- 日時: 2014/04/03 04:40
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: cLSnDejT)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
十三章 倒せ!大怪鳥イャンクック【前編】
「クアァ」 イャンクックは着地するなり、丸くなって身を守っているクンチュウに興味を示し、近付く。 「クァッ、クァッ?」 何度かクチバシでクンチュウをつついてみるが、クンチュウは少し転がるばかりで、その硬い甲殻はその役目を遺憾無く発揮している。 「クァ……クァッ」 イャンクックはおもむろにクチバシをクンチュウに伸ばすと、そのクンチュウをクチバシでくわえるようにに掴み上げた。 そして、くわえたクンチュウをそのまま呑み込んだ。 「まっ、丸呑み……!?」 アストは岩の陰からその様子を直視していた。 イャンクックはそれを呑み込むと、他のクンチュウも同じようにくわえては呑み込んでいった。 「クゥ、クアァ」 イャンクックは満足そうにため息を吐くと、その場で欠伸をする。 アストは腰に納めているソルジャーダガーの柄に手を掛ける。 「仕掛けるなら、今から一気にやるべきか?」 「奇襲という意味ニャら、その判断は正しいニャ」 「よぉし……」 アストは岩の陰から姿を現し、慎重にイャンクックの無防備な背中に近付く。 足音を立てずに、そっと、そっと。 (よし、良い子だ……そっち向いとけ、そのまま……) あと数歩で、ソルジャーダガーの間合いに入る。 その時だった。 「クァ?」 イャンクックは気まぐれに振り向いたのだ。 その方向がたまたまアストの方に向いただけだ。 アストの赤い瞳と、イャンクックのギョロりとした目が合う。 「なっ、何で気付くんだよバカヤロウッ!」 今更どうにもならないことを悔やみ、イャンクックにその捌け口を求めたアスト。 「クァクァクァクァッ、クァァァァァァ!」 イャンクックは一度上体を起こすと、大きく威嚇する。 「くそっ!」 アストは手を掛けていたソルジャーダガーの柄から手を離すと、代わりにポーチに手を突っ込み、そこから拳大のそれを取り出し、それをイャンクックに投げ付けた。 イャンクックにぶつかったそれは、弾けるとどぎついピンク色をした液体を撒き散らしてイャンクックの鱗の一部を染めた。 ペイントの実と言われる、どぎつい色と臭いを持った植物の実に、非常に強力な粘着性を持ったネンチャク草を組み合わせた、ペイントボールだ。 これを大型モンスターに付着させることで、臭いを頼りに足掛かりを調べられるのだ。 ペイントボールをぶつけられたイャンクックは、それを敵対と見なし、アストに襲い掛かる。 「クァッ、クァックァックァックァックァッ」 イャンクックはクチバシを振り上げると、アストを啄もうと何度も首を上下に振る。 アストはさすがに冷静に対処し、まずはイャンクックから離れた。 「焦るなよ俺、まずはお手並み拝見だ……」 アストは自分に言い聞かせるように呟き、イャンクック足元の周囲を回るように小走りに足を動かす。 だが、その立ち回り方は間違いだった。 突如イャンクックは身体を回転させ、その尻尾で足元を彷徨く虫けらを吹き飛ばそうとする。 「!?」 アストの目の前に、イャンクックの尻尾が唸りを上げて襲い掛かってくる。 アストは咄嗟に右腕の盾を前に付き出し、その尻尾を受け止めた。 ドスジャギィのそれとは威力がまるで違う。 右腕が麻痺するのではないかと思うほど、重く鋭い一撃がソルジャーダガーの盾ごとアストの右腕を捉える。 「ぐっ……痛ぇ……」 アストは地面を削りながら後退し、右腕を軽く振って様子を確める。 どこか痛めた分けではないだろうが、何度も耐えられるものでもないだろう。 直後、セージが岩の陰から飛び出し、イャンクックの翼にラギアネコアンカーを放つ。 ラギアネコアンカーの雷はイャンクックの鮮やかな桃色の鱗を微かに黒く焦がす。 「回転尻尾にも気をつけろニャッ、距離を置くならもっと離れるニャ!」 セージはラギアネコアンカーを振るいながら、イャンクックの攻撃もかわしながら、アストへのアドバイスも忘れない。 アストは体勢を直すと、イャンクックとセージに向き直る。 イャンクックはアストの方へ向いた。 「クゥアァァッ!」 イャンクックはクチバシを振り上げる。 だが、今度は啄み攻撃ではない。 クチバシから煙が漏れ、イャンクックはそれを吐き出すかのようにアストに口を向けた。 吐き出されたそれは、いかにも熱そうな色をした液状の塊だ。 「ブレスッ!?」 アストは慌てて後方へ飛び下がる。 直後、アストがいた場所へその液状の塊が降り注がれ、煙を上げながら足元の雑草を燃やした。 アストはその燃えた雑草を一瞥しながら、イャンクックからも目を切らない。 「はっ……いつまでも驚いてばかりと思うなよっ」 アストはその場を蹴ってイャンクックに突撃する。 十分な間合いに入り、ソルジャーダガーを抜き放ち様に踏み込んでイャンクックの脚に斬り込ませる。 硬い。刃が通らないこともないが、それでもソルジャーダガーの切れ味が先に根負けするのが関の山だ。 アストは小さく舌打ちすると、またイャンクックから離れる。 イャンクックの注意は完全にアストに向いている。 その隙にセージが、イャンクックの周囲で大いに暴れまわっていた。 「ぃえりゃニャァァァァァッ!」 ラギアネコアンカーが雷を撒き散らしながら、イャンクックの腹や翼、クチバシを斬りつけていく。 「クァッ、クゥアァァッ!」 イャンクックは周囲で雷を浴びせてくるアイルーを疎ましく思ったのか、その場で一度羽ばたいた。 セージはその風圧に負けて軽く吹き飛んだが、すぐさま受け身を取って体勢を立て直す。 アストは一度セージと合流する。 羽ばたいて後退したイャンクックは、着地する。 「クオォッ、クゥアァァァァァッ」 その場で足踏みをし、威嚇する。 セージは目線だけアストに向ける。 「どうしたニャ?こんな『練習台』に怖じ気付いたニャァ?」 意地の悪そうな目を向けるが、アストは逆に笑った。 「まさか。むしろ、向こうが怖じ気付くだろうよ」 アストは手にしているソルジャーダガーを強く握り直す。 「行くぜ!」 「おうニャッ!」 アストとセージはイャンクックに突撃する。 |