Re: 小説を書きたいひとはここへ!( No.311 )
  • 日時: 2013/12/24 18:07
  • 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: xBGYt6Ds)

〜第四話「陸の女王と空の王・中編」〜

こやし玉を投げつけられたリオレイアは、一瞬その臭いに怯みはしたが、飛び立とうとはせず向かって来る。
(逃げない……。卵がここにあるから……。卵、タマゴ、たまご……。そうだ、卵を持って行けば付いてきてくれるハズ!)
私はまだ残っていた卵の一つを抱え、巣の外へ走り出した。
怒りに火が点いたリオレイアはこちらへ突進してくる。

いくらレンが上位ハンターとはいえ、飛竜のつがいを同時に相手するのは危険すぎる。
恐らく負ける事はないだろうが、大ケガを負うかもしれない。
レンの防具「ジンオウシリーズ」は下位モンスターの攻撃くらい簡単に弾いてくれるだろうが、弾いたとしても衝撃は内部まで伝わる。無傷では済まない。
しかも彼は自慢の顔を見せたいが為にヘルムを被っていない。頭に攻撃を貰ったらおしまいだ。

私は卵を抱えたまま、断崖絶壁の前まで逃げた。
だが、前には岩壁、後ろにはリオレイアである。
こうなったら選択肢は一つ。リオレイアと戦うしかない。

私は卵を頭上に持ち上げると、リオレイアの突進を身体を捻って躱し、振り返るリオレイアの顔面にそれを叩きつけた。
リオレイアの目をドロドロした卵白が覆い、視覚を封じた。
しかし、さらに怒りに油をそそがれたリオレイアは、勘で突進を繰り出す。
だがその方向は見当違いだった。リオレイアの頭は岩壁に激突した。

私は目を回すリオレイアの背に飛び乗る。
リオレイアの首にまたがり、弱点である眉間にコマンドダガーを何度も振り下ろす。
だが相手は大きな身体を持つ飛竜。そう簡単に頭蓋骨に穴をあける事などできない。
穴が開く前に、リオレイアは意識を取り戻した。
肉や骨を抉られる痛みに悶え苦しみ、暴れるリオレイア。
私は掴まっていられず、振り落とされ、先ほどリオレイアが衝突した岩壁に叩きつけられた。
衝撃で右腕の盾が飛ばされ、リオレイアの背中に引っかかった。
防具のお陰でなんとかまだ戦える程度のダメージに抑えられたが、普段着なら即死していたに違いない。

リオレイアは起き上がろうとする私に近づくと、右足で踏みつけ、噛み付こうとした。
(こやし玉、こやし玉……。さっき全部投げちゃった!)
そして私を口にくわえると、両足でおさえ、引き千切ろうとした。
メキメキメキ……。防具が裂ける音が聞こえる。
防具が裂けてしまえば、次は私自身が裂ける番だ。
だが、私もおとなしく食べられるわけにはいかない。
リオレイアの口の中に入った左手を振り回す。口の中の柔らかい皮膚は簡単に裂けた。
血があふれ出す。
しかし、大量のリオレイアの血が私の手を滑らせた。
コマンドダガーは私の手を離れてリオレイアの上顎の内側に刺さった。

流石のリオレイアもこれで吐き出さないはずはない。
私を吐き出したリオレイアは、口を閉じて飛び立とうとした。
……だが、飛び立つことはできなかった。
口を閉じることにより、口の中のコマンドダガーが頭蓋骨を貫通し、脳にまで到達したからだ。
断末魔の叫びを上げることすらなく、リオレイアは絶命した。

私はリオレイアの下敷きになり、自力で抜け出すことはできそうもなかった。
じきにアイルーの救助部隊が訪れるだろうが、それまで圧死せずに持ちこたえられるかどうかは分からない。五分五分といった所だろうか。

そろそろレンはリオレウスからの剥ぎ取りを終え、こちらに向かっている頃だろう。
サインを送ってみよう。もしかしたら彼が助け出してくれるかもしれない。
もしその両方が間に合わなかったら……私の人生はここで終わる、ということになるのだろう……。

〜第五話につづく〜