- 日時: 2014/04/15 19:21
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: /i04usma)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
二十八章 良い報せと不穏な報せ
マガレットがミナーヴァに加入して数日が経っていった。 ナグリ村でのミナーヴァのメンバーは暇ではない。 カトリアとライラ、村長は船の設計に取り掛かっている。ライラに至ってはアストや他所のハンターの武具の整備も携わるため尚更だ。 エリスはナグリ村からハンターズ・ギルド各地からの連絡を見てはそれを返すを繰り返しており、一日に何十通という伝書鳩が飛び交っている。 ルピナスは朝昼晩と食事時にやってくる土竜族のために早朝から夜まで厨房で奮闘を続けている。 シオンはナグリ村では手に入らない道具や素材を入手するために、日夜情報を頭に叩き込んではそれに必要な費用を計算していた。 アストも、テツカブラ狩猟の際のセージが気になっていたが、それはそれとして心に留めておき、活発に狩猟に望んでおり、先日は毒怪鳥ゲリョスの狩猟にも成功し、それと同時に船に必要なゴム質の皮も納品している。 忙しくも、賑やかな日々だ。 そんな忙しく賑やかな日々に、ミナーヴァにとって嬉しい報せが入ってくるのだった。
「地底洞窟に、ドスゲネポスが?」 朝食を食べ終えたアストは、ルピナスに呼び出されていた。 「はいぃ。シオンちゃんのお知らせによるとぉ、近々ナグリ村に商隊が来るんですよぉ。でもぉ、ドスゲネポスさんがお邪魔でぇ、危ないんですってぇ。ですからぁ、アストくんに助けてほしいんですよぉ」 特に困っているような素振りも見せずに、ニコニコしながらルピナスはアストにドスゲネポスの狩猟を依頼する。 「助けてくれたらぁ、美味しいお魚をぉ、分けてくださるんですってぇ。私からもぉ、ぜひお願いしますねぇ」 なるほど、人助けに留まらず、ミナーヴァの食卓も潤してくれるらしい。 そこまで言われて断るアストではない。 「もうエリスちゃんにはお願いしてますからねぇ」 依頼状は既にエリスの方に渡っているようだ。 アストは食後の紅茶を冷ましながら頷いた。 「分かりました。その依頼、受けますよ」 「はぁい。お願いしますねぇ」 ルピナスはニッコリ微笑んでアストの食器を片付けていく。 「あ、そうでしたぁ」 ふと、ルピナスはその食器を流し台に置くと、氷結晶による保冷を可能にする、氷結晶式冷蔵庫を開いて何かを取り出している。 「ありましたぁ」 ルピナスはそこから一本のビンを取り出すと、アストのテーブルに置いた。 「何ですか、これ?」 アストはそのビンを見ながらルピナスに訊いた。 「よくぞ聞いてくれましたぁ」 えっへん、とルピナスは胸を張る。 「ルピナス特製のぉ、栄養ドリンクですぅ」 「栄養ドリンク?なんでまた?」 アストは首を傾げながら、胸を張っているルピナスに質問を続ける。 ふと、ルピナスは張っていた姿勢を戻し、アストの側に近付いて、心配そうにアストの顔を覗くように見る。 「なんだかぁ、最近アストくんの元気がなさそうなのでぇ、頑張って作ってみましたぁ。どうぞぉ」 特製の栄養ドリンクを差し出すルピナス。 アスト自身、何となく元気になれなかったことに自覚はあった。 「ありがとうごさいます、ルピナスさん。これ、いただきますね」 「はぁい、どうぞぉ」 アストはビンの蓋を開けて、それを一気に煽った。 ごくり、と飲み流した。 それを喉に通して、最初のコメント。 「ル、ルピナスさん?これっ……、何を入れた、んですかぁ……?」 アストはものすごい勢いで顔を歪ませている。 「えーっとですねぇ、生野菜をミキサーで汁にしたものにぃ、ハチミツとぉ、栄養剤グレート、活力剤にぃ、元気ドリンコ、それから隠し味にいにしえの秘薬をぉ……」 「……」 つまり、体力の回復や増強をするモノを片っ端から詰め込んだものらしい。 「そ、そうですか……」 アストはふらふらと立ち上がった。 不味さのあまり頭痛が起こり、腹の中から逆流しそうなほどの吐き気が襲いくる。 「あ、ありがとうございましたぁ……」 アストは礼だけ、形だけをルピナスを見せると席を立った。 「元気が出る」と「美味しい」は両立しないことを、改めて思い知ったのだった。
早速エリスにドスゲネポス狩猟の依頼を通してもらい、契約金を彼女に払う。 「よし。行ってくるな、エリス」 「ニャアに、すぐに片付けてくるニャ」 アストとセージは強気な態度をエリスに見せた。 「……あの、アストさん」 「ん、どうした?」 いつもなら、無表情に「武運をお祈りします」や「成功を期待します」としか言わないようなエリスが、珍しく引き留めてくる。 「……頑張ってください」 心配なのか、励ましてくれるのか、どっちか分かりにくい表情を向けるエリス。 だが、アストはエリスが何を言いたいのかは分かっていたつもりだった。 「おう、頑張ってくる」 アストは大きく頷いた。 「……はい。行ってらっしゃい」 エリスは、少しはにかむように微笑んだ。 何だかちょっと照れ臭い気持ちになったアストだった。 「行ってきます」
その数時間後、エリスの元へいつもの伝書鳩がやって来た。 「……ご苦労様」 エリスは鳩の脚に括られている紙をほどいて、それに目を通す。 その内容を目にした途端、エリスは青ざめて思わず音を立てて立ち上がった。その拍子に鳩が驚いて一瞬羽ばたいた。 「……そんな、どうしよう」 「どうしたのっ、エリスちゃんっ?」 偶然、カトリアがそこを通りかかっていた。 カトリアはエリスのただごとではない様子に駆け寄ってくる。 「何っ?何が書いてあったのっ?」 「……こ、これです」 エリスは微かに手を震わせながら、カトリアにその手紙を見せた。 カトリアもそれに目を通すと、目を見開いた。 このままでは、アストとセージが危ない。
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