Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.658 )
  • 日時: 2014/03/23 12:01
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: ZsJK87Ly)

 四章 初めての実戦

 セージはアストとカトリアを見比べながら確認するようにカトリアに聞き返す。
「オレが、こいつの指導をしろとニャ?」
 カトリアはそれに頷いた。
「うん。アストくんはまだ実戦を経験したことないし、ここは実戦慣れしてるセージにお願いしたいの」
 確かに、アストはまだギルドからの正式な依頼を受けたことがないため、狩りを行うということ自体がまだ慣れてない。
 本人もそれは否定しなかった。
「そりゃ俺はそうですけど、そんな無理に指導を付けるほどじゃないですよ。これでも訓練所は一定の成績で合格してますし……」
「その自信がダメなんだよ?アストくん」
 カトリアはアストの言葉を止めるように割り込む。
「狩り場では何が起きるかは分からないの。教科書通りのセオリーは、通じたとしてもそれは最初だけ。下手に教科書の知識だけ身に付けてからハンターになった人が一番挫折しやすいの」
 カトリアは子供に教え付けるように言葉を続ける。
 まるで自分が身を持ってそれを経験したかのような口振りだ。
「え、えーと……ハンターじゃないカトリアさんに言われてもなぁ……」
「カトリアの言う通りニャ」
 今度はセージがアストの言葉を遮る。
「自分の腕を甘く見ているルーキーが、天狗になって身の程に合わないモンスターを相手にして死んでいく者も多いニャ。オレなら、多少は素人に歯止めを掛けるくらいは出来るニャ」
「……」
 そこまで言われては、アストも押し黙った。
 内心に憤りは感じていたが、カトリアとセージの言うことは正しい。それを真っ向から否定出来るほどアストに実力はない。
「分かりましたよ、カトリアさん。じゃあ、頼むなセージ」
 アストは渋々了解した。
 オトモアイルーに指導されると言うのもあまり心地よい気分ではないが、自分のことを考えてのことだ。反論は出来ない。
「うん、素直でよろしい」
 カトリアは安堵したように頷いた。
「じゃあ、早速依頼を受けてもらおうかな」
 アスト、カトリア、セージはエリスの元へ向かった。
 エリスは二人と一匹が近づいてきたことを察すると、本を閉じて向き直った。
「エリスちゃん、軽い依頼とかは来てる?」
「……はい。軽めなら、ジャギィの討伐ぐらいで」
 エリスは本の代わりに依頼状の束を手に取って、カトリアに見せる。
 アストもそれを横から覗く。
 特産キノコの納品、ジャギィの討伐、ガーグァの卵の納品……大型モンスターの狩猟依頼はない。
「じゃあ、ジャギィの討伐かな。アストくんとセージも、それでいい?」
 カトリアはアストとセージに振り向く。
「俺は構いませんよ」
「オレも異論はニャいニャ」
 一人と一匹の反応を確認してから、カトリアはエリスの方に依頼状を渡す。
「じゃあお願いね、エリスちゃん」
「……はい」
 エリスは無表情のまま、依頼状の手続きを行っていく。

 遺跡平原。
 かつては何らかの文明が発展していたのかを思わせるような、赤銅色の煉瓦の建造物が並び転がっている。
 バルバレから比較的近い狩り場で、半日もしない内に到着する。
 今回の依頼は、増えすぎたジャギィを間引くことだ。
 基準として八匹の討伐を指定しているが、状況においてはジャギィのメスであるジャギィノスの間引きも指定されている。
 アストは狩りの準備を整えていく。
 武器は片手剣のハンターナイフ。防具はハンターシリーズ。
 どちらも、ごく初心者が愛用する装備であり、入手しやすく扱いやすいものだ。
 既にギルドからの支給品を受け取っており、それをポーチに詰め込んでいる。
「よしっ、行くかぁっ」
 アストは自分の状態を確認すると、奮い立たせるように声を出す。
 セージはオトモアイルー故に、ハンターほどの準備は必要ない。
 装備は、武器も防具もアストの見覚えのないものだった。
 深い青色に、各所各所をオレンジ色で彩っており、まるで海賊のような外見をした防具。
 武器も防具同様の素材を用いているのか、深い青とオレンジ色で構成され、アンカーの形状をした槍のような、どちらかと言えば斧のような武器だ。
「アスト、先に言っておくニャ」
 セージはベースキャンプを出る前に、アストを呼ぶ。
 アストはその声に向き直った。
「基本的にオレは何も口出しはしないニャ。自由にやってくれて構わないニャ」
「え?俺を指導するんじゃないのか?」
 セージの放棄するかのような発言にアストは目を丸くする。「ただ、危険が近いと感じたらオレの指示に従うことニャ。それが聞けニャいなら、その時点で依頼はリタイア。帰還した後に、オレ達のキャラバンから出ていってもらうニャ。突き放すようで悪いが、命を大事に出来んようなヤツは、カトリアを悲しませる。オレはカトリアの悲しむ顔は見たくニャいからニャ」
 アストなセージの言葉を黙って聞いていた。
 彼はそれだけミナーヴァを大切に思っているからだろう。
「さ、行こうかニャ。時間は待ってくれんニャ」
 セージはアストに背を向けると、ベースキャンプを跡にしていく。
 アストも慌ててその後を追う。
 ただ、セージの言葉を頭の中で反芻していた。
「命を大事に出来んようなヤツは、誰かを悲しませる、か……」
「おい、どうしたニャ?」
 前を見ると、かなり前の方でセージがこちらを向いていた。
 アストは「何でもないって!」と言い返すと、地面を蹴ってセージを追い掛けた。