- 日時: 2014/06/04 20:12
- 名前: ペイルカイザー ◆XXm9HVMu9w (ID: WQQbrIP/)
M.H. 滅龍少女〜ドラゴン×スレイヤー〜
Episode 1 龍の力を持つ少女
私の名前は、エミル。 お世話になった教会のシスターから、そう呼ばれていたから、きっとそれが私の名前なんだろう。 私は今、山から降りた街、『メイビス』で、モンスターハンターとして暮らしている。 モンスターハンターという職業は、私に向いていた。昔から山を走り回って何かを採ったり捕まえたりするのは得意だったから、モンスターとの戦いに慣れたらもう馴染んでいた。 私はまだまだ未熟な新米ハンターだから、得られる報酬も少ないけど、それでも少しずつお金を貯めている。全ては、あの教会の恩返しをするためだ。 シスターは「恩返しなんか考えなくてもいいから、精一杯生きなさい」とは言っていたけど、そうはいかない。感謝することを教えてくれたのはシスターだ。それを忘れるなんて私には出来ない。 その感謝をするために、私は鎧を身に付けて、弓を担ぐ。 鳥幣弓Uと、クックシリーズ。私を守る力。 それらを手にして、今日も私は誰かの役に立ち、恩返しへの道を一歩進めるのだ。 依頼を受けるときは、このメイビスの街の酒場に行く必要がある。昼間から飲んで騒いでいる大人はたくさんいるけど、そんなことは気にしない。いつもの風景だから、私はそれをスルーして、受付のお姉さんの所へ向かう。 「はぁい、エミルちゃん。おはよう」 「おはようございます」 受付のお姉さんが挨拶をしてくるから、私もそれに応える。挨拶がいかに大事なのかも、シスターから教えてもらってきた。 「エミル、今日は何を受けるんニャ?」 私の隣で話すのは、赤い毛並みのオトモアイルー、ルージュだ。イャンクックに襲われていた所を、私が助けて以来、オトモアイルーとして恩を返すと言って、私の狩りを手伝ってくれる。恩返しなんていいとか言っても、アイルーの誇りだのとか言って聞かない。何だか、シスターに対する私と似ている気がする。 「そうだね。今日はどうしよっかな……」 私はルージュを一瞥すると、広げられた依頼状を見下ろす。 最近になって、氷海と言う狩り場に出掛けれるようになってきた。まだポポノタンの納品ぐらいしかやっておらず、大型モンスターの狩猟は、氷海ではやったことがない。だから、今日はそれを受けようと思っていた。 とは言っても、比較的危険度が低い大型モンスターを選ぶつもり。まだ氷海に慣れていない面もあるから。 白兎獣ウルクススの狩猟の依頼状に目がついた。ウルクススなら、比較的危険度が低い。 今日はこれを受けよう。 「「これをお願いします(するぞ)!」」 ふと気付けば、私の隣にもハンターがいた。と言っても、私とそう変わらない女の子だ。 その彼女と声が重なった。 互いに振り向く。 「なんだ?お前も受けるつもりだったのか?」 女の子は、男の子みたいなしゃべり方で私に話し掛けてくる。 「あ、うん。ゆ、譲ろっか?」 私は遠慮がちに依頼状を譲る。 だけど、女の子も首を横に振った。 「いや、アタシは横取りなんて卑怯なことはしないぞ。お前が受けてくれ」 「え、でも……」 「アタシは別のやつ選ぶから……」 押し問答が続くこと数分が過ぎたのだろうか、受付のお姉さんがパンパンと手を鳴らす。 「はいはい。譲り合うくらいなら、一緒に行けばいいじゃない」 そうだった。別にルージュとだけで行かなくてもいいし、四人までなら組んでもいいことになっている。 私は少しだけ考えてから、女の子に交渉してみる。 「その、良かったら一緒に受ける?」 「む?いいのか?」 「うん。一人よりずっと楽だと思うよ」 「おーし、分かった。受けようじゃないか」 女の子も納得してくれたみたいなので、私はハンター二人、オトモアイルー二匹で手続きをした。女の子の方も、オトモアイルー連れているからだ。 さっそく、私は女の子に名乗った。 「私はエミル。こっちのオトモアイルーが、ルージュ。よろしくね」 それを聞いて女の子は頷くと、彼女も名乗ってくれる。 「アタシは……セツ。こいつは、ブルだ」 女の子、セツは何故か名前を言うのに戸惑ったように見えたのは私の気のせいかな?ブルと言うのは、彼女の隣にいる青いオトモアイルーのことだ。 「……よろしく頼むニャ」 ブルも、私とルージュに会釈する。 さて、自己紹介も終えたことだし、狩りの準備をしよう。 目的地は氷海だから、寒い。ホットドリンクがいる。 この時私は知らなかった。 この狩りに出ることで、自分の運命が変わってしまうことに……。
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