- 日時: 2014/04/10 11:32
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: v/kikNsS)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
二十一章 医者の雛
ナグリ村では未だ絶望的な空気が漂っている。 ミナーヴァのメンバー達も尽力を尽くしているが、それでも人手が足りなさすぎる。 その上、大半がお情け程度の応急処置しか出来ず、手際も悪いため余計に時間がかかっていた。 この非常事態でも、ミナーヴァではない別のキャラバンも村に訪れる。 今は村長の代わりにカトリアが応対に出る。 エリスは包帯を手に、必死に土竜族達の応急処置に当たっているが、一人一人にどうしても手間取ってしまう。 「……こんなこともちゃんと出来ないなんて……」 自分の不甲斐なさにエリスは自嘲する。 決してエリスが悪いわけでもなければ、土竜族が悪いわけでもない。 モンスターと言う自然に巻き込まれただけだ。 不意に、自嘲するエリスに声を掛ける者がいた。 「すみません、ちょっと代わってもらえますか?」 エリスはその声に振り向いた。 若葉のように爽やかな翠色の短い髪、青みのかかった紫色の瞳。耳や鼻が丸みを帯びているところ、人間の少女だ。外見的には、エリスよりは一つか二つ歳上に見える。 少女の手には真新しい包帯が握られており、エリスが手当てしていた土竜人に近寄ると、直ぐ様行動に出る。 あまりに見事な手捌きだ。 ものの一分もしない内に包帯が巻かれた。 「もう大丈夫ですよ」 「お、おぅ。すまねぇな」 少女に手当てされた土竜族は、すぐに別の所を手伝いに行く。 エリスはその様子を惚けたように見ていた。 「……あの、あなたは?」 「私ですか?ただの通りすがりの医者の雛ですよ」 少女はまたすぐに別の土竜族の手当てに当たっていく。
突然現れた少女によって、ナグリ村の土竜族は瞬く間に手当てされた。 カトリアと村長は、その少女と対面していた。 「いやぁ、助かった。一時はどうなるかと思ったけどよぉ、嬢ちゃんのおかげでどうにか立ち直りやがった。村を代表して礼を言わせてくれぃ」 村長は深く頭を下げた。 「私からも、皆を手伝ってくれてありがとう」 カトリアも頭を下げた。 二人から感謝された少女は、照れたように謙遜する。 「いえいえ。大したことはしてませんよ」 カトリアと村長は頭を上げる。 「ところで、あなたは今さっき来たキャラバンの方?」 カトリアは、ミナーヴァとは別のキャラバンの馬車と少女を見比べる。 「いえ。私はただ便乗させてもらっていただけで、特別な繋がりは何もありませんよ」 少女も自分が乗ってきた馬車を一瞥する。 「申し遅れました。私はマガレット・マカオンです。つい先月に医療学校を卒業したばかりで、今はまだ実績を積んでいる最中の雛です」 少女、マガレットの自己紹介に、カトリアと村長は感心したように溜め息をついた。 「へぇ、お医者さんなんだ?」 「どうりで手際がいいわけだな。こりゃおでれぇた」 ふと、マガレットとカトリアの目が合う。 「質問を返すようですけど、あなたは?」 マガレットはカトリアを向きながら訊く。 「キャラバン、ミナーヴァの団長を努めてる、カトリア・イレーネです」 カトリアも礼儀正しくお辞儀しながら答える。 その名前を聞いてか、マガレットは考えるような表情を見せた。 「ミナーヴァ……あ、確か、バルバレの方で最近有名になりつつある、「美少女に囲まれている超絶美少年ハンターが所属しているキャラバン」のことですよね」 「……え?」 カトリアはその「美少女に囲まれている超絶美少年ハンターが所属しているキャラバン」を聞いて固まった。 カトリア自身、ミナーヴァをそんな風に過大評価をした覚えはなく、ましてや同名のキャラバンも聞いたことがない。 そこに村長が口を挟む。 「あん?あいつ、そんなに美少年って感じか?」 そう、アストは特別凄いハンターでもなければ、特別美しい容姿を持っているわけでもない。どこにでもいる、普通の少年ハンターだ。 「いえ、回りから聞き齧っただけのことですから、ほんとかどうかは分かりませんけど……」 少なくとも、「美少女に囲まれている」は当てはまるだろう。 問題は「超絶美少年ハンター」の方だ。そこは間違いなく尾ひれ付きの情報だろう。
今この瞬間、狩り場でアストがくしゃみを一発かました。 |