- 日時: 2014/06/30 11:39
- 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: As639foA)
クロスオーバー 翼の勇車×ダブルサクライザー
二十九章続き
「それにしても、奇妙なものだな」 ギザミに乗せてもらいながら、ニーリンは独り言のように呟いた。 「何が奇妙なんや、ニーネエ?」 その独り言を拾うのはゲネッポ。 ゲネッポの反応を見て、ニーリンはフッと笑う。 「ヒトの言葉を喋るモンスターと言うだけでも驚天動地モノだが、いつの間にか当たり前のように話していると言うことさ、ゲネッポくん。普通ならお伽噺にもならんことだしな」 そう、あまりにも当たり前すぎたと言えばそうだが、ヒトの言葉を喋るモンスターと言う存在は本の中の物語にも中々出てこないものだ。 そんな有り得ない状況を当たり前のように受け止めている自分を面白おかしく思っているだけである。 「んゃまぁ、ワイらもこれでの生活が当たり前みたいなモンやけど、ニーネエの気持ちは分からんでもないわぁ」 ゲネッポはうんうん、と頷く。 「いやはや、全く全く……」 ニーリンも参った、とでも言うように芝居のかかった仕草を見せる。 その一方のシオン。 「突然ですが質問ですっ!お二人は付き合ってるんですかっ?」 その唐突な質問は、ミズキとカスケに向けられていた。 シオンの爆弾発言投下により、ミズキは突然まさに爆発でもしたかのように頬を真っ赤にした。 「んなっ!?なっ、なななっ、何をいきなり言うのシオンちゃんっ!?」 あからさまに動揺するミズキ。 そんな動揺は答えを言っているのとおなじだ。 「おぉーっ、その様子だと脈ありですねっ?」 さらにシオンが煽る煽る。 「ぁぅ、だから、そのぉ……」 「そうじゃないよ、シオンちゃん」 このこそばゆい桃色の空気をぶった斬るのはカスケ。 「僕とミズキは大切な仲間ってだけだよ」 台無しである。 「」 「」 ミズキとシオンは互いに目を合わせると、盛大に溜め息をついた。 ギザミとゲネッポもしかり。 「これが若さか……」 何か修正された男のような言葉を吐くニーリン。ちなみにカスケの方が歳上だったりする。
船の中ではギザミに乗らなかったミナーヴァの残りのメンバーがちんまりと居座っている。 「なんか、疲れましたね……」 アストはぐったりと壁を背もたれにして座り込んでいる。 「ほんとにね。これまでに経験したことのないことばっかりで、頭が追い付かないね」 カトリアはベッドに腰掛けている。 ちなみに、アストとツバキが床で、女性陣はベッドの上だ。 「ユリ、身体は大丈夫か?」 ツバキは座り込みながらもユリの心配をしている。 「うん、どこも悪くないし、って言うか、楽しかったから普通に疲れちゃっただけだよ」 「そっか、ならいいんだ」 ツバキは静かに安堵するように息をついた。 「……、……ん……」 ふと、カトリアの隣に座っていたエリスが船を漕いでいたが、ついに耐えきれずに眠りに落ち、カトリアの膝に頭を落とした。 「あらぁ、エリスちゃんはお眠ですかぁ?」 ルピナスはその隣でカトリアの膝で眠るエリスを見て微笑む。 カトリアもそんなエリスの頭を見て小さく笑う。 「シオンちゃんほど元気は残ってないみたいね」 エリスのエコールの帽子を取ってやると、そっとその薄紫色の髪を撫でてやる。 「……ぅ、んむ……」 起きそうになる赤子のようにむずがるエリス。しかしその様子は少し嬉しそうだ。 そんな風に、静かな時間が流れていった。
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