- 日時: 2013/12/29 15:57
- 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: pTuiZmZx)
〜第十話「恐怖を呼ぶ乱入・後編」〜
私はモンスターの左脚に斬りかかった。 堅い。難なく弾かれる。
(脚が堅いとなると……) 私はそのまま左脚に飛びつき、木登りの要領でよじ登った。 背中に着いたら、今度は首に滑り降り、頭を両足で挟み込む。 モンスターの黒っぽい皮膚に剥ぎ取りナイフを突き立ててみる。 やはり堅いが、刃が通らない訳ではない。 (ここなら攻撃が通る!) 私は左手に剥ぎ取りナイフ、右手にプリンセスレイピアを持ち、それをザクザクとモンスターの頭に突き刺す。 モンスターも痛みに怯む。が、すぐに暴れはじめ、私を振り落とす。
私は氷の浮く海の中へ落とされた。 冷たい水が体温を奪う。ホットドリンクを飲んでいるため少しはマシになっているが、それでも数分で凍死してしまうだろう。 私は流氷のひとつに手を掛け、上に這い上がると、その流氷にモドリ玉を叩きつけた。
何とか海から上がることはできたが、目の前には先ほどのモンスターがいる。 だが、モンスターは疲れたらしく、ダラダラとよだれを垂らしている。 よだれが潰れた荷車の残骸に当たる。すると荷車の残骸はジュウジュウと音を立てた。 強い酸を含んでいるらしい。触れたら防具ごと溶けて大やけどを負う。
私はポーチから生肉を取り出すと、プリンセスレイピアで何度か突き刺して毒を含ませ、モンスターに投げ与えてみた。 モンスターは一口で肉を平らげた。 ハンターの一食分だ、モンスターには到底足りないだろう。 それでもいくらか疲労を回復したらしく、よだれを垂らすのを止めた。 だが、毒を含んだ生肉は美味しくなかったようで、モンスターは背中の筋肉を赤く隆起させて怒りの咆哮を上げた。
モンスターはこちらに突っ込んでくる。私は下に潜りこんで、柔らかそうな腹を突く。 先ほどの頭よりも柔らかいようだ。血しぶきが飛び、私の顔にかかる。
……だが、下に入り込んだのがマズかった。 モンスターは右足を振り上げ、私を踏みつぶしにかかる。 私は盾を構え、攻撃を弾こうとする。
ベキッ! 嫌な音がした。 私の左肩に凄まじい痛みが走る。 衝撃で盾が砕け散り、しかも左肩が外れたようだ。
私は無事な右腕で左腕を掴み、肩の関節を嵌めようとした。 「うぅぅぅぅ……」 あまりの痛みに思わず声が漏れる。だがモンスターは待っていてはくれない。 私に向かって前進しながら噛み付いてくる。 私は噛み付きを横に跳んで躱すと、関節の外れた左手でモンスターの顎にアッパーを入れる。 ゴキン! 恐らくモンスターへのダメージはほぼ皆無だが、左肩は嵌った。 勿論、痛みは治まる気配がない。
続けて、モンスターは振り向きながら太く長い尻尾でこちら側を薙ぎ払う。 私は盾を使って弾こうとするが……。 しまった、盾がないのを忘れていた!
――私の右半身を今まで体感したことのない程の衝撃が襲う。 地面に叩きつけられたようだ。 全身が痛い。意識を保つことすら厳しい程に。 左腕と首はかろうじて動かせるが、他は骨が折れているらしくまともに動かない。 やはり逃げた方が良かったのだろうか、と少し後悔した。
モンスターは勝利の雄叫びをあげ、私を胃袋の中に収めようと近づいてくる。 モンスターが立ち止まる。そして、こちらへ口を近づけてくる。 私は最後の抵抗を試みることにした。 左手に剥ぎ取りナイフを持ち、でたらめに振り回す。 奇跡的に、剥ぎ取りナイフはモンスターの右目を抉り出した。 モンスターが一瞬怯む。 私はもう助からないだろうが、助けを呼びに行った他のメンバーの為にも、少しでも時間稼ぎをした方がいいだろう。 手を止めずにもう数回振り回してみた。 今度はモンスターの舌に突き刺さった。モンスターは痛みに顔を上げた。
その時、上空から大きな影が現れた。 それはだんだん近づいてくる。モンスターは気づいていない……。
〜第十一話につづく〜 |