Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.910 )
  • 日時: 2014/04/09 11:12
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: EzPWHUtd)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 二十章 槌音の中の惨状 〜ナグリ村編〜

 ナグリ村に到着したミナーヴァ一行。
 だが、村の様子を一目見てカトリアは思わず馬車を降りた。
「カトリアさん?」
 突如馬車を降りたカトリアを見て、アストも馬車を降りる。
 ちょうど村の外れ辺りで、カトリアとアストは村の様子を見下ろしていた。
「こ、これは……?」
 アストは絶句した。
 カトリアの話では、ナグリ村は活気と熱気溢れる土竜族の集落だと聞いていたが、今この様子を見る限りそうとは思えない。
 活気どころか、むしろ緊迫した空気を思わせている。
 多くの土竜人が怪我をしているのか、地べたに座り込んで治療を受けていた。
 これではまるで野戦病院だ。
 アストとカトリアは馬車の前を走って、村の中へ向かった。
「ちくしょう、痛ぇ……」
「包帯足りねぇぞ!あるだけ持ってこい!」
「おいっ、こいつやばいぞ!早く……」
 あちらこちらで助けを求める声とそれを助けようとする声が飛び交う。
 それでも構わず、カトリアとアストは村長の方へ向かう。
 一人、いかにも高齢そうな土竜人を見つけた。
「村長」
 カトリアがその土竜人に声を掛ける。
「ん……?おぉ、カトリアかぁ?またえらい美人になったもんだ」
「お久しぶりです、村長。それで……」
 どうやら、カトリアと村長は知り合いのようだ。
「おぅ、この惨状ってか?ちょいとひでぇ目にあってな……」
 村長は近日中に起きた出来事を話し始める。
「季節的に、もう地底火山のマグマが沈静化しちまうからよ、その前に鉱山資源を集めとこうと思ったんだが、季節外れのテツカブラに出会してなぁ。それで皆パニックになっちまって、大怪我を負っちまった。中にゃ死人が出た始末だ」
「そんな……!?」
 思わずアストは声を出した。
 その彼の声に反応してか、村長はアストに興味を向けた。
「ところで、お前さんは誰だ?」
 カトリアがそれを説明する。
「私達の新しいハンターです」
「おぉ、期待のルーキーってことかい。……ところで、他の皆はどうした?ローゼに、サイネリア、フリージィだったか?」
 村長の口から、アストが聞いたことない名前が聞こえてくる。
 それを遮るようにカトリアが口を挟む。
「村長、それよりも現状は?」
「おぅ。もうマグマは沈静化してっから紅蓮石や獄炎石は採れねぇが、通常の鉱物を採らにゃならん。それでテツカブラが邪魔になってるってだけだ」
 狩り場が隣り合っているような集落ではモンスターによる被害は死活問題に関わる。
 特に、狩り場の鉱脈から鉱物を採取しなくては産業として成り立たないナグリ村ではなおさらだ。
「じゃあ、そのテツカブラってモンスターを狩らなくちゃいけないんですね?」
 アストはハンターとして自分がやるべきことを見いだす。
「おぉ。お前さんがやってくれるのかい?ルーキー、いや……名前はなんだ?」
「俺は、アスト・アルナイルです。カトリアさんの厚意で、狩りをさせてもらってます」
 アストは名乗る。
「アストか。んじゃ、ちょちょっとテツカブラを狩ってくれぃ。なぁに、カトリアのとこのハンターなら楽勝だろ?」
 ミナーヴァの中でのアストの名前は既に大層なものとして各地の集落に伝わっているのだろうか。
 あまり心地よいものではなく感じるアストだが、このナグリ村が困っているのは確かだ。
 力無き者の力になる。それがモンスターハンターだ。
「楽勝かどうかは分かりませんけど、全力を尽くします!」
「はっはっはっ。そういう言い回しとか、カトリアに似てやがるなぁ」
「……」
 アストは意気込み、村長は愉快そうに笑い、カトリアは複雑な表情を浮かべた。

 アストは準備を整えると、セージと共にすぐにでも狩り場へ向かっていった。
 丸一日眠ったライラ、エリス、シオンは怪我人の治療を手伝い、ルピナスはコックとして村人達に食事を振る舞っていた。
 その側で、カトリアと村長は二人で話し合っていた。 
「村長。実は私、もう……」
「何でだい?お前さんほどの……」
「ローゼもリアもフリージィも、私を庇って死んでしまいました……それ以来、私は……」
「だから、キャラバンなんて興したってわけかい?」
「はい……」
 ふと、カトリアの瞼から涙が落ちた。

 地底洞窟。
 季節によって、火山の活性化と沈静化を繰り返し、今は後者だ。
 豊富な鉱山資源にあふれた地底世界で、ナグリ村を支える生命線だ。
 アストは、崖っぷちに立っていた。
「まさか、ここから飛び降りろってわけじゃない、よな?」
「そんなに死にたいのかニャ?」
 後ろからセージの冷やかす声が聞こえる。
「んな分けないだろ。普通に降りるっての」
 アストの今の装備は、防具はもちろん作りたてのクックシリーズだ。 
 武器は、形状こそソルジャーダガーと変わらないが、さらにドスジャギィの素材を加えて強化した、コマンドダガーだ。
 アストは崖の縁に手を掛けると、僅かな凹凸に手足を掛けながら降りていく。セージもそれに続く。 
 こんな崖を毎日登り降りを繰り返しているのだ。
 土竜族のタフさに舌を巻くアストだった。