- 日時: 2014/08/07 09:58
 - 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: Rp9cGvpf)
 
  モンスターハンター 〜猛焔を抱きし翼〜
   序章 蒼き瞳に憎悪が揺らめく
   地図にも乗っていない、小さな村。  遠方の大きな街との関わりは少なく、村で生まれて一度も村の外をを出ないままに天寿を全うする者も珍しくない、そんな小さな村に一人の女の子が生まれた。  その名は、カトリア・イレーネ。母親似の赤茶けた髪と、蒼い瞳を持った女の子だ。    何事も起こることなく、カトリアは静かに健やかに育っていった。  笑顔の絶えない、幸せそうな女の子であり、毎日村の友達と遊んでは泥だらけで帰ってくる。  それを親にたしなめれながらも、結局泥だらけで汗まみれは変わらない。
   ある日のことだった。  今の時期は繁殖期。  多くの命が生まれてくるこの季節に、多くの命が失われた。 「リオレウスが出たぞぉ!!」  小型のモンスターでさえも興味を示さないこの村に、大型モンスターが現れたのだ。  警鐘が鳴り響き、村人は悲鳴を上げながら村の外へと逃げようとする。  しかし、それは無意味に等しかった。  繁殖期のリオレウスはひどく気が立つ。動くモノ全てを口から業火の塊を吐き出し、焼き尽くす。  村のあちらこちらに、断末魔と爆発が絡み合い、まさに地獄絵図だった。  カトリアも母親に手を引かれて逃げている最中だった。  だが、彼女にも例外なく業火は襲い掛かる。  母親はカトリアを庇い、そのリオレウスの業火に身を捧げた。  愛する母の身体は四散し、灰になっていった。  カトリアは、幼き瞳でその瞬間を直視した。  消えてしまったのだ。  嘘だ。  嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。  カトリアは目の前を受け入れることが出来ず、倒壊する瓦礫に埋もれていった。 
   気が付けば、ベッドの中にいた。  悪夢だったのかと寝惚けた頭で思っても、全身の擦り傷がそれを現実のモノだと言うことを嫌でも教えてくれる。  母は死んだのだ。  二度と、側にいてくれない。  ここは、ギルドの救護テントらしい。  帰る村も、帰りを待ってくれる人もいないカトリアは、孤児院へ送られた。  孤児院のシスターや、同じ孤児達も優しく接してくれた。  しかし、カトリアに笑顔はなかった。  その蒼い瞳に光はなく、暗いモノが蠢いていた。  モンスターが、憎い。  母を、村を、自分自身すらも奪った、モンスターが憎い。  そんな憎悪に囚われ、カトリアは孤児院を出て、モンスターハンターとなった。    モンスターハンターとしての生活は過酷だった。  食うも寝るも、全て自分で作らなくてはならない。  だが、カトリアにとってそれは問題ではなかった。  狩り場に出れば、自分の命を狙う者全てを敵と定め、破壊と、殲滅と、虐殺を尽くした。  カトリアの行いで生態系の一部が崩れ、ギルドはカトリアに警告を促した。  うるさい。  私の邪魔をしないで。  カトリアはその街を離れ、別の街で生活を始めた。  その街に腰を落ち着けても、カトリアのやることは変わらない。  そこのギルドも、やはりカトリアに警告を促す。  カトリアはまた街を出て、今度は海を越えて新たな街へ向かった。  そこでも、やはり警告だ。  そんなことを繰り返す内に、大陸と大陸の境目で囁かれる名前一つ。 『狂華(くるいばな)カトリア』  華のように可愛らしい容姿を持った少女。  しかし、その行いは狂っている。  故にこんな異名がついた。    毎日が苦しい。  それでもモンスターは殺さなくてはならない。  殺し続けなくてはならない。  こんなことをいつまで繰り返すのだろう?  モンスターがいる限り、永遠にか?  そんなことを思っている内に、カトリアはある三人組と出会った。
   カトリア・イレーネの語られなかった過去が、今明らかにーーーーー  |