- 日時: 2014/04/16 12:16
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: C/NsGCiu)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
三十章 急襲、挟み撃ち
アストとセージはエリア1でドスゲネポスとの戦闘を続けていた。 「シャギャアァァッ!」 ドスゲネポスはアストにその二本の発達した牙を剥けるが、今のアストは冷静だ。 横へ跳躍してそれを回避する。 「分かる、分かるぞ」 ドスゲネポスはドスジャギィと同じように、危険な攻撃は正面にしかない。 故に正面からではなく、側面、もしくは後ろから攻撃を仕掛ければ、比較的に安全に攻められる。 横へ跳躍して回避すると、直ぐ様足を踏ん張ってドスゲネポスに向き直って、踏み込み斬りからの連撃に繋げる。 「うおぉっ」 コマンドダガーをドスゲネポスの横腹に三回ほど斬り付けると、ドスゲネポスが向き直ってくる前にそこで攻撃を止めて、一旦離れる。 またドスゲネポスが接近してきては噛み付いてくるが、アストはこれも冷静に回避し、隙の出来た横腹を攻める。 先程からこれを延々と繰り返している。 途中、ドスゲネポスが怒って挙動が早くなったものの、その際は攻撃を減らすといって攻め手を変えながら、ドスゲネポスの動きに対応していく。 「やれば出来るじゃニャいか」 セージはラギアネコアンカーを振るいながら、アストの落ち着きに感心する。 ヒトとモンスターは平等ではない。 モンスターの強大な力と本能に対し、ヒトは力の弱さを技と理性で補ってようやく互角になるかどうかだ。 不意にドスゲネポスはアストとは明後日の方向を向いた。 「ギャアァ……ギャアァ……」 ドスゲネポスは足を引き摺って、エリア4の方へ逃げていく。 「よし……」 アストは一旦逃げていくドスゲネポスを見逃して、体勢を立て直す。 コマンドダガーを研磨し、携帯食料で空腹を抑え、回復薬で体力を回復させる。 慌てて追わなくても、目を離した瞬間体力が回復する分けではない。じっくり体勢を整えながら、その整えた分で回復されたダメージを取り返せばいいのだ。 「準備完了。追うぞ、セージ」 「ウニャ」 アストは淡々と準備を整えて、セージに呼び掛ける。 ふとセージはそこに、目を付けた。 そこには、蜘蛛の巣が不自然なところにあった。 「……?」 セージはそれに目を細めた。 「セージ?どうした?」 アストが呼んでいる。 セージはそれを頭の片隅に置いておき、アストの元へ向かった。
エリア4 。 高台に、蜘蛛の巣でできた足場の下にも地面はある。 ドスゲネポスはそこでアスト達を迎え撃ってくる。 「よぉし、気は抜くな、でも熱くなるな……」 アストは自分に言い聞かせ、ドスゲネポスに突進する。 ドスゲネポスも闘志と殺意を剥き出しにして襲い掛かってくる……が、不意にドスゲネポスは足を止めた。 エリア4のさらに奥に目を向けている。 「……まさか!?」 セージは先程見掛けた蜘蛛の巣と、そのドスゲネポスの不審な様子を見てこの状況を察した。 「逃げるニャアストッ!」 「えっ!?」 アストはセージの呼び声に思わず足を止めて彼の方に意識を向けてしまう。 それを見逃すドスゲネポスではない。 「ギャガァァァァァッ!」 ドスゲネポスは不意に動きを止めたアストに飛び掛かる。 「しまっ……!?」 ドスゲネポスの全体重がアストに襲い掛かり、アストはあっけなく吹き飛ばされた。 「ぐぁっ……!」 吹き飛ばされた勢いで壁に叩き付けられる。 息がつまり、焦点が合わない。 セージは吹き飛ばされたアスト、ドスゲネポスと、そのドスゲネポスの向いていた方向を目まぐるしく見比べる。 その奥から現れたのは、白と、黒の色合いで構成された長い四本の脚、鉤爪の生えた二振りの前足。頭にある、複数と目。 「やはりかニャ……ネルスキュラッ!」 その巨体、ネルスキュラは既にこちらの存在に気付いているが、まだ距離はある。 セージはアストの援護のためにドスゲネポスに攻撃を仕掛ける。 「せいニャァァァァァッ!」 ラギアネコアンカーの雷撃を浴びてドスゲネポスは仰け反る。 「ギャアァッ!?」 セージは壁に叩き付けられたアストに駆け寄る。 「ボサッとするニャ!このままではオレもお前も死ぬニャ!」 「なっ、何だって……!?」 アストはセージの声で我を取り戻す。 ドスゲネポスの向こう側にいる巨体を見て目を見開いた。 「何だよあいつッ……!?」 「後で腐るほど教えてやるニャッ!とにかく今は逃げるニャアストッ!」 「あー……多分もう無理だぜ?」 アストは酷く冷静になっていた。 冷静でいればいるほど、事の危険意識を甘く見えているのだろうか。 見れば、ドスゲネポスとネルスキュラが左右から挟み込んで来ており、出口という出口が塞がれてしまった。 「力づくで逃げろってことだろ!」 アストはコマンドダガーを構え直す。 「バカ言うニャッ、大型モンスター二体同時など……」 セージは後ろを見ずにドスゲネポスの噛み付きを避ける。 「ドスゲネポスを片付けりゃ何とかなる!」 アストはドスゲネポスに攻めに入る。 だが、後ろからネルスキュラが鉤爪をアストに振るった。 「ぐっ!?」 それほど強い一撃ではないが、アストの体勢を崩すには十分だ。 その隙にドスゲネポスが再びアストに飛び掛かって吹き飛ばした。 「がぁっ……!?」 アストはまたも壁に叩き付けられる。 強い衝撃が立て続けにアストに襲い、アストは脳震盪を起こしてその場で動けなくなってしまう。 「ダメニャッ、大型モンスターが二体同時じゃ捌ききれニャい……!」 セージはネルスキュラの鉤爪を回避しながら舌打ちする。 そうしている間にも、ドスゲネポスはアストに止めを刺そうと彼に近付く。 「まずいニャッ……!」 だが、セージはその場から動けなかった。 いつの間にか、セージの足に蜘蛛の糸が絡み付いていた。 「クッ……運がなかったかニャ……」 さしものセージも、もはや諦めかけていた。 ふと、銀色の何かがセージの目の前を通りすぎていった。 「!?」 セージはその銀色を見てその名前を叫んだ。 「カトリアッ!?」
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