- 日時: 2014/01/24 18:24
- 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: awRhgtfW)
〜第十四話「抽選会」〜
「てぇ〜い☆」
……私は気の抜けるような掛け声と地面に叩きつけられるような衝撃で目を覚ました。 (ここは……) 上位昇格試験抽選会の会場のようだ。
掛け声の正体はリンカだったようだ。 「ナナミさん、本当ゴメン!」 どうやら私はベッドごと会場へ運ばれ、リンカにベッドから落とされたらしい。 ケガ人を放り投げるとは……。
私は地面に手をついて起き上がった。 (ケガが治ってる……!?) だが、身体が重い。立つのが数週間ぶりだからだろうか。 確実に筋肉が落ちている。日常生活には問題ないだろうが、ハンターとしては鍛え直さなくてはならない。
私は寝間着のポケットからお守りを取り出した。ぼんやりと光っている。 どうやら傷の治りをよくする効果があるらしい。
カウンターの上には、ギルドマスターが座っている。 ギルドマスターは竜人族の老人だ。 今は起きているのか寝ているのか分からないような顔をしているが、昔は凄腕のハンターだったらしい。
周囲には、私とリンカを含め五人のハンターがいる。 他の三人も上位昇格試験を受けるのだろう。皆強そうな装備である。
一人目、唯一の男ハンターは大剣使いのようだ。 見上げるような大男だ。私は実際に見上げながらそう思った。 身長は二メートル近くあり、いかにも力強そうだ。 多分、太刀くらいなら片手で振り回せるだろう。 ディアブロシリーズとブレイズブレイド改を装備していることからも、なかなかの実力があるのが分かる。
二人目は弓使い、体格は共に女ハンターとしてはごく普通といった所だろうか。 インゴットシリーズにビジョンofロストというあまり見かけない組み合わせの装備だ。
三人目は見慣れない形状の武器を装備している。何とかアックスとかいう奴。 デザインからして恐らくリオレウスの素材で作られているのだろう。 ああ思い出した。チャージアックスだ。 防具はグラビドシリーズ。いかにも堅くて重そうだ。
そこに寝間着の私と愛らしい瞳の十歳の少女である。違和感が凄まじい。
「オッホン!」 ギルドマスターが咳払いをした。 ギルドマスターの座っているカウンターには、いつのまにか五枚の封筒が置かれている。 試験のルール説明が行われるようだ。
ギルドマスターが口を開いた。 「只今より、上位昇格試験を始める。昇格試験のルールは簡単。好きな封筒を一つ取り、中に入っている絵を確認する。その絵に描かれているモンスターを今から三か月の間に狩猟すれば、上位昇格試験合格となる。但し、モンスターの狩猟は一人で行うこと」
他のハンター達はメモを取っている。 私は大丈夫だ、この位は憶えられる。
「それでは抽選開始!封筒は早いもの勝ちだ」
たちまちハンター四人の乱闘が始まった。 私はもちろん参戦しない。今の状態では瞬殺されるだけなので、遠巻きに眺める。 ……が、決着はすぐについた。
十秒近く殴り合っただろうか。 突然、三人のハンターが宙を舞った。 そして、ほぼ同じ所に落下した。いかにも痛そうだ。 その横で、嬉しそうに飛び跳ねているのは……リンカだ。 「あたしがいちば〜ん☆」 リンカは左端の封筒を取った。
後の三人はしばらく目を覚ましそうにないので、私が次に封筒を取る。 私は真ん中の封筒を取った。
三十分後、他の三人も目を覚まし、一斉に封筒を取った。 「それでは、封筒を開けるのだ!」 ギルドマスターが掛け声を掛けた。
私の封筒の中身は、青白い馬のようなモンスターの絵だった。 裏に小さくこうかかれている。 『幻獣 キリン』 装備はたまに見るが、どんなモンスターなのかは知らない。牙獣の一種だろうか。
他のメンバーの紙も見てみることにした。
大剣の人の紙には、黒っぽい四足の竜の絵が描かれている。 『迅竜 ナルガクルガ』 これも聞いたことがないモンスターだ。
弓の人の紙には、蟹のようなモンスターが描かれている。 『鎌蟹 ショウグンギザミ』 似たような名前のダイミョウザザミは前に討伐したことがあるが、ショウグンとはなかなか強そうな名前である。
チャージアックスの人の紙には、山が描かれている。 あれ、モンスターはどこ? 裏を見ると、『尾槌竜 ドボルベルク』と書かれている。 山のようなモンスターなのだろう。
そして、リンカの紙には、白く輝く六足の龍が描かれている。 『天廻龍 シャガルマガラ』 強そうな名前だ。そして、名前からして、ゴア・マガラと何か関係がありそうだ。
「それでは、健闘を祈る」 ギルドマスターが締めくくった。
キリンかあ、どんなモンスターなのだろう……。 先ほど言った通り、私は装備しか見たことがない。部屋の扉をブチ破った変態とか……。
まずは、落ちた筋肉を戻さなくては。 期限は三か月。急がなくては……。
〜第十五話につづく〜 |