Re: 小説を書きたいひとはここへ!( No.321 )
  • 日時: 2013/12/29 12:28
  • 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: pTuiZmZx)

〜第九話「恐怖を呼ぶ乱入・前編」〜

氷海までは荷車で半日、その後飛行船に乗り換えて丸二日。
狩場の近くにはたいてい飛行船を下ろせる場所などないので、もう一度荷車に乗り換えて向かう。
ここまでくればあと数十分で氷海に着く。

私達四人は荷車を下りた。

「寒い……。」
「僕も……。」
ボウとサクが震えている。二人揃ってホットドリンクを忘れたらしい。
こういう所も似るんだな、姉弟って。
しょうがないので私のを一杯ずつ渡した。
因みにゴア装備の人は荷車に酔って吐いている。
すぐ治るとは思うのだが。只の車酔いだし。

「ふう、やっとスッキリしたよ」
おいおい、まだゲロが口についてるぞ。
私はゴア装備の人に消臭玉を投げつけた。
因みに私はいつも大量の狩猟具を狩場に持ち込んでいる。少し重いが、無くて困るよりマシだ。
フルフルには効かないとの事だが、一応閃光玉も入れておいた。
狩場には何が出るか分からないからだ。この地域にはティガレックスが出たという話も聞いたことがある。

フルフルは洞窟に棲息しているとの事。私達は武器を抜いて洞窟に入った。
遠くに白っぽい小型の飛竜の姿が見える。恐らくフルフルだ。
話に聞いていた通り、可愛らしい。モンスターをペットにするなら間違いなくこいつで決まりだ。
だが何か様子がおかしい。フルフルは何かに怯えているように見える。
私以外は誰も気づいていないようだ。
「ナナミさん、行きましょう!」
サクはクロスボウガン改を構え、Lv2通常弾を発射した。
見事フルフルに命中。フルフルは気づき、こちらに電撃ブレスを放ってくる。

「サク、危ない!」
私はサクをタックルで吹き飛ばし、ブレスが当たらないようにした。
だが、私の右足にブレスが命中する。
そのまま私は転倒し、脚が痺れて立ち上がることができない。
フルフルは私の方へ首を伸ばし、噛み付こうとした。

痺れが取れて来た私は反撃に転じる。とっさに抜いた剥ぎ取りナイフでフルフルが伸ばした無防備な首に斬りつけた。

……フルフルの首が胴体と離れ、地面に落ちる。
「流石ですね、ナナミさん。飛竜を一撃で倒すなんて」
ボウが甲高い声で歓声を上げる。
別に狙った訳ではない。偶然だ。
もしあと一瞬でも遅かったら、私は頭をかじり取られ、即死していただろう。

私達はフルフルのぶよぶよとした皮を剥ぎ取る。この感触が心地いい。
四人が三回ずつ剥ぎ取ると、フルフルの死体はほぼ丸裸になっていた。
あたり一面に血の匂いが広がっている。

「もしかしたら、この匂いを嗅ぎつけて、もっと強いモンスターが来るかもしれない」
ゴア装備の人が呟く。この人の名前訊き忘れた。帰りに訊こう。
そういえば、先ほどフルフルは怯えていた。フルフルを捕食できるほどの強力なモンスターがこの近くに潜んでいるのかもしれない。
「それじゃ、荷車に戻ろうか!」
私達は荷車に戻ろうとした。

ところが、荷車は……。
……巨大な黒っぽいモンスターに踏みつぶされていた。
そのモンスターは、荷車を曳いてきたポポを口にくわえ、三口ほどで平らげると、こちらに気づき、凄まじい咆哮をあげた。

「ありゃ……何だ……?」
茫然とするゴア装備の人。
「きゃあああああっ!」
「ぎえええええっ!」
咆哮並みにうるさい悲鳴をあげてブルブル震える姉弟。

だが私は何故か恐怖を感じなかった。むしろ血が騒ぐ。
「みんな、上空の古龍観測船に助けを呼んで!私は助けが来るまでこいつを食い止める!」
「……おう、分かった!食われるなよ!」
我を取り戻したゴア装備の人が返し、早速観測船にサインを送る。
私はプリンセスレイピアを構えると、大声をあげて巨大なモンスターに向かって突進した。
「うらああああああああああああっ!」

〜第十話につづく〜