- 日時: 2014/06/02 11:31
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 1M9rNqYx)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
六十六章 リーンカーネイション
「まぁ、何にせよ決まったな」 カトリアがアストに抱き付いている側で、ニーリンは頷く。 「今のイレーネ殿を見て気が変わった。そのシャガルマガラとやらの狩猟、やらせてもらう」 ニーリンの隣にいるツバキも同じだ。 「カトリアさんが死んだら、ユリも悲しむ。俺も手伝いますよ」 ツバキはユリを一瞥しようとするが、そのユリは既にそこにはいなかった。 そのユリは、カトリアに抱き付かれているアストの背中に回っており、彼の背中に抱き付いた。 「ユ、ユリッ……!?」 当然、アストは動揺するわけで。 「カトリアさんは良くて、私はダメなの?」 ユリほどの美少女から、この台詞。 アストはもちろん断れるわけもなかった。 「いやっ、ダメとは言わないけど……」 「じゃあ、いいよね?」 さらにアストの背中にくっつくユリ。 (そんなにくっつかれたらっ、胸が当たってるから!) ふにゅん、とした感触がアストの背中に走り、彼の理性に亀裂が生じる。 「……私だって……!」 それに続くのは、エリス。 彼女はアストの右手側に取りつく。 「んなっ、エリスまでぇっ!?」 カトリアとユリならまだしも、なぜエリスまで抱き付いて来るのか分からずに焦る。 見れば、美少女三人に囲まれるアストだ。 「ったく、何やってんだか……」 そんなアストの焦りようを見て呆れるのはツバキ。 「ん?セルジュくん、いいのか?」 なぜかツバキとアストを見比べながらニヤニヤと笑うのはニーリン。 「放っておいたら、アルナイルくんが取られてしまうぞ?」 「いいんだよ、もう」 ニーリンが何を言いたいかは、ツバキも分かっていた。 「ユリは本当にアストが好きなんだ。そのユリの邪魔するみたいなことは出来ないよ」 そう言ったツバキの表情は穏やかだった。 未知の樹海で、アストから強くて優しい言葉を与えてもらい、勇気をもらったツバキ。 荒んだ心だった彼、いや、彼女にとっては、その言葉だけで数えきれないほど感謝していた。 「アヤセくんのために躍起になることは、私も否定しないよ。しかしなぁ、君だって一人の人間だ……」 ニーリンはツバキを掴むと、そのまま羨ましい状態のアストに近付いた。 「ちょっ、ニーリンさん?何を……」 ツバキはニーリンに引っ張られながら足をもたつかせる。 「人並みに幸せを求めても、いいと思うぞ」 ニーリンは自分の正面にツバキを持ってくると、そのままアストの左手にくっついた。 「わっ……」 ツバキは身体からアストの左腕にくっつかれる。 「ツッ、ツバキにニーリンも!?」 「いやぁ、なんだ、ここは私も乗るべきかなと思っただけさ」 「乗らなくていいからっ!」 美少女五人に包まれて、アストは慌てることも忘れて諦めていた。 それを遠目から見やる、ライラ、ルピナス、シオン、マガレット、セージ。 「わーっ、アストさんったらハーレムですねーっ」 「アスト……ヘタレ」 「アストくん、モテモテですねぇ」 「どうしてあんなに好かれているんでしょう?」 「天然バカだからニャ」 五者五様の感想を述べる。 そしてアストの周り。 正面にカトリア、右にエリス、背中にユリ、左にツバキとニーリン。 「アストくぅんっ……!」 「……アストさん」 「アストくん!」 「ア、アスト……」 「ふふっ、アルナイルくん?」 アストはもはや、何も言わなくなった。 もうどうにでもなってしまえと言いたげにだ。
一通り落ち着いてから、話は再びシャガルマガラのことに戻る。 大僧正は事を始める。 「彼の地、禁足地に再びシャガルマガラが現れるだろう時期まで、あと一ヶ月ほどだ。それまでに、シャガルマガラを討伐出来るだけの準備を整えなくてはならない。分かるね?」 ミナーヴァ全員は息を呑む。 そう、カトリアだけの問題ではない。 この世界全てに繋がるのだ。 この場はカトリアが全てを代表して答える。 もういつもの、真面目で優しい団長としての風格を取り戻している。 「はい。こちらも、可能な限りの手を尽くします」 「頼むよ、ミナーヴァ。世界の命運は君達の手に掛かっているんだ。かつてのシャガルマガラが奏でた、輪廻の唄……ここで終止符を打とう」 ミナーヴァ全員は、その言葉に頷いた。 決戦まで、後一ヶ月……。 |