Re: 小説を書きたいひとはここへ!( No.314 )
  • 日時: 2013/12/25 14:00
  • 名前: 片手拳 ◆EBwplS/Cbs (ID: 6ognQQkK)

〜第五話「陸の女王と空の王・後編」〜

リオレウスは飛竜刀【紅葉】を構える俺に狙いを定め、毒を含んだ鋭い爪で蹴りを入れようとした。右に跳んで蹴りを躱した俺は飛竜刀【紅葉】を振り上げると、リオレウスの翼に斬りつけた。
リオレウスの右翼膜が裂け、バランスを崩して墜落した。
俺は斬り込もうとしたが、すぐにリオレウスは体勢を立て直した。

このリオレウスはもう飛び立って逃げることはできないだろう。
だがリオレウスにはもう後がない、命を落とす覚悟で攻撃してくるだろう。
危険な状況には変わりない。

俺は飛竜刀【紅葉】を持ち替え、刃の部分を握った。
リオレウスは卵が潰れるのも構わず突進を繰り出した。
(この勝負、貰った!)
俺は飛竜刀【紅葉】の柄の根元を地面につけ、棒高跳びの要領で飛び上がる。
これは最近開発された武器「操虫棍」の使い手から盗んだ技だ。
飛び上がった俺の真下をリオレウスが通過する。
俺は飛竜刀【紅葉】を一八〇度回転させ、リオレウスの背中に突き刺した。
狙い通り、リオレウスは心臓を貫かれ、最期に小さな悲鳴を上げながら倒れた。
リオレウスが絶命したのを確認し、飛竜刀【紅葉】を死体から抜いて鞘に納める。

リオレウスの甲殻の継ぎ目を探し、まとまった量を剥ぎ取るのはなかなか難しい。
ハンターになって六年、狩りにはずいぶん慣れてきたが、この作業だけはどうにも苦手である。
しかも今は装備不足でリオレイアに挑んだナナミが心配でしょうがない。集中できない。
結局、剥ぎ取れたのは腹側の白っぽい甲殻が一枚と首元の鱗が二枚だけで、背中の堅い甲殻は剥ぎ取れなかった。

ナナミが投げつけたペイントボールの効果は切れてしまったようだ。俺はアイテムポーチから千里眼の薬を取り出すと、一息に飲み干した。
リオレイアは隣のエリアで倒れている。が、ナナミの姿は見えない。
その時、上空の古龍観測船からサインが送られてきた。
どうやら、ナナミが救助信号を送ったらしい。場所は隣のエリアだ。
(さっきは居なかったのに、おかしいなあ……。)
とりあえず俺はナナミを助けに向かう事にした。

隣のエリアに着くと、ナナミはリオレイアの死体の下敷きになっていた。
アイルー救助部隊は既に到着していたが、リオレイアの死体が邪魔でどうにもならなかったらしい。

ナナミは既に失神しており、自力で這い出すことは出来ない。
死体を持ち上げ、アイルー達がその間に引きずり出すのが現実的だろう。
俺が無理矢理持ち上げるしかない。勿論そんなバカな事はやった事がない。
「危険ですニャ。一歩間違えたらみんニャ揃ってペッチャンコですニャ。」
アイルーの一匹が止める。確かにそれも間違いではない。だが……
「もたもたしてるとコイツ死ぬぞ!取りあえず離れろ〜!」
俺はリオレイアの脚に手を掛けると、全身に力を込め死体を持ち上げた。
飛竜の身体は空を飛ぶために所々に軽量化がなされているとはいえ、リオレイア程の大きさになると大剣より重い。
そのため並のハンターにはリオレイアを持ち上げて投げ飛ばすと言った芸当は出来ない。G級ハンターには片手でそれをやってのけた化け物もいると聞くが。
「ん、んぐぐぐっ……」
俺が持ちこたえている間にアイルー達がナナミを下から引きずり出す。

アイルー達がナナミをネコタクに乗せたのとほぼ同時に、俺は力を使い果たし、崩れ落ちた。
「……ネコタクの定員は一名ですニャ。応援呼んでくるニャ。」
ネコタクはナナミを乗せて去って行った。

勿論、アイルーの言葉は嘘ではなかったようで、数分後、もう一台のネコタクがやって来た。
ネコタクに乗るのは久しぶりだ。たまにはこういうのも悪くない……。

〜第六話につづく〜