- 日時: 2014/04/25 17:46
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 71/Or0Sg)
モンスターハンター 〜輪廻の唄〜
四十章 いざ出航、その名はワルキューレ
ネルスキュラ狩猟を達成したアストとセージ、ニーリンが見たナグリ村の光景は、溢れんばかりの歓喜だった。 足止めをされていた商隊も無事に到着し、ルピナスは商隊からたてがみマグロを分けてもらっていた。 「いやぁ、助かった!さすがはカトリアのところのハンターよぉ」 村長はアストとセージ、ニーリンとカトリアを前に嬉々として喜ぶ。 「っても、火山の活性化にゃまだ季節が来てねぇから、もうしばらく待ってくれぃ。なぁに、火山が活性化してくりゃ、船の一つや二つくらいちょちょっと作ってやっからよぉ」 「お願いしますね、村長」 カトリアはその場を代表して頭を下げる。
それからナグリ村で過ごすこと三ヶ月少し。 ニーリンはミナーヴァの専属ハンターとして、カトリアと長期契約を結んでくれた。 彼女曰く「アルナイルくんの近くにいると面白そうだから」らしい。 面白そうという理由で専属の長期契約を了承するカトリアもカトリアだが、どんな形であれ仲間が増えるのは喜ばしいことだ。 マガレットの診療所と、ニーリンのハンター専用の馬車も作るに当たって、牽引するためのアプノトスももう一頭手懐け、海路は船、陸路は二頭のアプノトスになる。 『深緑の流星』たるニーリンがミナーヴァに所属することによって、彼女を名指しした依頼が舞い込んで来るようにもなった。それにアストも同伴することで、多少の危険は孕んでいたものの、彼女が相手にして来た雌火竜リオレイアの捕獲や、桃毛獣ババコンガの狩猟にも成功し、ミナーヴァは確実にその名を各地に響かせていた。 数ヵ月の末、ようやく火山の活性化が再開し、土竜族達は雄叫びとともに地底火山に殺到していき、瞬く間に紅蓮石や獄炎石、燃石炭や火薬岩などを採掘し、早速船の作りに取り掛かっている。
それから一週間後の夕暮れ時。 「よぉしっ、完成だぁっ!!」 ナグリ村の港には、白を貴重に赤色などで縁取られた、巨大な船が佇んでいた。 その全長は、ロックラックの方で使われる撃龍船とほぼ同等のサイズとなった、軍艦を除けばかなり大型の帆船だ。 「ふーっ。船の造りって、慣れれば簡単なモンね」 汗まみれの顔をタオルで拭きながら満足そうに息をつくライラ。 「操縦のやり方は、マニュアルの通りよね?」 ライラは土竜族の一人に聞いてみる。 「おうさ、竜人のアンタならすぐ分かるさ」 ライラ自身船の扱いは初めてだが、彼女的には「どうすれば動くさえ分かれば、あとはそのうちわかる」らしい。故に船の操舵はライラが任されており、彼女が休んでいる時はアストかニーリンが副操舵手として船の制御に当たることになっている。 「でかいな……」 アストはその船を見上げながら惚けたように呟いた。 「馬車九つ分が楽々収まるサイズですからねっ。そりゃーこんなに大きくもなりますよっ」 シオンはアストの隣で自慢げに胸を張っている。彼女が船の製造に直接携わったわけではないが、船に必要な素材や物資の一部などは彼女が取り寄せたのだ。胸を張ることを否定するつもりはない。 「シオンちゃん、ちょっといいですか?」 胸を張っているシオンに話し掛けるのはマガレット。 「はいはいっ、何でしょうマガレットさんっ?」 「私が発注お願いした常備薬、届いてますか?」 「来てますよーっ。私の所にあるんで、確認おねがいしますねーっ」 そう言うと、シオンはマガレットと一緒に港を離れていく。 一人残されたアストは、とりあえずカトリアの姿を捜す。 次の目的地や、出航の予定などを聞いておくためだ。
カトリアはルピナスの食事場にいた。 何やら話し込んでいるらしく、アストはとりあえず遠巻きに聞いていた。 「牛乳が手に入らない?」 「はいぃ。特別困ることはないんですけどぉ……」 「そうですね……シナト村への航路の途中で、農村などに立ち寄ることが出来ればいいんですが……」 話の内容から、どうやら牛乳がないらしい。それと、次の目的地はシナト村と言うらしい。 「シナト村か……」 「シナト村……竜人の故郷と言われる、辺境の村だと聞いているニャ」 いつの間にか、セージがアストの隣にいた。 「セージ、知ってるのか?」 「聞いたことがあるだけニャ」 そう言うと、セージは二人の元へ向かう。 セージに気付くカトリアとルピナス。 「あらぁ、セージくん。飲みに来たんですかぁ?」 「ニャ、マタタビ酒を頼むニャ」 「はぁい、ちょっと待っててくださいねぇ」 マタタビ酒。どんなものかは想像できないが、まぁアイルーにとってのアルコールのようなものだろう。 「セージ。お酒もいいけど、出航は明日の明朝だから、飲み過ぎちゃダメだからね?」 「心得ているニャ」 なるほど、出航は明日の明朝。 後で確認のために時間があったらもう一度聞き直しておこう、と思いながらアストは自室に戻っていった。 翌朝の明朝。 各人の馬車が船に積まれていき、日が登りかける寸前には出航準備は完了した。 ミナーヴァのメンバー達も船の前に集まっている。 「さて、カトリア」 村長がカトリアに話し掛ける。 「最後に、この船の名前を決めてくれぃ」 「えっ?私が、決めるんですか?」 カトリアは「なぜ私が?」という驚きを村長に向ける。 「ミナーヴァの団長はお前さんだろぉ?団長が決めずに、誰が決めるってんだ」 「わ、分かりました……」 カトリアは全力で困ったような顔をしながら考える。 ミナーヴァのメンバー全員が、カトリアに向いている。 悩みに悩んだ末、カトリアは答えを出した。 「じゃあ、戦乙女を意味する、『ワルキューレ』で……」 それを聞いて村長は頷いた。 「おっしゃ。『イサナ級海洋機動艦 ワルキューレ』だな!」 というか、この船は戦艦のつもりで作られているらしい。 無事に船、いや、艦の名前も決まり、ミナーヴァのメンバー達は一斉にワルキューレに乗り込む。
アスト達ミナーヴァのメンバーは、甲板に立っていた。 見下ろせば、土竜族達が手を振って見送っている。 「カトリア、せっかく艦が出るのに、何の一言もなし?」 「ラ、ライラ?また私そういうの考えるの?」 「たりめーじゃん。ほら、早く早く」 ライラに急かされて、カトリアはまた悩む。 「……『イサナ級海洋機動艦 ワルキューレ』、出航っ!」 その掛け声と共に、ナグリ村の港に繋がれた錨が外され、蒸気機関がワルキューレを出航させる。ライラはさっさと操舵室へ向かう。
ミナーヴァの旅は、まだまだ続くーーーーー。
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