- 日時: 2014/03/28 10:42
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 7D9/BXGs)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
八章 乱戦の末に
場所が移ってエリア8。 新たな哨戒のジャギィ達も巻き込んで、アストとセージはドスジャギィとの戦いを続けていた。 「ここらでケリをつけるニャ!」 「おうっ!」 セージの鼓舞により、アストは気持ちを昂らせる。 「ゥアォォォォォン!!」 ドスジャギィは天に向かって吠え、ジャギィ達はその声に反応し、一斉にアストとセージに襲いかかる。 アストはハンターナイフを構え直し、突撃してくるジャギィ達に真っ正面から突っ込む。 「どけぇっ!」 力強く踏み込み、先頭のジャギィを斬り付けてからすぐに前転し、アストはジャギィを突破する。 ジャギィ達はそのままセージに狙いを付けようと接近する。 セージは向かってくるジャギィ達を睨み付けると、手に握ったラギアネコアンカーを地面に叩き付けた。 バチィンッ、と雷が弾けたかのような音を立てて、蒼雷が雑草を黒く焦がした。 先頭のジャギィがその蒼雷に驚いて突進の勢いを殺してしまう。 セージは肉きゅうの上でラギアネコアンカーを遊ばせる。 「死ニたい奴だけかかってきニャ?」 その口の端は軽く釣り上がり、挑発的な笑みを浮かべた。 一度は怯んだジャギィ達だが、親玉の命令か、挑発に乗ったのかは分からないが、再びセージに突進する。 次の瞬間、蒼を纏った白雷が閃光のようにジャギィ達を斬り裂いた。 何が起きたのか分からないまま、ジャギィ達はバタバタとその場で命を落としていった。 その閃光が、セージそのものだったことは言うまでもない。 一方のアストは少しぎこちなくても、ドスジャギィに肉迫していた。 ドスジャギィの攻撃を避けながら、ダメージを抑えていく。 「オォウゥッ!」 ドスジャギィは身体の側面をアストに向けると、足腰に溜めを作り、それを一気に跳ね上げて体当たりを敢行する。 アストはその体当たりのモーションに入ったと判断するや否や、大きく横へ跳んだ。 刹那、アストの何倍もある巨体が風切り音を立てながら通り過ぎていった。 アストは即座に反転し、体当たりによって隙ができたドスジャギィに接近する。 無防備を晒している尻尾に、ハンターナイフの刃を斬り込ませる。 本当に攻撃が通じているのか目を疑いたくなるが、確実に効いているはず。 大型モンスターはそれを表に出さないだけだ。 ドスジャギィも反転すると、アストを睨み付けた。 「オォウゥッ!」 再び体当たりのモーションを取った。 「れ、連ぞ……」 それに気付いたとき、ドスジャギィの巨体がアストを直撃した。 いくら防具を纏っているとはいえ、ハンターシリーズの基本は動きやすさを重視しているため、直接を耐えられるほど強力ではない。 肋骨が何本か折れるかのような衝撃がハンターメイルに襲い掛かり、そのアストはあっけなく吹き飛ばされる。 「かっ、はっ……」 受け身を取ることも出来ず、アストは地面に叩き付けられた。 「アストッ!」 ドスジャギィはそのままアストを仕留めようと接近する。 「やらせるかニャッ!」 セージはアストとドスジャギィの間に割り込むと、ドスジャギィのその誇らしげなエリマキにラギアネコアンカーを叩き込む。 すると、アストが与えていたダメージが重なってか、ドスジャギィのエリマキをラギアネコアンカーが斬り裂いた時。 「グァンッ!?」 自慢のエリマキを破壊され、ドスジャギィは痛みと驚愕にその場で仰け反った。 「アストッ、大丈……ニャ?」 セージが振り向いた時には、もうそこにアストはいなかった。 同時にドスジャギィはセージに背を向くと、エリア4へ向かう。 その脚を引き摺りながら、だ。 大半のモンスターは瀕死になると脚を引き摺りながら、自分の巣穴に戻ろうとする。身体を休めるためだ。 「よぉし、あと少しだニャ……」 アストのことも気にかかるが、今はドスジャギィに集中しなくてはと思った時だった。 切り立った段差の上に、一つの影が見えた。 それは段差から飛び降りると、その手に握った刃、ハンターナイフを落下の勢いも重ね、それをまっすぐドスジャギィの脳天に叩き付けた。 無論、それはアストだ。吹き飛ばされてもまたすぐに体勢を立て直して段差を登ったのだろう。 「ギョァアァンッ!?」 ドスジャギィはまたもの高所からの一撃に、また大きく怯んだ。 アストは着地すると同時にそのまま連撃に繋げていく。 懐に潜り込み、脆い腹にハンターナイフを振るう。 「終わってっ、くれえぇぇぇぇっ!」 重心を回転させ、踏み込み足と回転させた遠心力をハンターナイフの切っ先に乗せて、渾身の一撃をドスジャギィの腹に放った。 「グォアァァォォァッ……」 そのアストの渾身の一撃に敗れ、ドスジャギィはニ、三歩よろめくと、その場で横たわった。 アストはそのドスジャギィの横たわる姿を見て、凝視する。 「や、やれたのか……?俺が……?」 念には念で、警戒しながらドスジャギィに近付く。 ピクリとも動かず、息の根は途絶えていた。 それがわかったとき、アストは大声で叫んだ。 「よぉっしゃあぁぁぁぁっ!!」 思わずハンターナイフを手放してしまい、万歳をしてしまう。 しかし、その万歳で腕を振り上げた時、身体のどこかが絶叫した。 アストは喜びの顔を激痛の顔に歪め、その場で転げ回った。 それからドスジャギィから素材を剥ぎ取り、アストとセージはベースキャンプに帰還していた。 戦闘の最中でもジャギィは討伐していたので、規定数は達している。 「痛ぇ痛ぇ痛ぇっ!そんなしたら俺死ぬって!?」 「騒ぐニャ喚くニャ黙ってろニャ」 ベースキャンプに着くなり、アストはセージにハンターメイルを外してみろとということを言われ、アストの肉体の、肋骨にあたる部分に触れた途端、アストは悲鳴を上げたのだ。 ペタペタとセージがアストの肋骨を触れていく。 「ニャ。肋骨が何本か死んでるニャ」 「なっ……!?」 ドスジャギィのあの体当たりをまともに喰らったのだ。むしろ、肋骨が何本か折れた、ぐらいで済んでいるならまだマシな方だろう。 それでも動けたのは、体内のアドレナリンが分泌されて脳に痛みを感じさせないようにさせていたのだと思われる。 「ったく、どこまで同じなんだニャ……」 「な、何がだよ」 セージの呆れた声にアストは睨むように目を細める。 「オレの知ってる、一人目のバカニャ。お前とそいつがあんまりそっくりなんで、呆れただけだニャ」 「どこの誰か知らないけど、好き勝手なこと言うなっての」 アストは反論するが、セージは逆にニヤリと笑った。 「ニャ?お前は、そのバカと『もう会ってる』はずニャ」 「えっ?」 「さっ、応急措置は済んだニャ。さっさと帰るニャ」 セージもそこで話を打ち切ると、帰りの支度を始めた。 アストは彼の言葉が理解出来ず、首を傾げるばかりだった。
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