- 日時: 2014/05/16 10:29
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: B7VMn0RI)
クロスオーバー ダブルサクライザー×翼の勇車
十五章続き
……………… ………… …… 何故か、ペッコのその発言で沈黙に包まれる。 「あれ?俺、なんか変なこと言ったっけ?」 ペッコはその筒状の形をした変なクチバシを傾げる。 そのわけを応えるのはアスト。 「あのなぁ、ペッコだっけ?そんなプロポーズみたいな感じで言ったら、そりゃこんな風にもなるって」 アストの口から「プロポーズ」等と言うロマンチストの言葉が出たのも意外だ。 「と、とりあえず、私に用があるんだよね?」 ユリもいち早く落ち着いたのか、ペッコに向き直って彼の前に立つ。 「そう!そうですよユリさん!歌姫のあなたと、モンスター界のアーティストと呼ばれた俺がデュエットすれば、種を超越した究極の芸術が生まれる!」 ペッコはぶんぶんとその変なクチバシを縦に振る。これまでに話の合うモンスターがいなかったようだが、それにしては興奮しすぎだ。 「さぁユリさん、俺と一緒に……」 「ちょっと待った」 ペッコはその翼でユリの手を取ろうとした時、その手を遮る者がいた。 右手に斬破刀の柄を掴んでいるツバキだ。 「アンタが誰だか知らないが、ユリにおいそれと手を出すな」 ツバキは第三者に向ける警戒の声でペッコと向き合う。 途端、ペッコは声色と態度を一変させる。 「ぁんだとこの男の娘?てめぇはさっさとそこの男とくっついてろ」 ペッコがアストを一瞥しながらツバキを睨む。 その男の娘という言葉を聞いて、ツバキの中で何かが切れた。 「だ、れ、が、男の娘だ……?」 ツバキは躊躇いもせずに背中の斬破刀を抜き放った。 その瞬間、アストは咄嗟に「やばい」と判断して、後ろからツバキを羽交い締めにする。 「よ、よせってツバキッ!何でそんなに怒ってんのか知らないけどっ、落ち着……」 「放せアストォッ!見た目だけで判断するようなこのゲスをっ、ユリの側にいさせてやるかっ!」 「それってお前の私怨入ってるよなっ!?いいからやめろぉぉぉぉぉ!!」 その様子をペッコは気にもせずに、ユリの手を取っていた。 ユリも戸惑いがちにペッコに手を取られる。 「てめぇっ、その汚い手を放……んぐ」 「もういいからお前は黙ってろっ!」 ツバキを押さえながらその口も塞ぐアスト。 とりあえず、この二人は放置して構わないだろう。 ユリはペッコに手を取っていた取られながら話し掛ける。 「でもペッコくん?ヒトの曲と、モンスターの曲って違うよね?」 「心配無用ですよユリさん。俺は相方のメロディラインを拾いながらそれに合わせることも出来ますから」 「そ、そんなこと出来るんだ?すごいね」 「いやぁ、それほどでも」 ペッコは照れ笑いする。 「〜!〜〜!〜〜〜!!」 それを見てツバキはアストに口を塞がれながら汚い言葉を吐き散らしている。 「分かったっ、分かったから落ち着けってツバキィッ!」
紆余曲折の末に、ユリとペッコが皆の前で並ぶ。ちなみに、ツバキはアストとライラによって拘束されている。斬破刀ももちろん没収。 しかしユリの曲が始まると分かったのか、今はおとなしく黙っている。今はおとなしくしているだけで、曲が終わればまた騒ぎだすだろうが。 「魅せてもらおうか、暁の奏姫の実力とやらを」 ニーリンはユリを見やる。 ユリは深呼吸を繰り返し、静かに目を閉じる。 そして大きく息を吸い、その息を声として返還し、それを響かせる。
ここから見えるあの星空に あなたを想い浮かべていました あなたは今 どこで何をしていますか? 今も私の隣にいるような そんな気がします また明日 そう言ってくれた たった一晩すらも待ち遠しくて 夜は眠れません 瞳を閉じれば あなたの姿しか見えなくて いつも私を惑わせる 静かな星のように 見詰めていたいの 例え曇りでも 光は消えないから 夜空を流れていく 流れ星のように あなたの所へ 今すぐ行きたいの 心を開いて
ユリの口から流れていた、旋律が止まる。 歌い終えたのか、ユリは一礼する。 その瞬間、辺りは歓声に包まれた。
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