- 日時: 2014/05/21 11:33
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: Tl79uYEE)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
五十七章 それは災禍の前兆
アスト達は、依然ゴア・マガラとの戦闘を続けていた。 ゴア・マガラは何度か怯むような様子を見せたが、倒れそうな気配は兆しすらも見えない。 「うおぉぉぉぉぉっ!」 狂竜ウイルスに感染しながらも、アストはアックスモードのディア=ルテミスを振るう。 リオレイアの素材から作られたチャージアックスは、遺憾無くその火力を発揮し、ゴア・マガラの黒く穢れた鱗を焦がしていく。 「グルオォッ」 ゴア・マガラはアストを噛み付こうと首を振り抜く。 アストは素早く反応してその噛み付きを避ける。 だが、それだけでなかった。 ゴア・マガラの牙は回避できた。 しかし、続いてその尻尾が唸りを上げてアストに襲い掛かる。 「しまっ……!?」 牙を回避したために、体勢を戻そうとしていたアストはその尻尾に打ち据えられる。 「ぐあぁっ!」 丹念に鍛えられたスキュラメイルはアストを致命傷から守るが、まともに尻尾を直撃したために、一部に亀裂が生じた。 衝撃に堪えられず、アストは吹き飛ばされた。 どうにか受け身を取りながらアストはすぐに起き上がる。 同時に、自分の身体の状態も確かめる。 まだ狂竜ウイルスによる症状は出ていないだろうが、それも時間の問題、しかも短い。 アストはマガレットから教えられたことを思いだし、一度ディア=ルテミスを納めると、ポーチからウチケシの実を取り出してそれを口にした。 すると、幾分か狂竜ウイルスによる感染が弱まったのか、少しはアストの身体が楽になる。 それから回復薬グレートも飲み干して、もう一度ゴア・マガラに接近する。 ツバキは保守的な立ち回りにはなったが、それでも確実にゴア・マガラにダメージを与えている。 セージはさすがと言うべきか、常にゴア・マガラにまとわりついて断続的に攻撃を仕掛けている。 時折爆発が起きているのは、ニーリンの拡散弾だ。 消耗は続いている。 だが、勝てるはずだ。 憶測だが弱点属性は突けている。 拡散弾の爆発は一つも外れていない。 何度も怯んだ。 もしかすると、もう勝てるかもしれない。 アストは希望を見出だしながらソードモードのディア=ルテミスを振るう。 袈裟懸け、斬り上げ、水平振り抜き……基本に忠実に、アストは攻撃を続ける。 攻撃を繰り返す内に、ふとアストの身体に変化が起きた。 体内を蝕んでいた狂竜ウイルスが突如消えたように感じた。それと同時に、全身に力がみなぎり、研ぎ澄まされるような感覚を覚えた。 (これは……まさか、マガレットの言ってた克服って奴か?) 攻撃を与え続けることで克服出来るとは聞いていたが、この急な感覚のことまでは聞いていなかった。 (でも、やれる!) アストはディア=ルテミスを合体させて盾にエネルギーを供給すると、そのままアックスモードに変形させて振り抜く。強属性ビンによる火属性が燃え盛る。 「グガルゥ……」 ゴア・マガラは明後日の方向を向くと、その場を飛び立った。 ペイントはニーリンが既に当て直している。 体勢を立て直してから、アスト達はゴア・マガラを追った。
どうやら二つか三つはエリアを越して移動しているようだ。 かなり奥まで進んでいる。 臭いが嗅げる以上、この未知の樹海からは逃げていないだろう。 岩壁に囲まれた狭い道を抜け、アスト達はそのエリアに入る。 中央に小さな小河が流れるエリア。 その中心に、ゴア・マガラの黒い外套が見えた。 だがそれは、平べったくなっている。 「眠っているのか」 ツバキは少しだけ安堵する。 「……」 だが、アストはツバキのようには思わなかった。 研ぎ澄まされた感覚が告げているのだ。まさかと思ってゴア・マガラに近付いた。 そして、それを見て目を見張った。 「いや、違うぞツバキ……、こいつは眠ってなんかないぞ……!?」 アストのその言葉に全員が反応し、アストの側に近付く。 そして、アストと同じように目を見張った。 それは、肉体を持たない、ただの『脱け殻』だったのだ。 |