Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!目指せ過去ログあと五十!( No.975 )
  • 日時: 2014/04/15 20:49
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: qoX3QrmD)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 二十九章 忍び寄る影

 何度も地底洞窟に潜ってきたため、アストにとってこの地は遺跡平原と同じくらい馴染みのある狩り場になっている。
「ドスゲネポスと言ってもまぁ、難しい相手ではニャい。さてアスト、覚えているニャ?」
「分かってるよ。もう、テツカブラの時みたいな真似はしない」
「その言葉、偽りなしと捉えるニャ」
 セージは頷くと、相棒、ラギアネコアンカーを軽く手の中で遊ばせた。
 アストも支給品を受け取ってポーチにそれらを仕込ませると、コマンドダガーを軽く振ってみる。
 調子は良好だ。
「よし、行くか。クールにな」
「ニャアにがクールニャ。お前なんぞセールで十分ニャ」
「……俺は売り物かっつーの」
 いつものように軽口を叩き合い、アストとセージはベースキャンプを降りていく。
 この時は、まだ影に気付くこともなく……。

 一方のナグリ村では、慌ただしい状態になっていた。
 エリスのギルドからの手紙によると、今の地底洞窟にはドスゲネポスだけではなく、別の大型モンスターも発見されているらしい。
 ただ、「小型モンスターではない大きな影」が見えただけらしく、具体的に何がいたのかは記述されていなかった。
「……私のミスです。私が連絡無しに依頼を受けさせてしまったからに、アストさんとセージが……」
 エリスは申し訳なさそうに縮こまる。
「誰が悪いとか関係ないって。で、どうすんのさカトリア」
 ライラは自分のせいだと思い込むエリスをたしなめると、カトリアに向き直る。
「他所のハンターは皆出ちまったし、今からギルドに応援を呼んでたんじゃ間に合わないかも知れない」
 もうアストとセージは狩り場にいるだろう。
 もしも、ドスゲネポスとの戦闘中にその大型モンスターに乱入されては、アストの実力では捌ききれないし、セージも二頭以上の大型モンスターを同時に出来るか分からない。
「……、…………」
 カトリアは深く思案すると、意を決したように口を開いた。
「私が行く」
「「!?」
 ライラとエリスは驚いて目を見開いた。
「私が行くって……カトリア、アンタ……」
 ライラが反論しようとするが、カトリアはそれを挟ませない。
「ライラ、『アレ』使えるよね?」
 カトリアの言う『アレ』を聞いて、エリスは首を傾げ、ライラは一歩退いた。
「カトリア……本気で言ってんの?」
「言ったはずでしょ。もしも、本当にもしもの時に、私が皆を守るって。その対象は、アストくんとセージにも含まれるよ。だからお願いライラ。私を行かせて」
 カトリアは本気の目でライラの瞳と向き合う。
「……チッ」
 ライラはカトリアと交わす視線を逸らして舌打ちした。
 そして、呆れるように溜め息混じりに答えた。
「定期的に整備はしてる。だけど使ってはない。不備があっても文句無しね。それと……」
 ライラはカトリアに一歩近付くと、彼女を強く抱き締めた。
 竜人族特有の尖った耳をカトリアの色白いうなじに当てる。
「死ぬんじゃないよ。あのバカとセージだけ帰ってきて、アンタだけ帰ってきませんでした、なんて絶対許さないから。そんなこと、『あいつら』だって望んでないんだ。アタシだって望んじゃないよ。アンタのいないアタシなんて、要らないんだから」
「ライラ……」
 カトリアは抵抗もせずに、ライラに抱き締められる。
「行くんなら、ちゃんと助けろ。んでもって、アンタも帰ってこい。それだけ約束な」
「うん」
 ライラはカトリアから離れると、自分の工房へ向かった。
 カトリアもそのあとに続いた。

 エリア1。
 アプノトスの群れは、悲鳴をあげながら逃げ惑っていた。
 その中心にいるのは、黄土色の巨体だ。
 逆三角形のトサカ、突き出た二本の牙、血のように赤い眼。
「ギャアァァァッ、ガアァァァッ!」
 そいつこそが、ゲネポス達の親玉、ドスゲネポスだ。
 ドスゲネポスは、アプノトスの子供に飛び掛かり、拘束する。
「ヴォォォォォッ!」
 親のアプノトスは突如反転し、我が子を食らおうとするドスゲネポスに攻撃を仕掛ける。
「ギャアァッ、シャギャアァァッ!」
 ドスゲネポスは親のアプノトスを睨み付けると、子供のアプノトスを放って親のアプノトスに向き直る。
「ヴゥオォォォォォッ!」
 親のアプノトスは体当たりをドスゲネポスに向かって放つが、ドスゲネポスは軽くそれをあしらう。
 その隙に、ドスゲネポスは親のアプノトスの側面を取った。
「ギャアシャアァァァッ!」
 ドスゲネポスの牙が、親のアプノトスの横腹を捕らえた。
「ヴォッ!?ヴゥゥゥ……!?」
 親のアプノトスは突然身体を痙攣させ、その場で横たわった。
 ゲネポス種は、牙に神経性の麻痺毒を分泌させてそれを獲物に打ち込むことで無力化させる戦法を得意とする。
 親のアプノトスが動けなくなったのを確認すると、ドスゲネポスは子供のアプノトスを再び踏みつけた。
 そして、親の目の前でその子供を食い漁った。
 親は子供が食われていくことを見ていることしか出来なかった。
 その様子を、アストとセージは見ていた。
「ひでぇ……わざわざ子供を狙うなんて」
「酷いニャ?どこがニャ。食べやすい物を食べたいのは人間もアイルーも同じニャ。ドスゲネポスは行って当然の行動を取ったのニャ」
 セージな冷酷に目の前の惨劇を淡々と語る。
「分かってるけどさ……でも、なんか許せねぇ」
「…………」
 アストとセージはそれ以上言葉を交わさず、ドスゲネポスを見据えた。
 子供のアプノトスを食い終えたドスゲネポスは、新たな獲物、アストとセージに目を向けた。
「シャギャアァッ、シャギャアァァッ!」
 アストとセージはそれぞれコマンドダガーとラギアネコアンカーを抜き放った。