Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!( No.43 )
  • 日時: 2014/04/21 12:07
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 3Pg8wgT/)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 三十六章 勝負の分け目は、君だ

 アストは自室で気合いを入れて準備を整えていた。
 何せ、相手はリオレイアを倒せるニーリンが「簡単ではない」と言うほどの相手、ネルスキュラだ。
 まずは装備から。
 ライラに一晩で修復してもらったクックシリーズを纏い、研ぎ澄まされたコマンドダガーを腰に納める。
 次に道具類。
 まず真っ先に入れたのは解毒薬だ。前回、ネルスキュラの鋏角を喰らって毒に侵されたのは身をもって知っている。
 次は消散剤。本来は身体にまとわりつく泥や雪を取り除くための道具だが、意外にもネルスキュラの糸にも効果的らしい。
 その次は、元気ドリンコ。これは、ギルド公認の栄養ドリンクの一種だ。飲めばスタミナを即効的に回復出来るが、その真価はそれではない。毒的に睡眠を促される攻撃を受けたとき、眠ってしまう前に元気ドリンコを飲むことで、それを回復出来るのだ。これはエリスからの情報で、ネルスキュラの腹は糸の塊を打ち出すだけでなく、催眠性の毒も分泌してくるらしい。
 それらを詰めてから、回復薬とそのグレート、こんがり肉、砥石、ペイントボール、シビレ罠といった基本的な道具を用意していく。
「おーい、アルナイルくん。準備は出来たか?」
 外から、ニーリンが呼んでいる。
「はいっ、今行きますから!」
 アストは急いでポーチに荷物を詰めると、外に出る。
 外には、レイアシリーズを纏ったニーリンと、相変わらずのラギアネコシリーズを纏ったセージがいる。
 そう、先程の誤解を巻き起こした食卓で、アストとニーリンは協力することにしたのだ。
 アストはもちろん、ミナーヴァや商隊のため。
 ニーリンは旅の途中だったが「弱者の力になるのがハンターだ。微力ながら助力しよう」と快く承諾してくれた。ちなみに、ニーリンはナグリ村の客人用の宿で一晩過ごしている。
「さて、ネルスキュラ狩猟に当たっての作戦会議と洒落混むか」
 アスト、ニーリン、セージは、ルピナスの食事所へ向かった。

 ルピナスに淹れてもらった紅茶を啜りながら、二人と一匹はテーブルを囲う。
「そうだな、まずはアルナイルくん。君はネルスキュラの狩猟経験は昨日以外にあるかな?」
 最初にニーリンがアストに向けての質問に出る。
「いや、ネルスキュラは昨日が初見でした」
「アルナイルくん。君と私は大して年齢もハンターランクも大差ない。ため口で構わんぞ?」
 アストが自分に対して敬語を使うのに気がかかったのか、ニーリンはその前に止める。
「分かりま、分かった。ニーリン」
「うむ、よくできました、と」
 ニーリンは頷く。
「さて次だ。オトモくん、君はどうだ?」
 オトモくん、というのは言うまでもなくセージのことだ。
「ネルスキュラ……奴ならモンニャン隊の相手として幾度も死線を交わしてきたニャ。全く知らんわけじゃニャい」
「なるほど、オトモくんは経験済み、と。私も二回ほど相手はしたことはあるが、ヘビィボウガンナーでは相性がよろしくない。敬遠したいのは山々だが、そうもいかんしな」
 ニーリンは軽く溜め息をつくと、紅茶を啜る。
「昨日も見た通り、私は拡散弾による長距離爆撃が主な戦術としている。そこでだ……」
 アストに向き直るニーリン。赤い瞳と碧眼が合う。
「アルナイルくんには、ネルスキュラに肉迫しての近接攻撃と同時に、私の撃つ拡散弾が奴に悟られないために注意を引いてくれ」
「つまり俺は囮ってことか?」
「物は言いようだな。囮と捉えるもよし、近接攻撃役と捉えるもよしだ。まぁ、どう捉えても言いたいことは一つだ」
 ニーリンはガンナーポーチから、それを取り出してアストに見せ付ける。
 右手の指の間に、三つの弾。
「勝負の分け目は、君だ」
 その三つの弾、拡散弾の尖端をアストに向ける。
「君が前線で踏ん張ってくれている内に、私の拡散弾が奴を仕留める。この作戦、了解か?」
 アストがどれだけネルスキュラに迫るかが、勝敗を別つ条件た。
 アストにとっては危険な作戦だが、ニーリンはニーリンで、外してはならないという、プレッシャーを背負うことになるのだ。
 どっちかが楽、ということはない。
「了解もなにも、それが一番手っ取り早いんだろ?」
「おぉ、よくぞ気付いてくれた。その通りだ。それが分かってくれれば、私から言うことは何もないさ。逆に、アルナイルくんやオトモくんから何か言いたいことはないかな?」
 ニーリンはアストやセージからも意見がないかと訊いてみる。
「オレは賛成ニャ。特に異論はニャい」
「俺も意見とかはないかな。後は見て覚える」
「うむ、了解したぞ」
 二人と一匹は紅茶を飲み干した。
「では行くか。奴を狩りに」
 ニーリンは下ろしていた赤髪をしばり、輪ゴムでしっかり 纏める。
 アストはクックアームに守られた右手をグッと握る。
(ここでネルスキュラを狩れなきゃ、ミナーヴァは前に進めない。俺自身もだ……)

 出発前、ナグリ村の村人達が総出で送ってくれていた。
「頼むぞぉ!」
「俺達の村に熱を取り戻してくれぇ!」
「リア充爆発し……」
 何か妙な一言が聞こえたのは恐らく気のせいだろう。
 カトリアもその中に混ざっていた。
「結局私は、誰かに守られてばっかり……」
 その小さな声は、誰にも聞こえなかった。