- 日時: 2014/07/01 20:47
- 名前: 翼の勇車 (ID: RHJjSo1J)
翼の勇車が描く二つ目の作品『高校生モンスター』
第十一話〜「甲殻種の底力みせたるわ!」〜
まさか、こんな事になるなんて……。 …… ……… ………… 『シェンガオレンの撃退・足止め』 この日、ギルド全体でこのクエストが発布された。ギルドに所属しているハンター全員強制参加のクエストだ。勿論私、アカリもその対象だ。 『ドンドルマの付近にて、"砦蟹"シェンガオレンが確認された。予想進路上にはこの街があり、すぐさま討伐に向かいたい所ではあるが、現在古塔にて確認されたミラボレアス亜種の調査に上位ハンター及びギルドナイト全員が出払っており、直ぐにそちらへ向かう事ができない。よって、彼らが到着するまでの間、撃退とまでは言わないが足止めをしてもらいたい。諸君の武運を祈る。』 つまりはわざわざ倒さなくても、ある程度の時間を稼いでほしいという事だ。その程度なら自分達にもできるだろう。ほとんどのハンターがそう思い、多分に漏れず私もそう思った。でも、その判断は大きな間違いだった。
「そんな……」 私の目の前にあり得ない光景が広がっていた。地に横たわるハンター達。それを助けるために走り回るネコタク。そして、凄まじいスピードでドンドルマへ向け歩くシェンガオレン。 「畜生……剛種だなんて聞いてねえ……ぞ……ガハッ……」 ちかくに倒れている一人がそう言う。そう、あいつはただの砦蟹じゃない。シェンガオレン"剛種"、それは通常のシェンガオレンの三倍のスピードで走り、危険度はただそれだけではねあがる。あるいは、通常種ならば上位ハンター及びギルドナイトが来るまでの時間稼ぎも可能だったかもしれないが、剛種相手となると無理だ、少し足止めしたところであの足の速さではすぐにドンドルマへついてしまう。 「早く乗るにゃ!」 近くへ来たネコタクの引き手が私に怒鳴る。その時、私の中である希望が生まれた。ほんの、小さな小さな希望。でもこれにかけなきゃ、ドンドルマの街が、町のみんなが、優しいおじさんが犠牲になってしまう。そんなのは……絶対に嫌だ。 「にゃ!? お嬢ちゃんどこに行くにゃ!」 行かなきゃ、早く行かなきゃ。助けを呼びに。甘い考えかもしれない、私の思い違いかもしれない。でも行かないよりはずっとマシ。みんな好きなだけ笑えばいい、モンスターが仲間になるはずがない、と。でも私は"彼"を信じる。あの時から一度だって姿を見せてはくれなかったけど、私には分かる気がする。彼はずっと見守ってくれていた気がする。だから行かなきゃ、そう、ミラルーツの所へ。 |