- 日時: 2014/05/06 11:39
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: EMPnSV.u)
クロスオーバー ダブルサクライザー×翼の勇車
九章続き
セージside
刺々しさのない、イャンガルルガのルカ。 セージ自身も、イャンガルルガという相手はこれまでに一度だけ一戦交えたことがあったが、ハッキリ言ってかなり強い相手だった。 まずは肉質の硬さ。特別柔らかい頭部などを除けば、まるで岩を斬っているかのような感覚ばかりだ。 戦闘能力も非常に高く、鳥竜種の素早い立ち回りに、リオレイアを思わせる火炎ブレスとサマーソルト攻撃。しかもそれらを独特な使い方で使ってくる。 さらに厄介なのは、超音波のような咆哮だ。これら頻繁に行ってくるために、無防備な状態を晒してしまうことも多かった。 外見も、イャンクックのようにどこか可愛いげのある姿ではなく、鋭い棘が無数に生え、クチバシも眼光も尖っている。 恐らく数多くの鳥竜種の中でも最強だと思われているほどの強さを持っているのだ。 しかし、目の前でクックに泣き付いているルカはそんな凶暴な様子は微塵も感じられない。 極希に見られる、せいぜいジャギィ程度の大きさのイャンクックを上から紫色に塗ったのではないかと思えるほどだ。 凶暴どころか、逆にイャンクック以上に可愛らしくも見える。 「わはーっ、可愛い鳥さんですーっ!」 シオンはルカを見てはしゃぎ、思わず駆け寄る。仮にもモンスターということなど頭の片隅にもないだろう。 「ふぇっ!?」 当然、ルカは駆け寄ってくるシオンを見てさらに怯えるわけで。 そんな怯えた様子など全く意に介さず、シオンはルカに近付くと頭をなでなでする。 「わっ、あうぅぅっ」 ルカは頭をなでなでされて肩をすくませる。 「ほぇーっ、特大サイズのぬいぐるみみたいですーっ。そーれっ、なでなでなでなで〜っ」 「おぁっ、おぅぅぅぅぅ……」 シオンはさらになでなでしにかかり、ルカも何だかなでなでされてまんざらでもなさそうだ。 そこからさらに頬擦りをしたり、身体に抱き付いたりするシオン。 セージやクックと言った保護者(?)はその様子を静かに見守っている。 「なぁセージ。この子はいつもこんな感じなのか?」 「否定出来んニャ」 「しかし、まぁ……」 シオンの熱烈なアプローチを受けて、ルカは警戒を解いてくれたのか、シオンを背中に乗せて走り回ったりしている。 「おわわーっ、速いですーっ!」 「えへへー」 見るからに楽しそうだ。 「ルカにとっても、あれくらい刺激的な方がいいかも知れないな」 クックはその楽しそうな様子を見てフッと微笑む。 その最中、ツバキは「食事にするんじゃないの?」と内心で思っていたが、しばらく黙っておくことにした。 あのシオンとルカは、しばらく止まりそうにないからだ。
アストside
「ギザミの仲間って言うと、やっぱり同じ蟹なのか?」 このエリアから、少し坂になっている細道を上がるアスト達とギザミ。 「うぅん。むしろ、種から違うよ。ボク達のような存在は種が異なっても、ヒトと同じように分かりあうことが出来るんだ。普通は、鳥竜種は鳥竜種でもランポスとイャンクックと別れていたりするけど、そんな隔てはないと思ってくれていいよ。むしろ、君達のようなヒトを見ていてつくづく思うんだよ。ボク達は外見が異なるだけで、ヒトと何ら変わらないじゃないかって」 ギザミはアストに向き直る。その拍子にカトリアがビクッとアストの背中に逃げてしまう。顔だけは出してくれるので少しは心を許してくれているようで安心する。 「アスト君達は別にして、ヒトとヒトとの争いは今なお続いていると聞いてるよ。それは悲しい。ボク達でさえ分かり合えるのに、どうしてヒトは同胞と争おうとするんだろうね?」 ギザミはその甲殻種特有の顔を少し寂しげにする。 ヒトだからと侮っている分けではない。ただ純粋に、子供のような疑問を思っているだけだ。 アストとユリはそれに対して答えることが出来なかった。直接、自分達には関係がなく、ましてやそんな話は表で聞いたりしないからだ。いざそれに触れられると返答に困るものがある。 だが、それに答える者はここにいた。 カトリアだ。 彼女は、そっとアストの背中から離れると、アストの隣につく。もちろん、手は握ったままだが。 「ギザミくんの言うことは、分かる。私達ヒトは、モンスターとだけでなく、同じ人間同士でも争っている。でもね、ギザミくん達が根本的な種から違っていても分かり合えるように、私達ヒトも、いつかは分かり合えるはず。私達は、自分達のことばっかり一生懸命になっていて、ギザミくんみたいな周りを見ようとする姿勢を忘れているのかもしれないね」 カトリアはギザミから目を逸らそうとして、それでもちゃんと向き合って話そうとする。 アストとユリはそんなカトリアの気持ちを汲み取ってか、それぞれ左右から手を繋いでやる。 「アストくん、ユリちゃん……」 「頑張って、カトリアさん」 「私とアストくんが、ついてますから」 アストとユリはカトリアに微笑みかける。 その微笑みに、カトリアは勇気を貰えたのか、ちゃんと逸らさずにギザミと向き合う。 「現に、他人同士だった私達がこうして手を繋ぎあっている。子供の理想みたいなことだけど、世界中の人達がこうして手を繋げられるって、私は信じてる」 「………」 ギザミはカトリアのその言葉に、感銘を受けていた。 アストとユリも、カトリアのその言葉で握っている彼女の手をほんの少しだけ強く握る。 「カトリアさんは、優しいヒトだね。優しくないと、そんな言葉は出てきたりしないよ。だから、アスト君もユリちゃんもカトリアさんの側にいるんだね。何だか、ちょっとだけ羨ましいや」 ギザミは照れ臭くなったのか、坂道の方に向いた。 (ミズキとは違うけど、カトリアさんもミズキも、考えることは一緒か……ぜひとも、ミズキやカスケ君にも合わせたいな) まずは他の皆からだな、とギザミは坂道を進んだ。 アストとユリは、カトリアと手を繋ぎながらその背中を追う。
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