- 日時: 2014/04/13 14:33
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: lrbLnihy)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
二十四章 地の利は我に有り
戦闘を開始して幾分かが経った。 テツカブラは突如頭から地面に突っ込み、地中へ潜っていく。 土煙を上げながら、地底洞窟のより地下の方へ向かって消えていった。 ペイントボールの効力は継続しているため、臭いは地図上で言うところのエリア8の所から続いているようだ。 周囲に危険がないかを確認してから、アストは一息ついてから、臭いを頼りにテツカブラを追う。
エリア8。 地底洞窟の中でも最も広大なエリアで、急な傾斜が続く地形となっている。 「オォォォッ」 「ゥォアォォオ!」 そのエリアにいた草食竜、リノプロスの群れが突如縄張りに侵入してきたテツカブラに向かって、固い頭殻を活かしての突進を敢行する。 リノプロスは草食竜の中でも縄張り意識の強いモンスターで、縄張りの侵入者を追い払おうと執拗に突進を繰り返してくるのである。 「ヴゥオォアァァァァッ!」 しかし、テツカブラのパワーの前にはさしものリノプロスも敵わず、あっけなく吹き飛ばされて絶命する。 アストはその様子を、エリア3から続く、鍾乳石の崖から見ていた。 「やっぱすごいな」 その声に反応したかのように、テツカブラはアストとセージに向き直る。 アストは崖から飛び降りて地面に着地する。 間近で見ればよく分かる。 このエリアは、急斜面と段差だらけの地形だ。 「さて、このチャンス……活かすも殺すもお前次第だニャ、アスト」 セージは意味深な言葉をアストに呟くと、ラギアネコアンカーを抜き放って突進する。 「チャンスだって?」 アストはセージの言葉の意味を汲み取れなかった。 つまり、セージから見るこの状況はハンター側にとって攻めやすい状況だと言うのだ。 一見は安定しない地形だ。 それを見つけろと、セージは言っているのだろう。 アストはそれがすぐには見つけられずに、そのままテツカブラとの戦闘を再開する。 テツカブラは四本の脚を器用に動かしてすぐにでも接近してくる。 これまで通り、まずはテツカブラの側面や後方に回り込み、比較的安全な後ろ脚や時折急激に柔らかくなる尻尾へダメージを与える。 だが、アストの中にはもうひとつ目論見があった。 (あいつがあれだけ大きな岩を持ち上げるには、間違いなくあの二本の牙が支えになってるはずだ……。つまり、あの牙をへし折れば、持ち上げられる岩にも限界が出てくるはずっ……!) しかし、牙の破壊、つまりテツカブラの正面に回る必要があり、かなり危険を伴う目論見であることに変わりはない。 動きを止めることが出来れば、狙った部位への攻撃など容易なのだが、そういった拘束できる類いの道具は、トラップツールに雷光虫を仕込ませた、シビレ罠が一つだけだ。 シビレ罠という道具は、地面に設置する罠の一つで、踏み込んだ大型モンスターを麻痺させてほんの数秒だけ足留めさせる道具だ。狩りを行う上での強力な手段の一つだが、一度設置すると取り外しが効かない上に、同じモンスターに何度も使うに連れて、モンスターにも抗体が生成されるのか拘束時間が短くなっていくというものだ。 故に、ハンターにとっては切り札のような道具であるため、無闇には使えない。 アストはテツカブラの後ろ脚を攻撃しながら足留めの方法を考えていた。 (あとは、体勢を崩すぐらいか。でも、不確実だし……他には……) テツカブラが前肢でアストを引っ掻けるように前肢を振り上げるが、アストは直ぐ様回避して安全を確保する。その反対側ではセージがラギアネコアンカーを振るう。 回避したその先で、段差に足を捕られてしまう。 「……っと」 そこで転ばずに足踏みして姿勢を安定させる。 段差、ドスジャギィ、ジャンプしながらの強襲……。 連鎖的にその時の状況がフラッシュバックし、アストは「そうかっ」と思わず声を出した。 テツカブラをさらに迂回し、段差に足を掛ける。 目下には、テツカブラの背中だ。 「うおぉぉぉぉぉっ!!」 アストは意を決して段差を蹴り、コマンドダガーでテツカブラを掬い上げるように振るい、さらに力強く叩き付ける。 「ヴォアァァァァァッ!?」 突然の上方からの攻撃にテツカブラは驚き、体勢を崩してしまう。 「やっぱりなっ!」 アストはコマンドダガーを素早く納めると、そのままテツカブラの背中に飛び乗った。 セージはテツカブラに飛び乗ったアストを見てほくそ笑みを浮かべた。 「ヴォアッ、ヴゥゥアァッ!」 テツカブラは背中に取りついた小賢しい人間を振り落とそうと暴れまわるが、甲殻にしっかりしがみついているアストは早々には振り落とされない。 やがてテツカブラは暴れすぎたが故に動きを止めて休憩する。 それを確かめて、アストは剥ぎ取り専用ナイフでテツカブラの背中を突き刺しては引き抜くを繰り返す。 再びテツカブラは暴れまわるが、アストはまた甲殻にしがみついて抵抗を続ける。 またテツカブラが休憩を始めると同時にアストも剥ぎ取り専用ナイフで背中を攻撃する。 「ヴアァァァァァッ!」 突如テツカブラは地面を転げ回った。 アストもテツカブラの背中から飛び降りる。 苦しげにもがいているところ、効いたようだ。 「よぉしっ!」 アストはコマンドダガーを抜き放って、テツカブラの頭に回り込む。 |