁ……!」

何故自分がこのような惨劇ばかりに合わなくてはならないのか……彼女には理解できない。
もうどのくらい辱めを受けただろう……もう日も暮れ始めたのか、木々からはわずかな光も差し込まない。
隣で彼女の母の上に覆いかぶさっている男の声がアンナの思考を遮る。

「あんたも年の割にはいいよなぁ……!」

隣に寝かされている母の表情さえも見えない。
だが泣き声だけが男達の快楽に呻く声の合間に聞こえる。

どうしようもできない己の無力……助けにくる者もいない絶望。
既にアンナには振り絞る声も、流れ出る涙も共に枯れ果てていた。
その時、男達の背後から物音がした。

「ぐっ……!? いぎっ!?」

その時突如男達の動きが止まった。
それと同時にアンナの顔に生温かい液状のものが激しく吹きつける。
アンナの口に流れ込むそれは……血。
血の味が口内に広がる。

「な、なんだ!?こいつ……うっ!?」

アンナの上に倒れ伏した男。
だがその男には頭部がなかった。

−!?

大量の血が己の顔面に吹きかけられる。
とても目をあけられず、口も開くことはできない。
だが耳だけは聞こえていた。
肉を貪る生々しい音……隣の男の悲鳴。
そして彼女の鼓膜を切り裂かんばかりの母の絶叫。

−ママッ!?

何が起きているのかまったく理解できない。
だが直感的に母が死んだという事だけは分かる。
自身の上に乗っている男の死体を目にしたからには。
彼女はもう生きる望みを捨てた……すべてを諦め、ただ早く楽になりたいと望んだ。

−もう嫌……嫌……!

その時、彼女は腹部に強い衝撃を受け、それと同時に意識も失った――。


「そろそろ日が暮れるな……隊長、どうする?」

先導していた男が振り返る。
男の言う通り、日は沈みかけ、あたりは闇に包まれつつあった。

「そうだな……まぁ半分以上は来てるだろうし、いっちょここらで野宿しますか」

セーヤはそう男に返すと、街道から外れたところにあった岩の上に腰かけ、大剣を下ろす。
それに続いて男と女もそれぞれ武器を取り外し、レイも背負っていた革製のリュックを下ろした。
そのリュックには食料品といくつかの野外用品がしまってある。

「さてと……」

男はその中から火打石を取り出し、レイに周囲から草木を集めてくるように指示を出す。
今日はここで野宿……レイにとっては初めての体験であった。

手早くレイは周囲に散らばっていた草木を女と共に集めると、男はそれに要領よく火をおこした。
暖かな光が闇を明るく照らしだす……レイは疲れ果てた体を焚火の前に下ろし一息つく。
座った瞬間、ふうと口から息が漏れだす。
そんなレイを一人セーヤは見つめニタッと口元を歪めた。

「疲れたか、レイ?」

レイは頷き、リュックから取り出したパンをセーヤへと手渡す。
体を動かすだけで体中が痛い。

「今日はよく寝れそうだよ、セーヤ」

そうだろうともとセーヤはパンを頬張りながら答える。

「明日の昼頃にはセズナだろ。今日は早く休めよ、明日もはええぞ」

焚火にあたる4人の姿を暗闇の中から鋭い瞳が睨みつけているのにこの時誰も気がついていなかった――。