Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.850 )
  • 日時: 2014/04/06 11:08
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: yBBn6PQX)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 十七章 大切な帰る場所

 アストがイャンクックの耳を回収したことで、未知の樹海においてイャンクックが出没すると認められ、調査の一環として、未知の樹海を狩り場とするギルドクエストという調査依頼を受けられるようになった。
 調査といっても、ハンターのやることはその調査対象のモンスターを狩ることだ。その間に調査隊が習性などを記録するため、ハンターは狩ることだけに集中出来るのだ。
 先日、アストは未知の樹海の調査から帰還した後に、リベンジという名目でイャンクック狩猟のギルドクエストを志願した。
 今回は通常の依頼と同じだけの制限時間ではあるが、前回と違って途中でモンスターが逃げることはない。
 入念な準備と、セージと共にじっくりと戦った結果、見事イャンクックの狩猟に成功した。
 その上、このリベンジとは別にもう一頭イャンクックを狩ったのだが、アストはある目論見があっての行動だった。

 日が登ってきて間もない朝方。
「ライラさん、いいですかぁ!」
「はいよっ、出ますよっと!」
 いつものように、ラフな作業着で現れるライラ。正直に言うと、アストからすれば色々と目のやり場に困ったりする。
「ほいほいっ、今日は何かな……って何よそのパンっパンの袋?」
 ライラはアストの手にあるその大きな麻袋を見て目を見開く。
 アストは胸を張って答える。
「あ、これ全部クックシリーズの素材ですよ」
 そう、連日イャンクックを狩っていたのはこのためだ。
 さすがにそろそろハンターシリーズで戦うのは辛くなってくる。
 ここは一つ、新しい防具に鞍替えするのだ。
「クックシリーズかぁ。どれどれ……」
 ライラはその袋を開けてみる。
 怪鳥素材だけでなく、竜骨【小】、【中】、ランポスの皮など、他のモンスターの素材まである。
 それら全てをチェックするライラ。
「おっし、素材は問題なーし。防具一式ねぇ、久々に歯応えのある仕事じゃないの」
 ライラば拳と掌をバシッとぶつける。
「お願いします」
 アストは丁寧に頭を下げる。
「任せな。防具一式となると、ちょーっと時間いるからね。一晩はちと難しいね」
「そんな急がなくても、ライラさんのペースでいいですよ」
 ただでさえライラは毎日寝不足なのだ。仕事の度に徹夜を繰り返してはいつか過労で倒れてしまう。
「一晩で仕上げるのが、アタシのペースなのよ。そんじゃ、素材は確かに預かったから、キッチリ仕上げてやんよ」
 ライラはそう言うと、素材の詰まった麻袋を持って工房の奥へ入っていく。
 アストはそれを黙って見送ると、工房を後にした。

 連日イャンクックの狩猟を行っていたので、今日は束の間の休日にすることにしたアスト。
 自室で武具の整備を行ったり、調合をしたりするが、それもすぐに終わってしまった。
 カトリアと話でもしようかと、アストは自室を出る。
「あ、アストくん。丁度良いときに出て来たね」
 自室を出た目の前に、カトリアがいた。
「ちょっと必要な話があるけど、時間いい?」
 なんと都合のいい展開。たった今暇だったからカトリアと話でもしようかと思っていたばかりだ。
「いいですよ。俺も暇だったんで」
「じゃあ、お茶でもしながら話そっか」

 ルピナスが昼食を作っている側、テーブルの上でアストとカトリアは向き合っていた。
 テーブルの上には珈琲が二つ、香りの良い湯気を立てながらそこで佇む。
「もう他の皆には前々から話してて、アストくんにだけ話してなかったから、先に言わないといけないの」
 とは言え、カトリアの表情はそれほど深刻なものではないようだ。アストは楽な気持ちで聞いている。
「私はね、この世界をもっと見たいの。それこそ、砂の向こうでも、海の向こうでもね。私のわがままみたいに聞こえるけど、他の皆も同じ気持ちでいるの。「世界を見てみたい」って。そこで、アストくん」
 ふと、カトリアは真剣に向き直る。
「アストくんは、ミナーヴァを抜けてバルバレに残る?それとも、私達と一緒に来てくれる?」
 質問は、実にシンプルなことだった。
 アストは即答した。
「そんなの、ここでミナーヴァを抜けたら、俺は今日からどこで寝ればいいんですか。それに……」
 アストはライラの工房を見やる。
「もうライラさんに新しい防具注文してるし……」
 次に見やるは、シオンの営業所。
「シオンのお得意様カードのポイントだって貯まってきてるし……」
 次はエリス。
「エリスがいないと、依頼を受けたいときにすぐに受けれませんし……」
 次にルピナスの姿。
「ルピナスさんのご飯だって美味しいし……」
 そして、カトリアに向き直る。
「と言うわけで、俺はミナーヴァのハンターとしてあり続けます。これからもよろしくお願いします、カトリアさん」
 アストのその返答を聞いて、カトリアはにっこり笑った。
「うんっ。これからもよろしくね、アストくん」
「っ!?」
 不意にアストはカトリアから目を逸らした。
「どうしたの?アストくん」
「いや、その……」
 アストのその頬は赤くなっていた。
(やばい……カトリアさんがすごい可愛く見える……)
「あなたの笑顔があんまり眩しくて思わず目を逸らした」などは言えない。
 慌てて話を変えようと、アストは声を上げる。
「そっ、そういえばっ!どこにいくんですかっ?」
 あからさまに慌てているが、カトリアはそれを追求せずに答える。
「ナグリ村って所で船を作ろうと思うの」
 カトリアはそのナグリ村についての説明を始める。
「ナグリ村は、このバルバレから比較的近い場所の地底にある、土竜族の集落なの。そこの、地底火山から採れる豊富な鉱山資源を使ってものを作って生活してて、船とかを作ってもらうため立ち寄るキャラバンも少なくないんだって」
 土竜族と言うのは、地底などを中心に集落を作り、竜人とはまた別の技術を持って人間と共存を図っている種族だ。
 アストも少なからずそういった他種族のことは知っていた。
「じゃあ当面の目的は、そのナグリ村って村に行くんですね」
「うん。アストくんの話と合わせて、ライラがアストくんの防具を作り終えてから、ライラの都合聞いてから予定を決めていこうと思うの」
「了解です」
 後はライラがいつクックシリーズを作るかにかかっている。
 そうこうしている内に、ルピナスが皿を持ってくる。
「はぁい、お待たせしましたぁ。今日はぁ、お野菜たぁっぷりのうどんですよぉ」
 それに伴い、他のミナーヴァのメンバーも集まってくる。
「お腹も空いたし、この辺にしよっか」
「そうですね。俺もすっかり腹減りましたし」
 アストは席を立って、ルピナスの手伝いに向かった。