Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!( No.141 )
  • 日時: 2014/04/27 13:42
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 4fhONycJ)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 四十二章 雲の隙間に闇が蠢く

 ワルキューレは急激にその船に接近していく。
 ようやく、アストの視力で船の様子が見えた。
 まずはハンター。
 身に付けている防具は、真っ白に赤く縁取られた分厚い服のような防具……恐らく、フルフルシリーズだろう。
 その手に握るは、細長く鋭利な刃。形状から見るに、太刀だろう。
 その様子はすごぶる悪そうで、肩で呼吸を繰り返し、そのフルフルシリーズは半ば中破しており、血が垂れ流しになっている。
 次は、その白いフルフルシリーズを蝕むかのような、その黒いモンスターだ。
 真っ黒。この暗い嵐の中ではよりそれを引き立てるほど、真っ黒な体躯。
 背中には、まるでボロボロのマントのような翼。
 甲板を踏み締める、四本の脚。
 それが蠢く度々に飛び散る、妖しげな色をした鱗粉。
 それらを見て、アスト、ニーリン、セージは心中で三者三様の言葉を呟く。
(なんだこいつは……こんなやつ、見たことないぞ……?)
(翼がありニャながら、四本の脚……古龍種かニャ?しかし、角らしい角が見当たらんニャ……他に該当する種がおらんニャ)
(あの鱗粉はなんだ?あまり吸いたいものではないようには見えるが……)
 思考をそこまでに、二人と一匹は動いた。
 このワルキューレのバリスタは、撃龍船と同様に船の両サイドに設置されてある。
 アストとセージはバリスタの弾の収納スペースから何発か取り出し、左右のバリスタのターンテーブルを回転させてその黒いモンスターに照準を合わせていく。
 一方のニーリンはそのアストのバリスタの隣にある砲に付いていた。六本のシリンダーを円形状に纏めたような形の砲身をしている。
「間合いに入った、撃てっ!」
 ニーリンの掛け声に、アストとセージは反応する。
「当たれっ!」
 アストはバリスタの装填し、引き金を引いた。
 弦が一気に引き絞られ、一対の鋼鉄の槍が嵐を切り裂きながらその黒いモンスターに飛来する。
 バリスタの弾は外すことなく黒いモンスターを直撃し、翼を穿つ。続いてセージのバリスタも同じ部位を捕らえる。
「グオォォォォッ!?」
 黒いモンスターは突然の攻撃に驚いて仰け反る。
 ワルキューレとその船との距離がほぼゼロに近くなった時、ライラの操縦によって向きを修正され、その船と並走するような形になる。
「まぁ、これでも貰ってくれ。黒いモンスターくん?」
 ニーリンはその砲の引き金を引いた。
 すると、その六本のシリンダーが高速回転を始め、凄まじい勢いで弾丸を撒き散らした。
 ライトボウガンの速射機構を応用し、さらには火力の高い蒸気機関で出力を大幅に向上させた重機銃だ。
 これは、軍艦の対空機銃のようなモノであり、それを参考に発展強化を遂げた火器で、土竜族からは『ガトリング』と呼ばれている。
 この嵐の雨のような弾丸が黒いモンスターに降り注ぐ。
 鱗や翼、顔面を捕らえ、黒いモンスターは嫌がるようにその場から飛び立つ。
 ようやく船が空いた。
 アストはバリスタから離れて、その船に乗り込むと、甲板で消耗した様子を見せているハンターに駆け寄る。
「おいっ、大丈夫かっ!」
「はぁっ、はぁっ……ア、アンタは……?」
 フードのようなフルフルヘルム被っているため、遠目から顔は見えなかったが、いざ間近で見てみると、その容姿はとても可愛らしい顔立ちをしていた。
 薄紫の瞳は疲労と困惑に満ちてアストの赤い瞳を映す。
 顔立ちから見るに、少年、もしくは少女だろう。このフルフルシリーズが男性用というところを見ると、どうやら中性的な容姿を持った少年のようだ。
「今はいい。アンタは船室に避難するんだ。ここは、俺達が何とかする」
 アストは目の前の少年に言い聞かせてやるが、少年は弱々しく首を横に振った。
「駄目だ……、この船は、もう、保たない……。俺は自力で何とかなるけど、あっちの、彼女だけは……助けてくれ、お願いだ……!」
 少年は苦痛に喘ぎながら、アストの背中を指す。
 振り向けば、側面からでは見えなかったのか、船頭への階段と階段の間に、倒れている少女が見えた。
 ハンターではないのか、私服らしき服はズタズタにされ、重傷を負っているようだ。
 それを確認すると、アストは険しい表情で少年に向き直り、少年を強引に引っ張る。
「カッコつけんなっての!アンタだって死にかけてんだろっ?自力で何とかなるわけないだろうがっ。俺はアンタも一緒に助けるっ!」
「ア、アンタ……?」
 少年は驚いたようにアストを見詰める。
「ボヤボヤするなアルナイルくんっ、来るぞ!」
 ニーリンの怒号がアストの周囲への警戒を強めた。
 見上げると、黒いモンスターが滞空しながらブレスを放ってきた。
 黒い塊のようなブレスだ。
「っ!」
 アストは少年の前に立って、コマンドダガーの盾を構えた。
 直後、コマンドダガーの盾に黒いブレスが激突する。
「ぐぅぅぅぅぅっ…!」
 実体のない攻撃のはずなのに、酷く鈍器で殴られたような感覚が走る。
 それと同時に、黒い何かが飛び散り、アストの鼻や口に浸入する。
「うっ、ごほっ……!?なんだこれっ……」
 自覚症状を自覚出来るほど、アストは自分の身体の異常に気づく。
 間髪入れず、黒いモンスターは羽ばたくと一気にアストと少年のいる甲板に突撃してくる。
 アストは少年をより強引に引っ張り、倒れている少女の方へ逃げる。
 寸前、アストの頭上を黒いモンスターが掠めた。
 背筋に冷や汗が溢れたが、それを気にしている場合ではない。
 セージも船に乗り込んでくる。
 アストとセージは、少年と少女を守るように黒いモンスターと相対する。
「グルウゥッ……アァァァァァァァァァァァッ!!」
 黒いモンスターは、アストとセージに向き直ると、人の嘆きのような咆哮を放った。
 アストとセージは、それぞれコマンドダガーとラギアネコアンカーを抜き放った。
「こいつはっ……油断ニャらんニャ。アスト、気を付けろニャ」
「言われなくても」
 セージは未知のモンスターを前に、より警戒を強めているのだろう。いつもの軽口がないほど。
 この瞬間も、アストは自分の身体の異常が気にかかっていた。