Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!トリップ付けるの推奨( No.913 )
  • 日時: 2014/04/10 11:32
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: v/kikNsS)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 二十一章 医者の雛

 ナグリ村では未だ絶望的な空気が漂っている。
 ミナーヴァのメンバー達も尽力を尽くしているが、それでも人手が足りなさすぎる。
 その上、大半がお情け程度の応急処置しか出来ず、手際も悪いため余計に時間がかかっていた。
 この非常事態でも、ミナーヴァではない別のキャラバンも村に訪れる。
 今は村長の代わりにカトリアが応対に出る。
 
 エリスは包帯を手に、必死に土竜族達の応急処置に当たっているが、一人一人にどうしても手間取ってしまう。
「……こんなこともちゃんと出来ないなんて……」
 自分の不甲斐なさにエリスは自嘲する。
 決してエリスが悪いわけでもなければ、土竜族が悪いわけでもない。
 モンスターと言う自然に巻き込まれただけだ。
 不意に、自嘲するエリスに声を掛ける者がいた。
「すみません、ちょっと代わってもらえますか?」
 エリスはその声に振り向いた。
 若葉のように爽やかな翠色の短い髪、青みのかかった紫色の瞳。耳や鼻が丸みを帯びているところ、人間の少女だ。外見的には、エリスよりは一つか二つ歳上に見える。
 少女の手には真新しい包帯が握られており、エリスが手当てしていた土竜人に近寄ると、直ぐ様行動に出る。
 あまりに見事な手捌きだ。
 ものの一分もしない内に包帯が巻かれた。
「もう大丈夫ですよ」
「お、おぅ。すまねぇな」
 少女に手当てされた土竜族は、すぐに別の所を手伝いに行く。
 エリスはその様子を惚けたように見ていた。
「……あの、あなたは?」
「私ですか?ただの通りすがりの医者の雛ですよ」
 少女はまたすぐに別の土竜族の手当てに当たっていく。

 突然現れた少女によって、ナグリ村の土竜族は瞬く間に手当てされた。
 カトリアと村長は、その少女と対面していた。
「いやぁ、助かった。一時はどうなるかと思ったけどよぉ、嬢ちゃんのおかげでどうにか立ち直りやがった。村を代表して礼を言わせてくれぃ」
 村長は深く頭を下げた。
「私からも、皆を手伝ってくれてありがとう」
 カトリアも頭を下げた。
 二人から感謝された少女は、照れたように謙遜する。
「いえいえ。大したことはしてませんよ」
 カトリアと村長は頭を上げる。
「ところで、あなたは今さっき来たキャラバンの方?」
 カトリアは、ミナーヴァとは別のキャラバンの馬車と少女を見比べる。
「いえ。私はただ便乗させてもらっていただけで、特別な繋がりは何もありませんよ」
 少女も自分が乗ってきた馬車を一瞥する。
「申し遅れました。私はマガレット・マカオンです。つい先月に医療学校を卒業したばかりで、今はまだ実績を積んでいる最中の雛です」
 少女、マガレットの自己紹介に、カトリアと村長は感心したように溜め息をついた。
「へぇ、お医者さんなんだ?」
「どうりで手際がいいわけだな。こりゃおでれぇた」
 ふと、マガレットとカトリアの目が合う。
「質問を返すようですけど、あなたは?」
 マガレットはカトリアを向きながら訊く。
「キャラバン、ミナーヴァの団長を努めてる、カトリア・イレーネです」
 カトリアも礼儀正しくお辞儀しながら答える。
 その名前を聞いてか、マガレットは考えるような表情を見せた。
「ミナーヴァ……あ、確か、バルバレの方で最近有名になりつつある、「美少女に囲まれている超絶美少年ハンターが所属しているキャラバン」のことですよね」
「……え?」
 カトリアはその「美少女に囲まれている超絶美少年ハンターが所属しているキャラバン」を聞いて固まった。
 カトリア自身、ミナーヴァをそんな風に過大評価をした覚えはなく、ましてや同名のキャラバンも聞いたことがない。
 そこに村長が口を挟む。
「あん?あいつ、そんなに美少年って感じか?」
 そう、アストは特別凄いハンターでもなければ、特別美しい容姿を持っているわけでもない。どこにでもいる、普通の少年ハンターだ。
「いえ、回りから聞き齧っただけのことですから、ほんとかどうかは分かりませんけど……」
 少なくとも、「美少女に囲まれている」は当てはまるだろう。
 問題は「超絶美少年ハンター」の方だ。そこは間違いなく尾ひれ付きの情報だろう。

 今この瞬間、狩り場でアストがくしゃみを一発かました。