- 日時: 2014/06/17 14:14
- 名前: バサルモス愛好家 ◆voVSYnC5d6 (ID: 665z3wAO)
暇なので短編書いてみます。
短編小説「Insania warz 〜ケチャワチャに支配された世界〜」
ーーーー 第一話『ibera restinguitur』
――――時は368年、冬季。水分を多く含んだ真っ白な雪が降り積もる。 綺麗だ。
この雪が真っ赤な血で染まると聞いたら、貴方はそれを信じるだろうか? 悲鳴が聞こえ続けるこの世界では、それは当たり前……なのかもしれないが…。
「よう、レルラス。どうだ、この辺の様子は?」
こいつは友人のローリア。ハンターだ。HRは781。 そして、今呼ばれた通り、俺の名前はレルラス。 同じくハンターをしている。HR998。 まあ、地獄と化した現在では、HRなんか関係無いし、ハンターになんかならなきゃ良かったと後悔しているが。
「あまり居ない。大丈夫だろう。」 「そうか。それにしても、冬は寒いなぁ。 英雄さんや、なんとかしてくれよ…。」
英雄か。懐かしい。 二年ほど前には、英雄だの腕利きのハンターだの騒がれたが、奴等に対しては完全に無力だけどな。
「知るかよ、いつ死ぬか分からないのに、お前は呑気だな。」
俺はそういって笑った。正確には笑いたかった。 いっそ全部笑い飛ばしてしまいたい。 ―――――が、それは出来なかった。せいぜい出来る事は恐怖に怯えるくらいか。
「呑気……か。笑ってなきゃ生きていけないよ。 突然変異が現れてからは……。」
―――――突然変異。
これは今から一年ほど前の話だ。 ある日、バルバレの砂漠から、砂まみれになりながらも、こちらに向かう 巨大なケチャワチャが発見された。独特の皮はダレン・モーランの様な鱗に変わっていたという。 大きさはアカムトルム程で、ギルドはそのケチャワチャを『ケチャワチャ変異種』と名付けた。
すぐにギルドナイトを含めた討伐隊が組まれ、ケチャワチャを討伐しに向かったが、 その甲殻は異常な程固く、手も足も出なかったらしい。
それからギルドは、全ハンターにケチャワチャ変異種の討伐依頼を出す。 勿論俺やローリアにも討伐依頼が出され、変異種の討伐に向かおうとしていた。 ――――が、時はもう既に遅かった。
ケチャワチャが、あちこちで大量に発見されていたのだ。 大量といっても、異常な程の数だった。おおよそ200匹ほどだろうか。
一匹は森で、はたまたもう一匹は氷海で。 それぞれの変異種は、その地形に異常に対応していた。
森に潜む変異種、通称『森型』は、カメレオンの様に擬態する能力と、ナルガクルガの様な 素早さ、そして翼を手にいれていた。
氷海に潜む変異種、通称『凍型』は、寒さをものともしない白い剛毛と、海を自由に泳ぐヒレで 暴れまわっていたという。
ケチャワチャ変異種を倒す事になっていた俺とローリアだったが、 森型が発見され、俺達はギルドの指示により森型の討伐に向かうことになった。 森型の強さは異常だった。―――が、ラージャンの三倍くらいの強さだった。
故に、バルバレで発見された変異種よりは強くないという事だ。 因みに、変異種により、バルバレは壊滅した。今頃ケチャワチャの巣になっているだろう。
もはやギルドはお手上げだった。 それから、ギルドメンバーとハンター以外はシナト村の禁足地に避難した。 ある者は泣き、苦しみ、暴れまわり、他の者に必死で止められた。 そしてある者は神に祈り、ある者は家族の死を嘆き、ある者は自分から死を選び……。
絶望と嘆きしか見えない禁足地には、大規模なキャンプが設置され、その上にテントが設置された。
驚くべき点は、これ等は全て、1日の中で発生したという事だ。 二日目には数多くの町村が潰れ、多くの人々が死んでいった。
それから約一年経過し、今に至るわけだ。 ハンターは各地にバラバラに集い、各地を見回る。 なにか現れたら討伐し、ケチャワチャを出きる限り倒し続ける。
こんなの死ねと言われているのと同じだ。 ―――が、それ以外に生きる理由は見当たらなかった。
今、生きる理由は何だろうか。 苦しむために生きているのだろうか? 何だろう。何だろう、『生きる理由』って…。
第一話 終
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