Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.906 )
  • 日時: 2014/04/08 18:00
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 7Dp4YA4Y)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 十九章 麗らかな風と共に

 翌朝。
 ミナーヴァでは慌ただしい空気が漂っていた。
 皆が皆それぞれの営業所を閉じていく。
 必要な片付けだけを終わらせれば、あとは蒸気機関による機械を簡単に操作するだけで全て自動でやってくれる。
「カトリアさん、こっちは終わりましたよ」
 自室の出発準備を整え、アストはそれをカトリアに報告する。
 カトリアは大陸地図を片手に、アストに次の指示を飛ばす。
「じゃあ、次は馬車同士を連結させてるライラを手伝ってあげて」
「はい」
 アストはクックシリーズを装備したままで作業をしている。
 ハンターであるアストは、道中の護衛としての役目を果たすのだ。もしモンスターが襲撃してきた場合、まともに戦えるのは彼だけだ。
 
 まだ日が上って間もない頃、全ての作業が整った。
「セージ」
「ニャ、任せろニャ」
 カトリアの声に、セージは先頭の馬車に乗り込み、手綱を噛ませたアプノトスを軽く叩いて前進させる。
「ヴォォォ」
 アプノトスは機嫌良さそうに反応すると、ゆっくりと歩き出した。
「出発進行ですーっ!」
 シオンも嬉しそうに声を上げる。
 振り返ると、バルバレ中の人々が手を振っては別れを迎えてくれる。
「またなぁミナーヴァ!」
「いい目の保養になったぜぇ!」
「リア充爆発しろぉ!」
 様々な声に送られながら、ミナーヴァ一行はバルバレを後に、ナグリ村への旅路へ踏み込んだ。

「くかー、くかー、くかー……」
 寝室用の馬車で大きな鼾をかきながら爆睡しているのはライラ。一昨日の朝から寝ていないのだから、それくらいの爆睡ぐらいは許してやるべきだ。
 基本的に全員の安全のために、先頭の馬車で手綱を握っているセージ以外は全員寝室用の馬車の中にいる。
 シオンとルピナスはトランプでポーカーを興じている。
「ふっふっふっ……私はフルハウスですよっ?ルピナスさんっ」
「あらぁ、そうなんですかぁ?」
 カードを変えるかどうかを決めて、二人は互いのカードを晒した。
「うげげっ、騙されませんでしたかーっ」
 シオンの組み手はただのツーペアだ。
「嘘つきはいけませんよぉ、シオンちゃん?」
 一方のルピナスはストレートだ。
「ルピナスさんってばっ、ずっとニコニコしてますから心理的攻撃が意味ないですよーっ」
「勝負の世界はぁ、非情なんですよぉ。さぁ、お小遣いの100ゼニー頂きましょうかぁ?」
「うーっ」
 シオンは渋々ポケットから100ゼニーコインを差し出した。
 ルピナスは終始ニコニコしながら、それを受け取った。
 熾烈な戦いの側で、エリスは一人黙々と読書に没頭していた。
 その無表情から時折、頬を薄赤く染めたり、一筋涙を溢していた。
 そんな様子をカトリアは見ていた。
「エリスちゃん、何読んでるの?」
「……!」
 カトリアがその本に興味を持っていると思ったのか、エリスな慌ててページを閉じた。
「何でそんなに慌てるの?」
「……お、教えません」
 エリスはその本を背中に回し、隠そうとする。
「そんなに、恥ずかしい本なの?」
「…………」
 エリスはそっとカトリアの耳元に近付くと、小声で口にした。
「……れ、恋愛、小説です」
 それだけを言うと、エリスはこそこそと離れるとまた馬車の隅で読み始める。
「恋愛かぁ……」
 カトリアは一人上の空のようにごちた。
 
 一番後方の馬車で、アストは待機を続けていた。
 視線は馬車の後方、しかし意識は寝室用の馬車に向いていた。
「なんか楽しそうだな……ふぁ……」
 退屈のあまり欠伸をもらす。
 後ろからモンスターが来ないかどうかを監視しているわけだが、ジャギィどころかブナハブラの一匹も見当たらない。
 ふと、寝室用の馬車から会話が聞こえてくる。
「団長の好みのタイプってどんな人ですかっ?」
「えっ?そ、それって、異性のこと?シオンちゃん」
「それ以外何を訊くんですかっ。さぁ、素直に白状してくださいっ、団長っ!」
「……カトリアさんの、好みの異性……」
「あらあらまぁまぁ」
 どうやら、色恋沙汰について話しているようだ。そしてライラはまだ寝ているようだ。
 ここで聞いているアストも、全く興味が無いわけではない。
「そそっ、そんなの分からないよぉ。生まれてこのかた、彼氏とか持ったことないし……」
「えぇーっ、団長ほどのべっぴんさんがなぜぇっ!?」
「……意外です」
「あらぁ、カトリアさんはぁ、まだうら若き乙女なんですねぇ」
 アストも内心で「そうだったんだ」と思った。
 確かに子供っぽい所もあるが、カトリアほど容姿と人格が完成された美少女の側にいるのが、その辺の下衆な男とは思えない。
「じゃあっ、強いて言うならどうですかっ?」
「う、うぅ……」
 シオンはしつこく問い詰める。
 カトリアも困ったように唸っていた。
 
 そんな風に楽しい時間を過ごしていると、いつの間にか夜が降りていた。
「おっ。見えてきたニャ」
 セージは視線の先を見通す。
 岩山の中からくりぬいたように作られた、集落が見えた。
 あれが、ナグリ村だ。

 鳴り止まない槌音の中で、ミナーヴァ一行の新たな物語が綴られるーーーーー?