Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.674 )
  • 日時: 2014/03/24 13:30
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: g6ry3YFw)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 五章 狗竜襲撃

 エリア1。
 目の前には目映いばかりの稲穂が萌ゆり、辺りを黄金色に染め上げていた。
 ここには、アプノトスの親子が静かにその稲穂を食んでいるだけで、ターゲットたるジャギィは見当たらない。
 ここからは二手に別れており、平原と岩山の麓の道、もう片方は一気に山を登る道のりだ。
 アストは地図を広げてこの先の進路を取る。
「山道よりは、見通しのいい平原沿いが戦いやすいか」
 地図を指に当てながら、1、3、8、6となぞっていく。
 確認すると、アストは地図を収めて再び歩き出す。セージは何も言わずに彼の少し前を歩く。

 エリア3。
 ここにもジャギィはおらず、数頭のケルビがいるだけだ。
 ここは外れだな、とアストはすぐにその先のエリア8へ向かう。

 エリア8。
 この辺りが岩山の麓にあたる所だ。
「オッオォゥッ、オッオッオォゥッ」
 そこに足を踏み入れた途端、耳障りな鳴き声が聞こえてくる。
 切り立った段差の上に、朱色と紫色のそれがアストとセージを威嚇していた。
 あれがジャギィだ。
 一頭が警戒の威嚇をしたせいか、瞬く間にもう二頭が反応してアストとセージに向き直り、威嚇をする。
「「オッオォゥッ、オッオッオォゥッ、クァッ!」」
 アストは腰に納めてあるハンターナイフを抜き放った。セージも同様に、そのアンカー状の武器、ラギアネコアンカーを構え直す。
「三頭か……上等っ!」
 地面をより強く蹴り、アストは正面から三頭のジャギィに突っ込む。
 ジャギィ達もまたまっすぐにアストへ向かってくる。
 まずは真っ正面の一頭。
「でぇいっ!」
 アストは踏み込みながらハンターナイフを降り下ろす。
 鉄鉱石で作られた刃が、ジャギィのエリマキを斬り飛ばす。
「ギャァゥンッ!?」
 エリマキを斬り飛ばされ、そのジャギィは仰け反る。
 アストはそのまま続けざまにハンターナイフを斬り上げ、斬り下ろし、斬り払い、盾で殴り、最後に大きく斬り下ろした。
 片手剣の特徴は、手数の多さと隙の少なさだ。質量は軽いため一撃の低さは否定できないが、その分は連撃でカバーする。
 だが、ジャギィ達とて殺されるのを待つばかりではない。
 左右のジャギィが展開し、アストを挟み込む。
 しかし、ジャギィ達の目論み通りにはいかない。
 そこにはセージがフォローに回り、アストの右手に当たるジャギィにラギアネコアンカーを振るった。
 そのアンカー状の刃がジャギィを捉えると、刃から青白い稲妻を放った。
「グアッアァッ!?」
 ジャギィは突如の雷撃に驚き、頭を振る。
 大海原の王者、海竜ラギアクルスの素材の破片、端材から作られたその力は例え僅かでも強力な雷属性を備えている。
「せいニャァッ!」
 セージはラギアネコアンカーを躍るように振り回し、その度にジャギィの鮮やかな色の鱗を焼き焦がす。
 ラギアネコアンカーの刃がジャギィの脳天を貫き、ジャギィは断末魔を上げながら吹き飛んでいった。
 アストは目の前の一頭目のジャギィに集中しており、左手から襲い来るジャギィに気付いてない。
「左ニャッ!」
「ッ!」
 アストはそこで攻撃を中断し、前方へ転がる。
 寸前、フリーになっていたジャギィの牙がアストのハンターメイルを掠めていった。
「っぶねぇなこの野郎っ!」
 アストは転がって起き上がる勢いを利用して、一頭目のジャギィの横腹を深く抉り裂いた。
「ギャェアァァッ……」
 致命傷を喰らい、一頭目のジャギィはそこで横たわった。
 残りは一頭。
「グアッオォウッ!」
 同胞を殺された恨みだとばかり、ジャギィは飛び掛かってアストの喉笛を咬み千切ろうと牙を向けてくる。
「ハッ!」
 アストは飛び掛かってくるジャギィの頭にハンターナイフの盾で殴るように付きだした。
 ジャギィの鋭い牙が盾と激突すると、盾が嫌な音と感覚を立ててアストの右腕に衝撃を与えるが、ジャギィの方もダメージを受けており、何本か牙が根本から欠けた。
「アギャアァッ!?」
 飛び掛かっていたジャギィは口の激痛に怯み、地面を転がった。
 そこにアストのハンターナイフが容赦なくジャギィの細長い首を貫き、そこでジャギィは絶命した。
 ひとまず、このエリアのジャギィは片付いた。
「ふぅ」
 アストはハンターナイフに塗られた返り血を振り払ってから腰に納めると、次はポケットからシース(鞘)に納められた剥ぎ取り専用のナイフを抜いて、ジャギィの屍に丁寧に入れていく。
 先程与えた傷から、鱗や皮の繋ぎ目を切り抜いてそれを回収する。
 鱗が二枚、皮が一枚だ。
「なるほど、戦いには慣れているようだニャ?」
 セージは地面に生えている薬草を摘み取りながら、剥ぎ取りを終えたアストに声を掛ける。
「当然だろ?趣味とか道楽で訓練を受けてたつもりはないぜ」
 アストは剥ぎ取り専用ナイフを軽く掌で遊ばせると、元のシースに納めた。
 増援の気配はない。
 アストとセージは次のエリア6へ向かった。

 エリア6。
 細長い道の中の半分以上が、滝から流れてきた水溜まりが支配する場所だ。
 ここにもジャギィはおらず、数頭の丸鳥、ガーグァが屯しているだけだ。
「なかなかジャギィが見当たらないなぁ。山道の方が効率的良かったかもな」
 アストは少しだけ警戒を解いて細長い道を歩く。
「おっ、蜂の巣だ。ハチミツハチミツッ」
 アストはその小さな蜂の巣に駆け寄ると、ポタポタと垂れているハチミツを空き瓶に詰めていく。
 このハチミツを、ハンターがよく使う回復薬と混ぜ合わせることで回復薬グレートと呼ばれる、より即効性の強い回復薬になる。
「……」
 アストが呑気にハニーハントしている側で、セージは静かに警戒していた。
 気にかかるのは、周りにいるガーグァの不審な様子だ。
 しきりに辺りを見回し、ドタドタと走っている。
(このガーグァの反応は……、先程の三頭のジャギィが単ニャる哨戒だったとすれば……)
 そこまで考えた時だった。
「ウオッオッオッオッオッ……!」
 その時、アストとセージが来た道からそいつが現れた。
「アストッ!」
 セージは怒鳴るように叫ぶ。
 アストはその声に跳ね返るように飛び上がり、辺りを見回す。
 通常のジャギィの倍近い巨体、より誇らしげなエリマキ。
 アストは半ば悲鳴のような声を上げた。
「ド、ドスジャギィ!?」