- 日時: 2014/06/04 19:56
- 名前: 布都御霊剣 ◆Mp0wNgpgF6 (ID: C/iCfur2)
モンスターハンター「焔の詩」13話 「行きましょう。異論は無いですね?」 そう、アンバーが言ったのだ。 その顔は、傍で見てても解る程の憎悪を宿していた。 口にこそ出さなかったが、ジェノスはその事を危惧していた。 (恐らく――独りで狩りに行くだろう。あの時、全てを失ったと言っていた・・・・・・どうやら俺は――第一線から退く前に、やらなければならないことが、残っていたようだ) 「では、決まりですね〜」 「待った、少し――下準備の時間をもらえないか? 夕暮れまででいい」 「ん〜それはまたギリギリな話・・・・・・一応大丈夫だけどね・・・・・・」 何はともあれ、準備の時間は取れた。
(この武具を取り出すのは・・・・・・久しぶりだな) ジェノスは思い出に浸りながら、ジンオウUと、獄弩リュウゼツ をボックスから取り出した。 それを身に着けようとしたときだった。 ドアが開き、楼華が、入ってきた。 「――お邪魔・・・・・・したようで」 「ああ、気にすることは無い。それと・・・・・・防具は相変わらずのようだな」 防具は始めてあった時と変わらず、ユクモノ1式だった。 いつも通りのそのユクモノ1式に、背負った太刀は 鬼哭斬破刀・真打だ。 「・・・・・・某は、アンバー殿が気がかりなのだが・・・・・・ジェノス殿は気にならないのでありましょうか?」 一呼吸の間をおいて、ジェノスが答える。 「・・・・・・気にならない訳ではない。だが、奴を止める権利は誰にも無い。それに――言った所で止まる訳も無い。だから、この狩りで教えなければな・・・・・・たとえ仇を討ったとしても、何も残らない事を――喪われた者はもう還ってこないことを・・・・・・それが終われば、俺のこのパーティーリーダーとしての役目は終わりだ」 「そうであったか・・・・・・」 その言葉が、まるで死に行く者の覚悟に触れたような気がした楼華は、それ以上は言わなかった。 「・・・・・・そんな事を聞く為に、ここに来た訳ではあるまい。何か話があってきたんだろう?」 やはりジェノス殿には敵わない、そう思いながら告げる。 「・・・・・・某の一族は、己が認めた者に忠誠を誓い、常に主の傍らにあることを、盟約として結んできた・・・・・・」 そこまで言った所で、ジェノスが言葉を遮った。 「・・・・・・まさか、俺と盟約を結ぶつもりじゃないだろうな?」 「それは当たり前だ・・・・・・某はジェノス殿を我が君主として、ここに盟約を誓う――我が御名、春雨の名において・・・・・・」 「誓おう。こんな俺で良ければ・・・・・・な」 そう言って、ジェノスは楼華に、「鍵」を渡した。 持ち手には2種類の、輝きの違う、翠の輝石で装飾され、差し込む部分には何かの意味を表す幾何学的な文様が刻み込まれていた。 「これはかつての文明を紐解く鍵だと、伝えられてきた・・・・・・楼華――いや春雨だったか。持っていろ。所詮俺には、無用の長物だ」 そう、言われるままに春雨は、その鍵を受け取った。
(フロウ・・・・・・僕は、ついにあのクシャルを狩る事になったよ) 右手首に巻き付けてある金の縁の中に琥珀が埋め込まれてあるペンダントを陽に翳しながらそう心の中で呟く。 突然、足音がしたのでそのペンダントを隠した。 「・・・・・・何してたの?」 その声が聞こえ、振り向いて見るとそこには、アズルライトがいた。 しかも、見られていたようだ。 「・・・・・何って、それは――」 何と説明したら伝わるのか、言葉を探っているとき、ふと右手から琥珀のペンダントが零れ落ちた。 「アンバー、それは・・・・・・?」 そういって、そのペンダントを指差した。 正直、硫黄かどうか迷ったが、「誰にも言わない」と言う条件を出して、話すことにした。 「これは・・・・・・もともとはフロウと言う名前のハンターの物で・・・・・・もう4、5年前の事になるか・・・・・・僕がハンターになるキッカケを与えてくれた――僕にとって大事な人の物なんです」 少し照れ臭そうなアンバーに反比例して、話しを聞いてるアズルライトはすこし何かつまらなそうな感じだった。 「・・・・・・そんなに言うならそのフロウって人と組めばよかったんじゃないの?」 その言葉で、アンバーの表情は少し陰りを見せた。しかし、アズルライトはそんな事には気付かない。 「・・・・・・もう、この世には居ないんです。そして、フロウを殺したのが――クシャルダオラ」 そこまで聞いて、流石に悪い気がした。 「ゴメン。嫌なこと思い出させちゃったかな・・・・・・」 アズルライトも、大事な者を失う辛さは、人一倍理解していた。 彼女もまた、大事な者を喪って、憎悪を糧に、独りでハンターを続けていたからだ。 だがそれも、ジェノスと巡り合ったことで、すこしづつ変わっていったことも。 「僕はクシャルダオラを殺し、フロウを本当の意味で弔うつもりです。なので、この狩りが終わったら、ハンターを辞めて、人気の無い、静かな所でまた、やり直そうと思ってるんです。フロウの事を、弔いながら・・・・・・」 そう言ったアンバーの眼は、どこか遠くを見ているような感じだった。 その話は、アズルライトにとっては少し――本人も何とも言えない、不思議な感情を抱いていた。
約束の夕方となり、ギルドに全員揃っていた。 「・・・・・・行くぞ。準備はいいな?」 いつも通り、ジェノスの指揮で、全員がいい感じに緊張が走った。 荷車に揺られながら、目的地、氷海を目指していた。
今回は結構時間あったのでいつもより長くなりました。
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