Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.629 )
  • 日時: 2014/03/21 21:31
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: hT4uaac9)

 三章 コックと商人とオトモアイルー

 ライラとの挨拶を終えて、カトリアとアストは次へ向かっていた。
 そこは、小さいながらテーブルと椅子が置かれ、そのカウンターからいい香りが漂っている。
 カウンターの向こう側は、一人の女性がのんびりと、しかしテキパキと調理していた。
「もしかして、コックですか?」
 アストは目の前の状況から推測し、カトリアに訊いてみる。
「うん。私達のキャラバンの、皆のお母さんみたいな人かな」
 カトリアはそう答えながら、カウンターの向こう側の女性に話し掛ける。
「ルピナスさん、良いですか?」
 カトリアの言葉に、ルピナスという女性はゆっくりと向き直った。
 水色のロングヘアは黒いリボンに纏められ、やや垂れ目な形の瞳は明るい碧眼をしている。
「あらぁ、カトリアさん。どうしましたかぁ?」
 喋りが、遅い。その上に語尾が間延びしている。 
 アストからすれば慣れない口調だが、カトリアは団長だけあって既に慣れているのか、普通に話を続ける。
「この人が、私達のキャラバンの新しいハンターさんです」
 これまでと同じ、アストはカトリアの一歩前に出て自己紹介をする。
「アスト・アルナイルです。今日からお世話になります」
「はぁい、アストくんですねぇ」
 ルピナスは手に取っていたフライパンを一度置くと、静かに手を組んでアストと向き合う。
「私はぁ、ルピナス・クリティアと言いますぅ。皆さんのためにぃ、美味しいごはんを作ってますぅ。よろしくお願いしますねぇ」
 警戒心の欠片も見当たらない様子で、ルピナスは笑顔で応えてくれる。 
「アストくんはぁ、どれくらい食べますかぁ?」
 ルピナスは質問をアストに向けてきた。
「え?えーと?普通よりはちょっとは多目には食べてます、かな?」
 普段の食事量などあまり気にしていないので、アストは曖昧に答えた。
 それを聞いて、ルピナスはゆっくり頷いた。
「分かりましたぁ。今日の晩ごはんからぁ、もう三合くらい、ごはんを炊きますねぇ」
「さっ、三合っ?」
 そんなに食べられないですよ、とアストは言おうとするが
「さぁ、今日からまたごはんの時間が楽しくなりますよぉ」
 ルピナスの張り切るような、嬉しそうな表情を見ると断れなくなってしまった。
 頑張って食べないとな、と今晩を覚悟するのだった。

「最後は、私達のキャラバンのお財布担当かな。商人として頑張ってるの」
 ルピナスとの挨拶を終えると、最後のメンバーの元へ向かう。
 カトリアの案内の先には、受付嬢のエリスよりも幼さそうな少女がカウンターの向こうで、そろばんと格闘していた。
「シオンちゃん、忙しいところ大丈夫?」
 カトリアが声を掛けると、そろばんと格闘していた少女はパッと振り返った。
 赤みを帯びた、朱色に近い短い茶髪に、レモンのように黄色い瞳が、カトリアの蒼い瞳と合う。
「はい団長っ、大丈夫ですよーっ」
 シオンちゃん、と呼ばれた少女は元気よく反応する。
「っと、そちらはどなたですかっ?」
 シオンはアストの方を見て、カトリアに訊いてみる。
「この人が、私達のキャラバンの新しいハンターさんだよ」
 カトリアのそれに合わせて、アストも自己紹介に出る。
「俺は、アスト・アルナイル。よろしくな」
「おぉーっ、ついに団長が認めたハンターさんですかっ!ということはっ、かなりの凄腕に違いな……」
 シオンは勝手に話を進めていこうとしているので、アストは慌てて割り込んだ。
「いやっ、まだルーキーのルーキーだから、そんな凄腕とかじゃないって」
「えっ、そうなんですかっ?またまたぁ、謙遜してるんでしょうっ?」
「じゃあコレ、ギルドカード」
 アストは人の話を聞かないシオンに、自分のギルドカードを見せてやる。
 シオンはそれを手に取って内容を目に通していく。
「ありゃっ、まだ依頼を受けたことなかったんですかっ?」
「残念ながらね。だからルーキーのルーキーなんだ」
 アストは軽くため息をつく。
 シオンはギルドカードをアストに返すと、背筋を伸ばしてアストに向き直った。
「はじめましてっ!シオン・エーテナと申しますっ!不束な者ですがっ、拙い商売をやらせてもらってますっ!」
 ビシッ、という擬音が聞こえてきそうなほど背筋を伸ばしながら、なぜか敬礼もしている。
「何かこれが欲しい、こういうものを取り寄せたいって言うときはいつでもどうぞっ!」
 終始元気よく受け答えしてくれるシオン。
 明るくて元気だと思う反面、こんな様子でキャラバンの財布を任せていていいのだろうか、とも思ったアストだった。

「うん、これで全員だね。以上が、私達のキャラバンのメンバー」
 再びハンター用の馬車に戻ってきたアストとカトリア。
 アストはまず率直な感想を答えた。
「俺を除いたら、みんな女の人でしたね」
 カトリア、エリス、ライラ、ルピナス、シオン。
 皆、女性である。
「そうね、何故か女の子ばっかりになってたの」
 カトリアもそれは自覚していたようで、アストの率直な感想を肯定する。
「おいおいカトリア、オレを忘れたのニャ?」
 不意に、どこからか声が聞こえてくる。語尾に「ニャ」がついている所、アイルーだろうか。
 気が付けば、アストの背後に純白の毛並みを持った一匹のアイルーが立っていた。
「あ、ごめんねセージ。忘れてた」
 カトリアは特に悪びれもせずに口だけでそのアイルーに謝る。
 セージ、と呼ばれたアイルーは彼女の隣にいるアストに目を向ける。
「アンタが、オレ達のキャラバンの新しいハンターかニャ?」
 セージの言葉に、アストは「おう」と頷いた。
 そのセージは、じっとアストを睨むように見ていた。
「な、なんだよお前」
 アストは反論するが、セージはすぐに答えた。
「やる気に満ちた目をしているニャ。だが、自信はまだニャいみたいだニャ?」
「よ、よく分かるな」
 アスト自身、それは否定出来なかった。
「ま、その内嫌でも自信がつくニャ。とりあえず今はよろしくニャ」
 セージは掌(肉きゅう)を差し出す。
 アストもそれに合わせて、握手する。
「あのねセージ。ちょっとお願いがあるの」
 握手を終えると、カトリアがセージに話し掛ける。
「何ニャ?」
「アストくんのハンターとしての指導、頼める?」