- 日時: 2014/07/15 19:37
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: LFePxgM2)
クロスオーバー 7倍quasar ×ダブルサクライザー
十六章 沈む地、眠る炎
〜アストside〜
「……なんか、最初に見たときより良くなってる?」 アストはその微かに蒼色をしている温泉を見て、目を細めた。 「あぁ、地さんが何かを入れてくれたんでしょうか」 地があぁにも真っ青な顔をしているのは分からないが、この温泉に何かしてくれたのは間違いなさそうだ。 更衣室で防具を外して湯浴のタオルを腰に巻いて、アストと農は出てくる。セージはアイルーなので丸裸でも何ら問題ない。 まずは身体を洗うか、とアストは適当な桶に温泉のお湯を汲み上げ、石鹸を泡立てる。 アオアシラとの戦いでも汗はかいている。垢もしっかり擦って落として、全身を洗う。 きっちり洗い終えてから、温泉へ浸かる。 「はぁぁぁぁぁ……これは癒されるなぁ……」 肩まで浸かって、溜まっていた空気を換気するかのように吐き出す。 農も一歩遅れて入ってくる。 「いい湯ですね」 この場にいるのは、アストと農のみ。 セージは入る前に、ドリンク屋と言うらしき飲み物を扱うアイルーに話し掛けていた。 「マタタビ酒と言うのはあるかニャ?」 「へへっ、ありますニャ。お客さんは初回ですニャ、最初の一杯は無料で差し上げやしょう」 「おぉ、ありがたいニャ」 もう温泉の中で飲むつもり満々だ。 その様子を遠くから見ていたアストは苦笑する。 あとは、地だ。 「地さん、どこにいったんだろ」 「……呼ばれた、気がしたぁ……」 ふと、後ろから地の声が聞こえた。 防具は外して湯浴タオルは腰に巻いている。 すると、地はそのまま倒れるように温泉へダイブする。 「ちょっ、大丈夫ですか地さん!?」 アストはドザエモンのようにぷかぁ……と温泉に浮かぶ地を見て、慌てて駆け寄る。 「それじゃ窒息するからっ、ちゃんと顔は温泉から出して!」 何があったかは知らないが、とてつもなく疲れていたことはわかる。
〜残妖&ルピナスside〜
「ねぇ残妖ぉ、お腹空いたぁ〜」 霊華は部屋に戻るなり残妖にすがり付いた。 ついさっきまで人をおちょくっておいてどの口が言うか。 しかし残妖は霊華を卑下するつもりはなく、「分かりました」の一言で承る。 「ではぁ、私も晩ごはんを作りますねぇ」 ルピナスも立ち上がり、残妖と共に地が先程色々押し込んだボックスを覗く。 本当にいろいろな食材がある。これだけあれば何でも作れる。 「どうしましょうルピナスさん。私たちは皆合わせて、十六人もいますよ?」 ミナーヴァのメンバーが大半を占めているのだ。 ならばとルピナスは軽く手を叩く。 「でしたらぁ、お鍋にしましょぉ。それならぁ、いっぺんにたくさん作れますしぃ、好きな分だけ食べられますよぉ」 好きな分だけと言うと、霊華の好きな分と言うのは計り知れない。 まぁ、食材はたくさんあるのだ。そこそこの量は作れる。 「分かりました。味付けは……」 残妖とルピナスはボックスを漁りながら、料理の話に持ち込んでいく。
〜炎side〜
適当な木陰を見つけ、炎は寝床として定める。 「腹も減ったな」 いくら人間離れした存在とは言え、やはりヒト。 睡眠と同じ、十日はほぼ飲まず食わずだ。 適当に食糧と飲み水を探すために歩く地。 飲み水は上流の川なら、熱処理すれば比較的安全に飲める。 霊峰付近であるここは、かなり上流の川が流れている。 どこにそんなものを持っていたのか、炎は金属の鍋を取り出して川の水を汲む。ちなみにこの鍋、打撃武器としても強力な性能を発揮する。 水はこれでいい。 問題の食糧だ。 ふと、丁度いいところにガーグァの群れが通り掛かってきた。 少し忍びないが、と炎は一番成体に近いガーグァの後ろに回り込み、そのガーグァの尻を叩いた。 「グァゲェェェェェッ!?」 尻を叩かれたガーグァはその場で卵を産み落として、逃げていく。 それに続くように他のガーグァ達も逃げていく。 「すまんな、俺も生きるためだ」 小さく詫びると、その卵を拾った。 そのあとは、その辺に生えている山菜などを拾い、やはりどこから出したのかもうひとつの鍋の中に細かくしてぶちこむ。 十数分後には、熱処理して少しは清潔になったお湯と、適当に味付けした山菜の煮込みが出来上がる。 ガーグァの卵はフライパンで火を通して分厚い目玉焼きとして頂いた。 「いただく」 自然への感謝を表して、炎は静かに手を合わせた。 たまにしか摂らない食事も、いつもなら腹に押し込むだけのことだが、今回は味わうことにした。 「……地達も食事摂っているだろうか」 彼らなら、残妖がいるだろうし問題はない。問題があるとすれば霊華の食事量だ。あれはさすがの炎も絶句する。 まだ少し熱い水を一口飲み、分厚い目玉焼きをかじる。 目玉焼きの白身を食べて「ソースか醤油が欲しいな」と人間臭い、いや、東方人臭い独り言も発した。 それでも易々と目玉焼きを平らげ、山菜などの煮込みも口に入れていく。 適当な味付けであるそれは、旨いかと言われれば微妙だ。普通に食べれる程度だ。 山菜の煮込みも平らげ、炎は鍋とフライパンを川で洗う。そしてそれらはどこかへしまっておく。 焚き火はそのままに、炎は木にもたれかかる。 目を閉じると、一瞬で睡魔が襲う。 それに身を委ね、炎は眠りについた。 |