- 日時: 2014/05/24 09:14
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: yfMqnu/.)
クロスオーバー ダブルサクライザー×翼の勇車
十八章続き
ランとエリスは、ヒトとモンスターの関係について話し込んでいた。 「アイルーやチャチャブーも、元はヒトの社会とは別から生まれた存在。ヒトの言葉を覚えるのは、ヒトの社会で出稼ぎなどをするためだと聞いたことがあります」 「……では、あなた方のかつての先祖が、獣人と同じようにヒトの社会に混じって暮らしていた……そう考えれます」 「その可能性は高いでしょう。私の祖父母も生まれた時からヒトの言葉で生活していたと仰っていました」 「……もしくは、突然変異の一種の過程で前頭葉が著しく発達した、とも……」 「ふむ、謎は深まるばかりですね。生き物と言うのはいつまで経っても全てが分かりません」 ここは、収拾がつくまで時間がかかりそうだ。 「でしたら……」 「……ですが……」
ツバキは、楽しそうにモンスター達と触れ合っているユリを遠目から見ていた。 「楽しそうだな……」 楽しそうなユリを見ているのはいい。 ただ、自分がおざなりになっているのが少し気に入らなかった。 「アストくーん、カトリアさーん、こっちこっちー!」 楽しそうに手を振るユリ。 自分よりも、アストやカトリアを優先している。 ミナーヴァと出会ってからだろうか、ユリは変わった。 特に、アストの前だとあんな顔をよくしている。 作りのない、無邪気な笑顔を。 あんな眩しい笑顔、自分の前では見せてくれない。 「はぁ……」 ツバキは大きく溜め息をついた。 そんなツバキの肩を軽く叩く者達がいた。 「ギャァ」 「ギャォ」 二匹のゲネポス、ゲネスケとゲネカクだ。 「スケさんに、カクさんか」 ツバキはその姿を見て名前を思い出す。どっちがどっちなのかの見分けは分からない。 ゲネッポ辺りなら分かるだろうが、ツバキでは分からなかった。 「ギャギャ」 すると、ゲネスケが木の枝を掴むと、ガリガリと地面の土を削って文字を書いている。 ツバキはそれを見下ろしてみる。 「何なに……「大切な人が笑顔ならそれでいいじゃないですか」?いや、それはそうなんだけどさ。なんか腑に落ちないというか、何と言うか……」 「ギャォア」 すると今度はゲネカクが書き始める。 ツバキはそれも読む。 「んーと、「もしかしてアストさんがユリさんに奪われそうで怖い」?……って、何でそうなるっ!?」 何だかんだ言って、ツバキもモンスター達と馴染んでいたのだった。
ニーリンはヒトとモンスターが交じり合って楽しんでいる様子を見て頷いていた。 「何とも奇妙な交わりだが、皆笑顔で何よりだ」 カトリアはアストやユリと一緒なら、少しずつでもモンスター達と触れ合っている。 「なぁに一人で悟ってんだよぉ」 ニーリンの隣につくのはトトス。 「やぁトトスくん。私は今、明鏡止水の境地に至っているんだ。多分その内髪が逆立ったり、全身が黄金色に……」 「ならねぇよ」 「なんだ、つまらない」 ニーリンは不満そうに口を尖らせた。 「まぁ、明鏡止水どうこうは置いといてだ。結局の所、なぜ私達と君達は出会ったのだろうな?神様の悪戯にしては度が過ぎているとは思わないか?トトスくん」 そう、根本的なことは何も解決していないのだ。 何がどうなってこうなっているのか、未だに答えは出ていない。 「んぁ?んなもん俺様が知るかっつーの」 トトスは首を捻りながら答える。 「ふむ、そうか」 ニーリンは特に残念がることもなく頷いた。 「しっかし退屈だぜぇ、なーんか面白ぇこととかねーかなー」 トトスは欠伸をする。 「……」 ニーリンは自分の頬をそっとつねってみた。 その瞬間、ニーリンの身体がブレた。 「!」 それに慌ててニーリンは手を頬から離した。 なんだろうか、今のブレたような感覚は。 「おい、どうしたよニーリン?」 「おぉぅ?私としたことが、何もない所で転ぶところだったぞ?」 ニーリンは惚けたように言い逃れる。 「はっ、間抜けてやがんな」 「いやはや……」 参った参った、とニーリンはトトスから顔を背ける。 が、その内心は複雑な思考に満ちていた。 (今のブレは何だ……?考えられるとするなら、これが夢の世界であることを前提として、夢と同じように痛覚を感じることでレム睡眠から覚醒……それと似たような現象か?つまり、この夢の世界から退場、この世界において私の存在が『なかったこと』になる、というわけか……?) ぐるぐると思考を回してみるが、それ以上にらしい答えは出そうになかった。
ゲネッポ、ルピナス、ネオはクックの巣に到着した。 ここまでに様々な山菜や珍味などを拾えている。 それだけでなく、ランの指示なのか、ランポス達が次から次へと食に適した植物を持ってくるおかげで、かなりの量が揃った。 「ほな、各自でここにあるもん使うて作りたいもの作りましょか」 「はぁい」 「にゃー!」 早速調理に取り掛かる。 ルピナスは大量の食材を前に右往左往していた。 「うぅん、こんなにたくさんありますとぉ、何を作るか悩みますねぇ」 「ゆっくり決めたらえぇ。慌てんでも食材は逃げ……」 ふと、食材の山の中から甲虫種らしきモンスターが顔を出してそこから離れようとしている。 「ってクォラそこのカンタロス!何逃げとんねん!」 ゲネッポは慌てて逃げていくカンタロスを追い掛ける。 モンスターもモノによっては珍味になるモンスターもいるのうだが、さすがにルピナスもモンスターを使った料理はつくったことはないので、扱いやすそうなものなから取り寄せていく。 ネオは早くも算段を終えたのか、既に調理に取り掛かっている。 「ここで名誉挽回にゃ、ここで名誉挽回にゃ、ここで名誉挽回にゃ……」 何やら焦っているようだが、気にせずルピナスは包丁を手に取って食材をゆっくり切っていく。 「今日のごはんはなんでしょぉ〜、今日のごはんはなんでしょぉ〜、ピリッと辛いぃ、特産キノコのキムチ鍋ぇ〜♪」 のんびりとゆっくりとおっとりと歌いながら、それでも腕は止まらずに、ルピナスは調理していく。
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