- 日時: 2014/04/13 13:26
- 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: 86h2s.hV)
〜第十八話「斬れなくたっていい・後編」〜
「キエェェッ!キエェ!」 金切り声をあげながら、二頭のランポスもこちらへ向かって走って来た。
一頭は私に噛み付こうとそのまま突っ込み、もう一頭は跳び上がって蹴りを喰らわせようとしてきた。 私は噛み付きをとっさに飛び退いて躱した後、ランポスが体勢を立て直す前に頭を掴んで握り潰す。 メキメキメキメキ……。
そしてそのまま地面にランポスの頭を押さえつけて砕き、立ち上がりながらもう一頭のランポスを盾で弾き返した。 流石に片手でランポスを受け止めるのはまずかったか、少しのけぞってしまった。
そこへドスランポスが走り込み、勢いを付けて噛み付きを繰り出した。 が、私がのけぞる事を計算し忘れたようで、わずかに届かない。 普段の防具ならドスランポスの歯など殆ど通さないだろうが、今の防具は普段着と大差ない代物だ。噛まれたらひとたまりもない。
私は再度体勢を立て直し、ハンターナイフの背で何度もドスランポスを殴りつけた。 ガキン!ガキン!ガキィィィン! 火花が散る。 鱗にも多少傷がついてはいるが、大したダメージを与えられていない。
(効かない……?) あまり使いたくなかったが、こうなったら、盾を攻撃用に転用するしかない。
どうしても盾を振り回すと守りが甘くなってしまうため、余程の事が無い限り、攻撃への盾の使用は避けるべき、というのが片手剣使いの間では常識である。 私もこれを使うのはまだ二度目だ。訓練所でのドスジャギィ戦以来になる。
私は盾のベルトを外し、盾のへりを掴んだ。 片方が盾ではあるが、《双剣》の構えである。 まさしく守りを捨てた、攻撃特化の構えだ。
「うぉらああああああっ!!」 私は自分を鼓舞する意味で雄叫びをあげ、ドスランポスの頭に立て続けにハンターナイフと盾を振り下ろす。 ギィン、バキィッ! ドスランポスのトサカが折れ、砕け散った。
怯んだドスランポスに、畳み掛けるように何度も何度も殴りつけると、ドスランポスは眩暈を起こしたらしく、ふらふらとよろめき始めた。
(今だ!) 「っのっ!っの!おらあ!」 私はドスランポスの喉元にハンターナイフを何度も叩きつけ、鱗と皮を無理やり引き剥がし、全体重を乗せて盾で殴りつけた。 ベキベキッ! ドスランポスの首の骨が折れ、頭がぶら下がった。 ……直後、力を失ったドスランポスの身体が崩れ落ちた。
今まで声ひとつあげず、かたずをのんで見守っていた観客達が歓声を上げた。 「只今の記録、四分十一秒二七!今月の暫定二位です!」 アナウンスが流れた。 あれでたった四分なのか。意外だ。 それだけ白熱していたという事なのだろう。 ……二位か、嬉しいけどちょっと悔しいな。 「果たして、暫定一位、三十八秒の記録を破る者は現れるのか!!次回も乞うご期待!」 ……桁が違った。
〜第十九話に続く〜 |