Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ三代目!( No.67 )
  • 日時: 2014/08/20 11:50
  • 名前: デルタゼータ (ID: j8Ze967M)

モンスターハンター 覇を宿す者

プロローグ

そこは、一面の雪景色に囲まれていた。
山と山の間に、隠れるように作られたような集落で、余程のことがない限りモンスターが侵入することはない。
集落の名は、ポッケ村。
そのポッケ村の、ハンターズギルドの出向機関が配備されている集会所のテーブルには、一人の少女が思い悩んでいた。
「うーん、困った、どうしよう…」
短い金髪をくしゃくしゃと弄び、そのエメラルドのような碧眼をこれでもかと細めて悩んでいた。
その小さな身体に纏うは、桜色の華美なドレスのような鎧。
陸の女王と呼ばれる、雌火竜リオレイア…その亜種である、桜火竜リオレイア亜種の防具、リオハートシリーズだ。
防具の価値から、彼女の実力は中々のモノだと想像はつく。
そんな思い悩む彼女に声を掛ける青年がいた。

「レイ、なんでそんな悩んでんの?」

レイ、と青年に呼ばれて少女は反応して振り向く。
少女、レイが振り向いた先には漆黒が見えた。
正確には、その漆黒の防具を纏う青年ハンターだ。
髪は黒く、瞳も黒い。

「シルエ」

レイはその漆黒の防具を纏う青年を見て、彼の名、シルエを口にする。
有無を言わさず、シルエはレイの隣に座る。

「で、悩んでる原因はそれ?」

シルエはレイの目下にあるものを見る。
何やら、食べ物の名前が書かれている紙だ。

「今日の晩御飯は、カレーにするかシチューにするか迷ってたんだよ。シルエはどっちがいいと思う?」

レイの口調は年頃の少年を思わせるような、少し粗い言葉遣いだ。演じている分けではなく、これが彼女の普通だ。
そもそも、カレーかシチューにするかだけでここまで悩めるのも珍しいかも知れない。
そんなレイの話を聞いて、シルエは名案とばかり手を打った。

「両方混ぜちゃえば?それならカレーとシチュー、二つの味が楽しm」

「それじゃカレーにもシチューもならねぇぞッ!?」

なんでやねん、とレイは声を荒げた。
声を荒げるレイを見て、シルエは愉快そうに笑う。

「そんな全力で返してくれるなんて嬉しいね。軽くキレたレイも可愛いね」

「…、お前がこの村に来てから一ヶ月が経つけど、未だに何を考えてるか分からん…」

レイは溜め息をついて軽く目を伏せた。



一ヶ月前のこと。
当時は新米ハンターだったレイは、村人達に支えてもらいながらもハンターとして村を守っていた。
失敗の多いレイだったが、ひたむきさや努力する姿勢を見て村人達は彼女を罵ることなく、むしろ応援していた。
そんなある日に、シルエと名乗る旅の青年ハンターがポッケ村にやってきた。
見たことのない黒い防具に、他に見られない黒い武器を背負った、得体の知れないハンターだった。
海や砂漠を越えて旅をしていると本人は口にしているが、このポッケ村から離れずに居座っていた。
シルエ曰く「レイに一目惚れした」とのこと。
以来、レイとシルエと言うコンビで狩りに出るようになった。



「って言うか、シルエッ!とりあえず私をおちょくるな!可愛い可愛い言えば騙されると思っているのk」

憤るレイに、シルエはレイの頭と背中に手を回してそのまま自分の方へ抱き寄せた。

「よしよーし、いい子いい子」

あやすように声を和らげながら、シルエはレイの金髪を撫でる。

「……ッ!!〜〜〜ッ!!」

顔を真っ赤にしながらレイは暴れるが、シルエの方が力はずっと強いので離せない。
そんな二人の様子を見て、集会所の受付嬢達は好き勝手に囁いていた。

「仲良いですよね、あの二人」

「レイちゃんは可愛いし、シルエくんはカッコイイからお似合いだよね」

「嫌だ嫌だって言いながら、レイちゃんもシルエさんに心許してるものねぇ」

そんな微笑ましい時間が流れていった。
これからも、こんな毎日が続くのだと、そう信じていた。



レイとシルエ、光と影ーーーーー。