Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!目指せ過去ログあと二十!( No.997 )
  • 日時: 2014/04/18 11:19
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: BiyQVKsj)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 三十三章 異名の重み

 深緑のガンナーの介入によってどうにかその場を凌いだアストとセージは、カトリアを連れてベースキャンプに撤退していた。その途中でセージは一度エリア2の方に入っていった。
 ベースキャンプのベッドの上で座るのは、カトリア。
 ベッドの回りにいるのは、アストとセージ。
 深緑のガンナーは席を外してもらっているのは、セージがそう頼んだからだ。
「怒るつもりはニャいが……なぜこんなことをしたかを聞かせてもらうニャ」
 セージはそうカトリアに向けて問い掛けた。
 アストは今更ながら、カトリアのその装備を凝視していた。
 形から見れば空の王者リオレウスのモノだという憶測はついていたが、それはリオレウス本来の赤色ではなく、目映いばかりの銀色だ。
 それに、武器にも同じような特徴が見られた。
 長柄のそれは、形から見るに操虫棍だろう。
 上半分が銀色で、下半分が金色という他に見られない独特なカラーリングを持っている。
「…………助けようと、したの」
 カトリアは消えてしまいそうな声でぽつりぽつりと話始めた。
「エリスちゃんから、地底洞窟にドスゲネポスの他に大型モンスターが見られたって聞いて、いてもたってもいられなくなって……」
「それで、あんな真似をしたのかニャ?」
「うん……」
 カトリアは頷きながら俯いた。
 そこで、アストが入ってくる。
「俺は何となく思ってましたよ。カトリアさん、実はハンターなんじゃないかって」
 アストはカトリアとセージに向けて続ける。
「普通の女の子が完全装備したハンターの体重を支えられる分けがありませんし、その装備の外し方だって素人とは思えないくらいスムーズ、むしろ俺より上手かったですから。……まぁそんなことはどうだっていいです。それより」
 アストはカトリアに詰め寄った。
「さっきもそうでしたけど、何で反撃しなかったんですか?」
 それを聞いて、カトリアはビクッと肩を震わせた。
「それに、モンスターの前で動かないなんて自殺行為ですよ。下手したらさっきので死んで……」
「アストッ!!」
 アストの言葉を、セージが怒鳴りで遮った。
「カトリアはもうっ、モンスターの前で武器が握れなくニャったんだニャッ!」
「えっ……!?」
 セージの感情的な怒りにも驚いたアストだが、その言葉にも驚いた。
「数年前に仲間が全滅してっ、そのショックで……」
「失礼、少し良いだろうか?」
 すると、先程までテントの外で待っていた深緑のガンナーがテントの中に入ってくる。
 その碧眼は真っ直ぐにカトリアに向けられる。
「あなたはもしや、四大女神の一人、『猛焔』だろうか?」
「!?」
 アストは驚きながら深緑のガンナーの方へ振り向いた。
 深緑のガンナーの口から出た四大女神と、カトリアに向けての『猛焔』の二つ名。
「その銀色のレウスシリーズに、金と銀の操虫棍……まさかとは思ったが」
「嘘だろ……カトリアさんが、四大女神の『猛焔』!?」
 なぜそんな大層な人物が、ハンターという身分を隠してキャラバンを興したのだろうか。
 そもそも、ミナーヴァはアストがバルバレに流れ着いた時と同じくらいに結成されたとカトリアから聞いている。
 それに、ナグリ村の村長が前々からカトリアのことを知っていたのも気に掛かっていたのだ。
 カトリアのその名前は『猛焔』として世界に広がっていたのだ。
「あなたは?」
 カトリアは顔を上げると、深緑のガンナーに向けて疑問を向けた。
「申し遅れた。ニーリン・ガーネット……フリーランスのハンターを生業としている者だ」
 深緑のガンナー、ニーリン・ガーネットはアストとセージも一瞥する。
「『深緑の流星』の方が分かりやすいか?」
 それを聞いて、アストは首を傾げ、カトリアは大きく目を見開いて、セージは目を細めた。
「『深緑の流星』……つい最近になって名を聞いたことがあるニャ。モンスターの視界外からの超長射程爆撃を得意とするヘビィボウガンナー……空から遠い空へ駆ける流星のような弾という意味からその名が付けられたと聞いているニャ」
 さすがはセージ。戦闘技術も知識も並のハンターより優れている。
 エリアの端から真ん中にいたネルスキュラの頭に正確に弾を当てれていたのは、偶然ではなかったのだ。
「皮肉のつもりで言ったのだがな」
 ニーリンは腕を組みながら、溜め息をついた。
「異名というのは足枷のようなものだ……周りから実力以上の結果を求められ、失敗した時の理不尽さは耐え難いものがある。毎日が楽じゃない」
 アスト自身は、周りから囁かれるほどの実力も異名もないので、ニーリンのようなハンターの気持ちは分からなかった。
「話が過ぎたな。私は放浪の途中だったが……君達は狩りの途中のようだな」
 アストが答えた。
「依頼は、ドスゲネポスの狩猟だったんだ。途中であの変な蜘蛛、ネルスキュラ?が乱入してきて……ってそうだ、ドスゲネポスは!?」
 崖の上から落ちたのを最後に姿を見ていない。
「死んでいたニャ。あの状態で高所からの転落は間違いなく死ぬニャ」
 セージはドスゲネポスを転落させた張本人だ。
 先程エリア2の方へ向かったのは、その確認だったのだ。
「ほれ、ドスゲネポスの皮ニャ」
 セージはポーチからドスゲネポスの皮を取り出して見せた。
「じゃあ、取り敢えずの依頼は達成か……でも、棍本的な依頼は果たせてない」
 アストはベースキャンプの外を見た。
「ドスゲネポスの狩猟は、商隊のためだったんだ。ドスゲネポスは狩れたけど、今度はネルスキュラが商隊の妨げになるかもしれない」
 そう、ドスゲネポス狩猟の目的はそれだ。しかし、ドスゲネポスに代わってネルスキュラが商隊を襲うのでは意味はない。
「だったら、次はそのネルスキュラを狩らないとっ!」
「落ち着け少年」
 ニーリンはアストをたしなめた。
「商隊のために躍起になるのはいいが、ネルスキュラは簡単な相手ではない。奴の対策の道具もないのだろう?私が君に飲ませた漢方薬がその一つだ。依頼そのものは達成しているんだ。ここは一度帰還して、体勢を立て直す方が吉だ。そうは思わないか?」
 ニーリンの言葉は正論かつまともだ。
 アストもそれには賛成した。
 結局カトリアのことはおざなりになってしまったが、今はそれよりも大切なことがある。
 早々に帰還の準備を整えていく。