- 日時: 2014/07/07 12:27
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: m4hom.De)
クロスオーバー 7倍quasar×ダブルサクライザー
十章 時の狭間
〜炎side〜
「(おい、望みの通りアマツマガツチを消し飛ばしたぞ。今度は何をさせるつもりだ?それと、あまり俺を怒らせない方がいい。存在を消されたくないならな)」 炎は念力で自分を試す者、聖に問い掛ける。脅しを含みながら。 〈なるほど、生身でこのアマツマガツチを倒せるとは正直驚いたね。心配はないさ、これ以上君にどうこうさせるつもりはない〉 念力を通じて、炎を挑発するかのような口調で話す聖。 〈ただ、最後にもうひとつだけ要件がある……〉 不意に、炎の目の前の空間が開いた。 炎はそれを見ても特に驚きもせず、眉一つ動かさない。 「(入ってこいと言うのか。随分と手の込んだ茶番だな)」 炎は何の躊躇いもなくその時空間へ踏み込んだ。 世界と世界を渡る、その時空間の狭間。 闇が蠢き、物の怪のようなモノが這いつくばり、誰かの邪悪な嘆きが聴こえる。 無論、それらを感じることが出来るのは炎ぐらい。地でも何か感じるが分からない。云わば常識を凌駕した世界。 最も、彼にとって既に見馴れたモノも同然だが。 〈やぁ、よく来たね〉 まるで遊びに来た知人を迎えるように、彼は現れた。 闇の狭間から、剣を持った青年が歩いてくる。その左腕はヒトとしての原形がなく、禍々しい鉤爪状をしている。 妖しい色彩の金髪、左右の瞳の色は異なり、それぞれ赤と青色をしている。 「貴様が聖・エールハースか」 炎は念力ではなく、声を出してその名を確かめる。 「そう。この僕が君から力をお預けにし、力を試していた存在さ」 聖が正体を明かすや否や、炎はハンドガンを抜き放って彼に銃口を向ける。 「さっさと力を返してもらおうか。全身蜂の巣にされた挙げ句で核を潰されたくなかったらな」 恐らく、聖は炎と同じく核を破壊しなくては消えない存在。事実、炎は脳髄を破壊されてもすぐさま再生する。 「ご立腹かい?なら、この戦いは僕の勝ちだね。冷静さを保っている僕の方が有……」 聖がそう言い終わるよりも先に、炎のハンドガンが火を噴き、無数の銃弾が聖のその身体を貫かんと迫るが、聖はそれら全てを指で掴んで防いでいた。 「今、何かしたかな?」 聖は掌を開くと、バラバラとハンドガンの銃弾が闇の底に落ちていく。 炎は動じていない。 「……」 剣を抜き放ち、炎は聖に向かって瞬間移動と見紛うばかりのスピードで接近する。正確には、この時空の闇を操作して距離を葬っただけだ。 「あくまで人の話に耳は傾けないかな」 肉眼では捉えられない炎の太刀筋を、聖は左腕の鉤爪で弾く。 「それなら、相応の態度を取らせてもらうよ」 聖は闇の中を飛翔し、その背中から幾つもの銃剣が飛び出し、それらはまるで意思を持つかのように動き出した。 「ハイドゥン・フェザー(影の翼)」 聖の声と共にその銃剣は一斉に四方八方から炎に襲いかかる。 「オールレンジ(全方位)攻撃か……!」 また面倒なモノを、と炎は舌打ちする。
〜ニーリンside〜
まさにあっという間だった。 多少なりとも自分とツバキがダメージを与えていたとは言え、大型モンスターがこうも簡単に倒れるとは思わなかった。 装備の性能もさることだろうが、ロアルドロスと対峙するに当たって、一切の無駄がなかった。 一体どれだけの生死を味わえばあんな力が身に付くのだろうか。 「おーい、ほれ。剥ぎ取っていいよ」 地がロアルドロスの側で手を振っている。 とにかく、死体が腐敗してしまう前に剥ぎ取りをしなくては、とニーリンは剥ぎ取りに向かった。 村に帰るまでの帰り道、ニーリンは地にあれやこれやと質問をしてみたが、地は全て冗談混じりで答えるので、結局何も分からなかった。
〜ユリ&冥花side〜
ユリは躊躇しながらも、その釣りエサとなるミミズを掴んでみる。 ユリの指先が触れると、そのミミズが反射的にくねり、抵抗する。 「ひゃっ」 ミミズの反射に、ユリも反射的に手を引っ込める。 さすがにミミズを直接触れることは、箱入り同然の生活を送っていたユリには不慣れもいいところだ。 「ちょっといいかな」 農がユリの隣から手を伸ばすと、何の躊躇なくミミズを掴み上げると、ユリの釣竿の針に刺してやる。 「はい、どうぞ」 ミミズは針に刺されてもなお暴れまわっているが、しっかり差し込まれたそれは簡単には抜けない。 「あ、ありがとございます」 ユリは農の手慣れぶりに目を見開きながら、その釣竿を受け取った。 チャポン、とエサのついた釣糸が川に投げ込まれる。
〜残妖side〜
それから何分か戦っていると、不意にアオアシラは背を向けて、足を引き摺りながら逃げていく。 脚を引き摺っている時は瀕死なのだと地から教えてもらったことがある。 その逃げていくアオアシラの後ろ足に、カトリアの右腕に従っている虫が放たれ、それがぶつかると同時に雷をアオアシラに浴びせた。 「グギャアァァァァ!?」 アオアシラは体勢を崩してその場で倒れ込む。 止めなら今だ。 残妖は真っ先にアオアシラに肉迫し、無防備な背中にラスティクレイモアを一閃した。 「グァオォオウゥ……」 その残妖の一撃で、アオアシラは断末魔の唸りを上げてその場で横たわった。 依頼は達成だ。 「や、やれました」 残妖はホッと息をついて、ラスティクレイモアを鞘に納めた。 「みんな、お疲れ様」 カトリアは虫を右腕に呼び戻し、長柄の得物も背中に納めると、全員に労いの言葉を与えてくる。 剥ぎ取りを終えてから、ベースキャンプまで戻り、少し休んでから村へと戻った。 その帰り道、霊華がお腹を空かせてへろへろになっていないだろうか、など思いながら勝利の余韻を味わっていた。 |