Re: 小説を書きたいひとはここへ!( No.318 )
  • 日時: 2013/12/27 15:19
  • 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: /imax57J)

第六話、だいぶふざけましたw
たまにこんなの入れますが、基本は真面目に小説書きますので、これからも宜しくお願いします。
(そもそも読者いるのか?とか言ってはいけない)

では本編へ。

〜第七話「加工、お願いします!」〜

昨夜はよく眠れなかった。

部屋の中に風が吹き込んで来ていた。当然虫も入ってくる。
頬を蚊に刺されたようで、小さな赤い腫れができていた。

扉と壁は私が次の狩りに行っている間に修復しておく予定らしい。
この宿舎は私のものではないし、しかも私には全く非はない。
費用はギルドの負担ではなく、全額を壊した張本人が負担するらしい。
……当然のことだ。
顎の治療費?ナンノコトカナー?

私は先日狩猟(と言うより、ほぼ相討ち)したリオレイアの素材とコマンドダガーを持って、加工屋に駆け込んだ。
素材はギルドから報酬として支払われたものだ。剥ぎ取りなんてあの状況でできる訳がない。
「やあナナミ、今日は武器の強化かい?」
ユウの兄で武具職人見習いのカイトが尋ねる。

カイトとユウは加工屋の子で、修行の為にこのスぺリナを訪れていたのだが……。
ユウはここの親方から、
「素質が全くと言っていいほど感じられない。やるだけ無駄だ」
と言われて追い出されたのだ。
ユウの今の仕事は実家に帰るための旅費を稼ぐのが目的だったらしいが、アイルーキッチンの店長からは、
「人間にしてはよくできるニャ。このままの調子で頑張れば、いつかは自分の店を持てるかもニャ?」
と結構期待されており、ユウもこのまま仕事を続けるつもりらしい。

因みにカイトは私の彼氏でもある。レンなんか目じゃない。
……一応彼は私の命の恩人ではあるのだが。

「そうね、このリオレイアの素材で、コマンドダガーを強化できないかしら……?」
そう言いながら私は鱗と甲殻を五枚ずつ、それから市場で購入してきた毒袋を八個ほど渡す。
「……だいぶ余るけど」
「それじゃ、残りはカイト君にあげる!」
「でも僕ハンターじゃないし、何に使うんだよこれ……」
「生活費の足しにでも」
前にも言った通り、殆どの下位ハンターの財布はいつもスカスカだが、たいていの職人見習いはさらに重症な慢性の金欠病である。
「それじゃ、ありがたく頂きます!」
プライドというものは多分無い。だがそこが可愛くもある。

「師匠!加工依頼です!」
カイトが師匠に声をかける。
「おう、カイト。よくやってるな。だが、そんな女にうつつを抜かすんじゃないぞ」
そんな女とは何だ。ちょっと腹が立つ。
「それはどうでも良いとして、そろそろ実際に武器の強化をやってみないか?」
「ありがとうございます!」
「そこの武器で試してみるといい」
おいおい、それは私のだぞ。

だが、カイトなら大丈夫だろう。
実家のある村に居た頃、カイトが剥ぎ取りナイフを一から作っているのを見たことがある。
私が腰に差しているのがそれだ。並の武器より鋭い。

「ここをこうして……」
カイトはコマンドダガーの表面に張られているドスジャギィの皮を剥ぎ、刃の部分を熱し始めた。
手順も何も聞かず、作業を始めるカイトに、
「ん、もしかしてお前、武器の強化をやった事があるのか?」
と問いかける師匠。
「いえ。生産なら何度かやりましたが」
「なら大丈夫だとは思うが……」
心配しているのが口調から伺える。
師匠は続ける。
「そこの女ハンター。もし失敗したら俺が新しく武器を作り直してやる」
「何ですか、師匠。その、僕が失敗するみたいな言い方は」
カイトが言い返す。でも普通は一発で成功しないよな。私もそう思った。

そして言い返しながらもカイトは作業の手を止めない。
刃を引き伸ばして細長くし、それを前もってあけておいた毒袋の中身に浸す。
ジュウジュウと音を立てて液体が蒸発し、刃は紫色っぽい色になった。
「ほう、なかなかいい出来だな」
師匠がうなずく。

「……ただ、この調子だとあと三日はかかりそうだ。三日後に取りに来い」
良い武器が出来るなら三日くらい気にしない。
これは下位武器だが、G級武器になると、加工に一年近くを費やすものもあるという。
私は武器の出来栄えを楽しみにして、加工屋を後にした。

〜第八話につづく〜