- 日時: 2014/04/30 04:15
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: vxxiPhGs)
クロスオーバー ダブルサクライザー×翼の勇車
一章 未知という未知
ニーリンside
「ふむ……ふむ、ふむ?ふむぅ……」 ニーリンは上を見て、左右を見て、下を見て、正面を見る。 ここは、地形の半分が砂浜で、残りは深い木々だ。 「よし、一つだけ分かったぞ。ナイアードくん、エルミール殿、マカオンくん」 ニーリンはエリス、ライラ、マガレットの三人に向き直る。 「ここはどこか分からん、というのは分かったぞ」 自慢げに言い張るニーリン。 「あのね、ニーリンアンタねぇ……ドヤ顔して言うことじゃないでしょうが」 ライラは大きく溜め息をついた。 「……ライラックさんに同意します。分からないということが分かっても意味がありません」 エリスは冷ややかな視線をニーリンに送った。 そんな冷ややかな視線を受けながらも、ニーリンは飄々と答える。 「まぁ、仕方あるまい?昨晩はいつも通り?いつものベッドで?いつもと同じ時間に?眠った……で、その結果がこれだ。私は全知全能の賢者ほどお賢くはないんだ。今あるオツムで我慢してくれ」 そう……いつもと同じ、時間に、ベッドで、眠ったはずだ。そしてなぜ、起きた時には世界が変わっていて、服装も寝間着ではなく、いつも身に付けている私服や装備になっているのか? 「あの、ここで止まって考えても仕方ありませんし、少し歩いて手掛かりを探しませんか?」 ここで真っ当な意見を出すのはマガレット。 「おぉ、さすがはマカオンくん。そうだな、ここから五つの道に分岐しているようだが、どう見る?」 ニーリンはマガレットに意見を求めてみる。 「まずは、ここがハンターの立ち入る狩り場がそうでないか、ですね。もしそうであれば、安全なベースキャンプがあるはずですし、他に人がいたとしたら、待っていれば帰ってくるはずです」 マガレットの意見は正しい。もしここがどこかの狩り場だとしたら、どこかにベースキャンプがあるはずだ。まずはそこを拠点に、ということだ。 ふと、ニーリンはその深く木々の隙間を目にする。 「あぁ、今のマカオンくんの発言でようやく気づいたぞ」 そして、背中の妃竜砲【遠撃】を展開し、通常弾を装填し、引き金を引いた。 放たれた弾丸は、木の葉を蹴散らし、そこに潜んでいた巨大な昆虫らしきモンスターを四散させた。 「ここは、狩り場のど真ん中ということだ」 フゥッ、と煙の洩れる銃口を一吹きするニーリン。 それを合図にしたかのように、気配は現れた。 その気配、浜辺の海からだ。 「ギュオォォォォォッ!」 海岸の海の中から、鮮やかな翡翠色をした巨大な魚のようなモンスターが顔を出した。 「安全と思える場所へ避難しろ!死にたくないならな!」 ニーリンはそのモンスターに向き直りながら怒鳴る。 ライラがエリスとマガレットの手を掴むと、無理やり引っ張っていく。 これでいい。これで守るべき者はひとまず安心できる。 目の前のターゲットにのみ、意識を集中出来る。 「やぁやぁ、おさかなクン。とりあえずその美味しそうな身を塩焼きにして頂こうか?」 「ギュオォッ!」 そのモンスターは、ニーリンと対峙するかのように陸地へ上がってきた。 ニーリンは妃竜砲【遠撃】に火炎弾を仕込んだ。なぜそれがあるのかは、今は考えないことにした。
セージside
「ここは、どこなんだ?まずはそれが知りたい」 ツバキは鍾乳石の生えた岩壁を見ながら、誰とは言わずに訊いてみる。 「それが分かるニャらとっくに教えてるニャ」 セージは腕を組みながら辺りを見回す。 「そうですねぇ、ここはどこなんでしょうかぁ?」 ルピナスは特に焦りも怯えもせずに首を傾げている。 「ほぇーっ、とっても大きな洞窟ですねーここっ」 シオンはまず状況が分かってないのか、鍾乳石の洞窟全体を見回して感嘆の溜め息をつく。 セージは直感的に感じたことがまず一つ。 この状況、ルピナスやシオンは恐らく頼りに出来ない。少なくともツバキはまだ良識人だ。彼を上手く動かして、この状況を打破しなくてはならない、 「起きたらびっくり、タロウ・ウラシマだニャ」 よく分からない例えを口にして、セージは呆れのような溜め息をつく。 なぜこんなことになっているのかすら分かっていない状態だ。 いつものように眠ったはずだ。 それで、起きたらこの状況。理解しろと言うのが不可能な話だ。 「何だか飛竜でも入ってこれそうなくらい広いですねーっ」 シオンは呑気にそんなことを言い出す。 果たして、それが前振りだったのかは分からないが、どこからか翼の音が聞こえてくる。 「おいおい……まさかの、か?」 ツバキはその翼の音の近付いてくる方へ向き直る。セージも警戒する。 相手の姿が見えた。 それは『青い』イャンクックだった。 「青い……イャンクック?」 ツバキは背中の斬破刀を抜き放って構える。 「恐らく、亜種か何かだろうニャ。油断するニャよ」 セージもラギアネコアンカーを抜き放つ。 「クォクォクォクォッ、クワァァァァァァァァッ!」 青いイャンクックは上体を一度起こすと、威嚇する。 ツバキとセージは一気にニ手に分かれて接近する。 「シオンとルピナスを怯えさすニャよ」 「了解」 斬破刀とラギアネコアンカーが、左右から縦横無尽に青いイャンクックを捕らえていく。
アストside
少しだけ回りの様子を見てくると言ってから、雑木林に入っていったアスト。 だが、そこには紫色の巨大な甲殻類がいた。 その巨大な甲殻類はアストに気付くと、その二本の角が生えていたのだろう、モンスターの亡骸を向けながら突進してくる。 「なんで……」 おかしい。 いつものように眠っただけではないか。 だとしたら…… 「何でこんなことになるんだってのっ!」 アストは憤りを吐き出しながら、コマンドダガーを抜き放って対峙する。 |