- 日時: 2014/04/02 11:31
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: .AwMD3/l)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
十二章 アンノウン・ジャングル
アストは次々に依頼をこなしていった。 失敗もあったが、それはそれとして噛みしめることで急激に成長し、つい先日は奇猿狐ケチャワチャの狩猟にも成功した。 「探索、ですか?」 アストは狩りの準備を整えているとき、カトリアとセージに呼ばれていた。 「そうなの。これもギルドからの依頼でね、未知の樹海って呼ばれてる場所を調査してってこと」 カトリアは通達書をアストに見せる。 アストはそれに目を通す。 「っても調査だったら、俺みたいなルーキーなんかより、もっとベテランとか、王立書史隊とかの方がいいんじゃ?」 アストは遠慮がちに意見を返す。 彼自身、全く自信が無いわけではないが、未知の樹海などと呼ばれている不明な場所に駆り出されるのは出来れば遠慮したかった。もしも力量に合わないモンスターと出会ったとしても、場所が場所では逃げ切れないこともあるからだ。 そんなアストを諭すようにカトリアが推してくる。 「アストくん、これも経験。事前の情報がほとんどない中での狩りだってあるし、万が一の事態に遭ってもそれを臨機応変に対応出来る技量と心胆も必要なんだよ?」 「……」 あなたは裏でハンターでもやってるんですか、と思うほど的確かつ的を射抜いた言葉だ。 最も、カトリアの言うことは狩りに限ることではない。何かを始めようとするとき全てにぶつかる壁の一つだ。 逆に考えてみれば、それだけ自分が信用に足るハンターに成長したのだとも思える。 遅かれ早かれ、いずれは通る道なのだ。 「行きます」 渋々、ではなく自ら望んでの発言だ。 その反応を見てカトリアは頷くと、早速エリスに手続きを頼む。
未知の樹海。 近年になってバルバレ周辺で探索が開始された未開の土地だ。 数少ない報告の中には、バルバレでは見当たらないモンスターも発見できたというものもあった。 「大型モンスターを発見した場合、その証拠を持ち帰ること……かぁ」 アストはベースキャンプで準備を整えていた。 武器は、ハンターナイフをハンターナイフ改に、ハンターナイフ改にドスジャギィの素材を用いてさらに強化した、ソルジャーダガーだ。 防具はハンターシリーズのままだか、鎧玉と呼ばれる、防具に蒸着させることで強度を高める特殊な玉を使って強化しており、以前より強く耐えることが出来るようになっている。 今回の目的は、大型モンスターがいたかどうかを確かめるためだ。 その大型モンスターに関する何かを持ち帰らなくては、本当にいたのかは疑わしいものになってしまうからだ。 「持ち帰るってことは、剥ぎ取ってこい……つまりいたらいたで狩れってことだもんな」 「そうでもニャいがニャ」 そこでセージが口を挟んできた。 「必ずしも討伐はしなくても、そこにそいつがいたという何かさえあればいいのニャ」 「どういうことだよ?」 セージの言うことがいまいち理解出来ず、アストは聞き返す。 「さぁ?そこはお前が自分で考えろニャ」 セージはいかにも何か知っていそうな面をして、アストからそっぽを向く。 アストはセージの背中を睨むと、準備を続ける。
ベースキャンプを出た、最初のエリア。 鬱蒼とした木々が生い茂り、その向こうから何かが現れるのではないのかと思う。 だとしても、そこにいるのは数匹のブナハブラぐらいしかいない。 虫が集まる茂みや、採掘の鉱脈が見つかったが、アストはひとまずそれを無視して先に進む。
その次のエリア。 先ほどのエリアよりは広く、中央に滝から流れてきたのだろう、小川が流れている。 ここにも大型モンスターらしき姿は見えない。 だが、アストとセージの気配に気付いて動いたものはいた。 「シャァッ」 「シャシャァッ」 小川から巨大な虫の群れが現れ、現れた侵入者に対して上体を上げて威嚇してくる。 「クンチュウか」 このクンチュウというモンスターは、硬い甲殻で身を守っており、致命傷を与えるには衝撃を与えてひっくり返し、柔らかい腹を攻撃する必要があるのだ。ハンマーといった殴打の武器なら、甲殻ごと粉砕することもできるが。 アストはソルジャーダガーを抜き放って対峙する。 が、不意にクンチュウの群れは明後日の方を向くと、素早く身体を丸めてその場で動かなくなってしまった。 「何だ……様子が変だな?」 アストは慎重にその丸まったクンチュウに近付こうとするが、セージに引っ張られた。 「いいから来いニャ」 アストはセージに引っ張られて岩の陰に連れてこられた。 直後、風を切り裂く音ともにそいつは現れた。 ドスジャギィよりもはるかに大きな体躯、桃色の鱗、ひろげた翼、丸みを帯びたクチバシに、扇のような大きな耳。 ドスン、と着地すると風が吹き荒れた。 「な、なんだあいつは……」 アストは岩の陰からその巨体を見て呟く。 「イャンクックニャ」 その呟きに応えるのはセージ。 「ハンター達から最も愛されてきた大型モンスターの代表格ニャ。分類は鳥竜種だが、その動きはドスジャギィとは別物で、どちらかというと飛竜種と似ていることから、本当の飛竜を相手にするその前の練習台みたいなモンスターニャ」 「じゃあ、そこまで強いわけでもないんだな?」 セージの言葉は半分くらい聞いていなかったアストだが、ニュアンスから見るに、空の王者と呼ばれているリオレウスほど強くはないようだ。 「ただ、強くはないと言っても、その一撃はドスジャギィなんざとは比べ物にならんニャ。心してかかるニャ」 「おう」 それでも、今は様子見だ。アストとセージは岩の陰からイャンクック観察を続ける。 |