- 日時: 2014/06/20 12:12
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 1KemlCbq)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
七十九章 流れ星ひとつ
俺は直感的に感じた。 この地盤が崩れることを。 カトリアさんには悪いけど、俺は彼女を無理矢理引き剥がし、前に突き飛ばした。 「きゃっ……!?」 カトリアさんは小さく悲鳴を上げて尻餅をついた。 それと同時だった。 俺とシャガルマガラがいる地盤周りが砕けた。 そりゃそうだよな。あんだけ大きな爆発の後だし、地盤の一つくらい崩れるよなぁ。 でも、まぁ……カトリアさんまで一緒に落ちなくて良かった。 愛しい人を守れるほど、誇りに思うことはない。 俺とシャガルマガラは、空中へ放り出された。 カトリアさんの、呆然とした顔が見えた。 それもすぐに見えなくなり、俺とシャガルマガラは墜落への空の旅に出た。 さすがに、ここから地面に落ちたら死ぬよな。 俺はそんなことを無駄に冷静に考えていた。 死ぬ。 あぁ、そうか。 俺、死ぬのか。 ごめんな、セージ。 結局俺は、自分の命を粗末にしちまったよ。 カトリアさんを守るためだとか言ったって、自分が死んでちゃ意味ないよな。 ツバキじゃあるまいし、その彼女にも死ぬってどういうことか教えたんだったな。 死ぬってことは、大切な人を悲しませること。例えそれが、その大切な人を守るために死んだとしても、大切な人はそんなこと望んでないよな。 目上だからとか、団長だからだとか、俺はカトリアさんの手駒になった覚えはないし、ましてやカトリアさんだってそんなこと望んじゃないし。 俺はただ、カトリアさんが好きなだけ。 好きな女性(ひと)を守るのは男の役目……いや、何よりの願望だしな。カッコいいところ見せたがり?どっちでもいいだろ。 ……と言ってもまぁ、自分が死ぬってことは、大切な人を悲しませる。 身体は守れても、心は守れてないよな。 そんなの、守るって言えないよな。 色んな意味で、セージの言いたかったことが分かった気がするよ。 もう、今更だけど……。 地表が近くなるに連れて、シャガルマガラが先に俺より落ちていく。 俺の何百倍は重いんだし、当然か。 どっちにしろ、あいつは俺がとどめを刺したから、俺より速かろうと遅かろうと変わんないだろうけど。 「だから無茶したらダメだって言ったじゃない!!」 遥か上から、カトリアさんの泣き叫ぶ声が聞こえてくる。 やめてくださいよ。 そんなに泣いたら、可愛らしい顔が台無しですよ、カトリアさん。 ……って言うか俺、カトリアさんに面と向かって告白してないじゃないか。 バカだろ。 ユリに対してカトリアさんが好きだって言っても仕方ないだろうが。 後悔ばかりが俺の心を責め続ける。 あぁ……やっぱり、告白したかったな。 いや、告白とかそんなことじゃない。 俺はただ、カトリアさんの側にいたい。カトリアさんが側にいてほしい。 ただ、カトリアさんに笑ってほしいだけなんだ。 「私の大切な人をどれだけ奪えばっ、気が済むのぉ!!」 泣かないで、カトリアさん。 そんなに泣いたら、俺が守った意味ないじゃないですか。 違うだろ。 カトリアさんが泣いているのは、俺のせいだ。 俺が我が身を省みないことをしたから、カトリアさんは泣いているんだ。 でも、どうしたらいいんだ? 俺はもう助からないんだ。 こんな所から落ちて、助かるわけないじゃないか。 奇跡でも起きなきゃ、助かるわけ……、 キセキデモオキナキャ? 違う! 奇跡は、起こらないことだから奇跡なんだ。 だから俺は奇跡なんて信じない。 俺は、自分の力で、愛する人のために生きる! もう地面が近い。 頭から落ちようとしてる俺は必死に身体の向きを変えようと身体を動かす。 頭から落ちたら確実にゲームオーバーだ。 どうにかしていく内に、背中が地面に向けられる。 いいぞ、このまま足から落ちるんだ。それなら下半身の骨がが木っ端微塵に砕けるかそれくらいで済むはずだ。 でも、もう間に合わない。 一足先に、シャガルマガラが地面に激突した。 俺もすぐに落ちてしまう。 いやまだだ。 俺は最後まで諦めるもんか。 少しでも、生きるために……! 俺は背中から激突した。 正確には地面にではなく、シャガルマガラの翼に。 全身に電撃が走ったような感覚と共に、意識が薄れていく。 シャガルマガラの翼から滑り落ちるように地面に落ちた。 もう、何も感じられない。 「カ……トリ、ア……会い、た……いよ……」 俺の意識は闇に沈んだ。
「何を寝言を言ってるんだニャ、このバカ二号」
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