- 日時: 2014/05/19 11:38
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: xT.8.aN4)
クロスオーバー ダブルサクライザー×翼の勇車
十六章続き
「カトリアさん、分かるでしょう?」 アストと手を繋いでもらっているカトリアに話し掛けるギザミ。 アストとカトリアはギザミに向き直る。 「あんな風に軽い気持ちでお互いに触れ合っているんです。さっきも言いましたけど、見た目が違うだけでアスト君達と何も変わらないんです。だから、怖がることもありませんし、むしろ、怖がられたら向こうが心配するんです」 「ギザミ、くん……」 カトリアはギザミと目を合わせる。 相変わらず表情が読めない顔だが、触角がわずかに垂れ下がっているところ、微笑んでいるのかもしれない。 「ユリちゃんはすごいですよ。もうペッコと仲良くなって、次はクックとトトスと話してますし」 そう言ってギザミは、ユリのいる方向、クックやトトスに目を向ける。 「ユリ、だったか?さっきは素晴らしい歌だった。こんなにも心が休まったのは、久しく忘れた時以来かもしれない」 「そ、そんな大したことじゃないよ。あれは何度も歌い慣れてたし……」 「いやぁ、思わず寝そうになっちまったぜ。ペッコと組むにゃもったいないくらいすげぇな」 「おぉいトトスッ、今なんつったぁ!?」 クック、トトス、ペッコは軽口を叩きあっている。そんな様子の中心にいるユリは小さく笑っている。 ギザミはユリを見ながら応える。 「ミズキは、ボクたちがアプローチを掛けて仲良くなっていった感じだけど、ユリちゃんは自分から仲良くなろうとしている。ある種の才能だね」 「才能なんかじゃないよ」 ギザミに声を掛けるのは、ツバキだった。ペッコと和解したのか、拘束は解かれている。 「ユリは、歌姫として幼い頃から各地を転々としていたんだ。出先でも滞在出来る時間は短かったし、周りは大人ばかり。だから、友達は俺くらいしかいなかった。滞在中でも友達を作ろうとはしていたさ。でも、周りは皆ユリを歌姫って色眼鏡で見る。対等な意味で友達にはなれなかったのさ。だから、もっと対等になれる存在が欲しかったのかもしれない。今のユリは、その心の表れかもしれないな」 なるほど、孤独を嫌うがために自分から動こうと、仲良くなろうと、そう言った姿勢がモンスター達の心を開かせるのだろう。 「対等な存在か……、ニーリンも言ってたけど、どんな形でも有名人って言うのも大変なんだな」 アストはネルスキュラとの戦いの時のニーリンの言葉を思い出す。 「異名と言うのは好きじゃぁない。周りからは実力以上の結果を期待され、失敗したときの理不尽さには堪えがたいものがある」 当分先の先の話になるかもしれないが、名を上げて世界にその名を響かせれば、ニーリンのように有名になる代わりに自由が奪われていくのだろうか。 (それが理由で、ミナーヴァを離れることにもなるんだろうか?) アストはふとそんなことを思った。 だが、自分の右手を思い出す。 カトリアがいる。彼女だけではない。守るべきもの、守りたいものが、ミナーヴァにはたくさんある。 正直、富や名声など二の次、三の次だ。 大切な人達を守る。それがアストにとっての一番だ。 「お、続々と接近中やで?」 ゲネッポはランとイーオがやって来た方向を見通す。 雑木林の向こうから、続々とモンスター達がやって来ている。
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