- 日時: 2014/04/30 19:17
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: aVR99xfg)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
四十七章 ニューウェポン・チャージアックス
チコ村での滞在を続けること数日。 エリスを通じての話になるが、ギルドの方では黒蝕竜ゴア・マガラに対する調査は姿勢こそ積極的だが、ナグリ村付近の海上で目撃があった以来、ゴア・マガラは忽然と姿が見えなくなった。 どこか別の大陸へ移動したのだろうか。 そう決め付けていた調査隊は半ば解散しかけていたが、ある日突然、その時を狙っていたかのようにゴア・マガラは再び現れたのだ。 調査隊や討伐隊が派遣されたものの、その全てが壊滅。 現在、ゴア・マガラは未知の樹海に縄張りを張っているらしい。それが、調査隊から送られた最後の手紙だった。 筆頭ハンターと呼ばれる、エリートハンターが束になった集団ですら軽く一蹴されたのだ。 そしてある時、いつものようにエリスの元へ伝書鳩が送られた。 ただ、いつもの違うように見えたのは、『緊急』を意味する赤い紙が、伝書鳩の脚にくくりつけられていたからだ。 エリスはそれを受け取って読むと顔を真っ青にし、すぐにカトリアへ報告した。 アストは自室で武具や道具の整備整頓をしていた。 アストとニーリン、セージは、ツバキという新たな仲間と共に更なる狩猟に挑んでいた。 仲間が増えれば戦略の幅が広がり、手強い相手にも太刀打ち出きるようになる。 氷海にて化け鮫ザボアザギルや白兎獣ウルクスス、原生林にて絞蛇竜ガララアジャラの他に、ネルスキュラ二匹の狩猟という無理難題までやり遂げた。 そんな狩猟の中で、アストはジレンマを感じていた。 今の彼の装備は、コマンドダガーを強化したデッドリーナイフ、ネルスキュラの素材を用いたスキュラシリーズだ。 装備を見れば、それ相応のものだと第三者は言うだろう。 それでも、アストは現状に強い不満を感じていた。 「やっぱり、このままじゃダメだ。ライラさんと相談しないと」 アストは自室出ると、ライラの工房へ向かう。
「なんだって?火力が足りない?」 ライラは驚いたようにアストに目を見開く。 アスト自身、ライラの腕の良さを否定するつもりはない。 このデッドリーナイフも、ライラから作られたものだ。狩りにおいても信頼してきた相棒のことを信用していないわけでない。 「はい、ツバキやニーリンを見ていると今の俺は力不足に感じるんです。だから、こうして相談に来たんですけど」 そのアストの言葉を聞いて、ライラは難しく表情を歪める。 「ん〜……決してデッドリーナイフが悪いわけじゃないってことは自覚してんのね?」 「まさか、ライラさんの作ってくれる武器は不満を探す方が難しいくらいです」 「アンタってさりげなく嬉しいこと言うじゃない?まぁ、それは置いといて……」 自分の仕事を誉められてか、ライラは頬を緩ませたがそれも一瞬だ。 「ただ純粋に、自分の力量で片手剣じゃあ限界を感じる……そういうこと?」 「そんなとこです」 片手剣は一撃の威力の低さを手数や属性攻撃で補う武器なのだが、現時点でアストの持っている片手剣では、属性と斬れ味が両立しない武器がほとんどだ。例え威力が高かろうと低かろうと、斬れ味がなまくらでは攻撃そのものが難しいからだ。 「そうねぇ……特にアンタの場合は、自分が先頭張ってアタッカーを強いられる立場にある……そもそも、片手剣っていう武器そのものが、アタッカーに向いた武器じゃないのよね」 ましてや、無属性の片手剣がアタッカーではなおさらだ。 ライラはしばし人差し指を額に置いて考える。 「この際、新しい武器を使うってのも一つの選択肢だよ?」 「ここに来るときには、半分くらいそのつもりでした」 「話は早いね。そこで、今のアストのご希望を叶える武器が、今の時代はあんのよ」 ライラはニカッと笑うと、早速アストを工房の奥へ連れていく。 「その、新しい武器っていうのは?」 アストは答えを勿体振るライラを見て訊いてみる。 その問い掛けに、ライラは倉庫にあるそれを取り出して答えた。 「盾斧、『チャージアックス』さ」 ライラは意気揚々とそのチャージアックスについて説明を始める。
チャージアックス。 近年になってバルバレ周辺で開発された新型の武器だ。 スラッシュアックス同様に、ソードモードとアックスモードのニ形態を変形によって姿を変える。 ソードモードでは片手で剣、もう片手で盾を持つという、片手剣に近いモーションを取るが、片手剣よりも遥かに大型の武器であるために、一撃の威力やリーチは勝る反面、片手剣本来の手数や機敏さが低下している。 これだけを見れば潔く片手剣を使った方が良く見えるが、チャージアックスの真価はその先だ。 ソードモードでのダメージを与えていくにつれて、剣の中にエネルギーが蓄積されていく。そのエネルギーを盾と組み合わせて供給することで、盾に仕込まれている属性ビンが発動する。 ここで、ようやく変形の時だ。 剣と盾を合体させ、盾を斧として用いることで、手数や機敏さ、さらにはガードの使用も犠牲にすることで強力な一撃を放てるアックスモードとなる。 隙もかなり大きくなるリスキーな形態だが、仕込まれた属性ビンを解放するその一撃は強力無比の一言。 さらには、ビンに仕込まれている属性をさらに強く解放することで、高出力属性解放斬りという必殺技を放てる。隙の大きさも半端ではないが、直撃させたその破壊力はリスクと比べるまでもない。 いかに効率良くエネルギーを『チャージ』し、どれだけ『アックス』としての破壊力を引き出せるかにかかる武器だ。
「んまぁ、こんなとこかな。なんか聞きたいことある?」 あらかた説明を終えてライラは一息ついた。 「大体は分かったんで、即戦力になりそうなチャージアックスとか作れますか?」 そっちか、とライラは呆れで溜め息をついた。 「んじゃ、属性に困ってるような感じも見せてたし、ここは……」
その頃、エリスから報告を受けたカトリアはすぐにミナーヴァのハンター達を呼び寄せた。 アスト、ニーリン、ツバキ、セージ、以下四名だ。 「皆に聞いてほしいことがあるの。よく聞いて」 その場の三人と一匹は唾を飲み込んだ。 「私達は、これよりチコ村を離れて、バルバレに行きます。理由は、これにあります」 カトリアは全員にそのギルドからの緊急の手紙を見せる。 それを見て、全員の目付きが変わった。 『未知の樹海にてゴア・マガラを発見。狩猟可能なハンターは直ちに向かわれたし』 そう書かれていた。
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