Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!( No.273 )
  • 日時: 2014/05/03 15:52
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: 7bqXgb6L)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 四十八章 ゴア・マガラ再び

「情報の通り、ゴア・マガラによる各地の被害は拡大しつつあります。このままでは、より多くの人だけではなく、私達ミナーヴァにも再び被害を被るかもしれません。私達はこれより早急にバルバレに向かい、ギルドマスターからの援助を受けて、ゴア・マガラの狩猟に向かいます。ハンター各人は出航の準備を迅速に、出航は本日の夕方を厳守とします」
 カトリアが状況を説明していく中、ニーリンは挙手した。
「何ですか、ニーリンさん?」
「正直なところ、私達には無関係では?」
 ニーリンは言葉を続ける。
「なぜギルドナイトがそのゴア・マガラとやらの狩猟を行わず、一介のハンターである我々に任せるのだ?」
 そう、ニーリンの言うことは確かだ。緊急を要するような相手は、一般のハンターでは危険すぎるために任されず、ギルドナイトのような特務隊が引き受けるものが普通だ。まれに、個人的に有能なハンターが任されるケースはあるが、それは除く。
 だが、アスト達はギルドナイトに招聘される程のハンターではない。
 一般のハンターを駆り出すそれは、よっぽど急を要するか、大人数での狩猟になるかのどちらかだ。
「これはギルドマスター独自の依頼らしいです。今のギルドは腐敗が進んでいることはあなたもご存知ね、ニーリンさん?」
「まぁな。ごく一部のギルドナイトは有能な者が多いが、残りのほとんどがギルドナイトと言う名を騙るただの狸だ。不当な弾圧も多発していると聞いているよ」
 アストはそれを聞いていて内心で驚いた。
 まさか、自分達を陰で支え、取り締まっていた者達が無能の集まりだったと言うのだ。決して全くの無能ではないだろうが、人格が破綻していたりすることを指しているのだろう。
「もはや今のギルドナイトはアテにならないと、判断を下した結果、ゴア・マガラとの交戦経験がある私達に白羽の矢を立てた、とのことです」
 カトリアはついにぶっちゃけたことを暴露した。
 ニーリンはそれを聞いて鼻で笑うように溜め息をついた。
「はっ……つまり、遠回しに私達はギルドナイト以上の優遇をされるわけだ。……まぁ、それはいい。私は個人的に奴が気に入らなかったんだ。ちょうどいい捌け口が見つかったと思うことにするさ。アルナイルくんとセルジュくん、オトモくんはどうだ?」
 ニーリンは他のハンター達にも目を向ける。
 最初に答えたのはツバキ。
「見返りとして、ユリを安全に帰してくれる手筈を用意してくれるなら、それを受ける」
 何事もユリのことを先に考えるツバキ。それが身を滅ぼす結果にならなければいいが、と思うアストだった。
「それに関しては、私の方から打診します。それくらいなら融通を利かせてくれるはずです」
 ツバキの意見を取り入れるカトリア。
 次はセージだ。
「オレは、どちらでも構わんニャ。カトリアがやってくれと言うのなら、オレはそれを成すニャ」
 腕を組みながら、素っ気なく答えるセージ。しかし、アストには分かっていた。彼はカトリアのためであれば、どんなことにも躊躇しないことを。そう言った点では、ユリを想うツバキも同じ穴の狢かも知れないが、その想いは本物だ。守りたいものを明確に見出だしている者ほど強い存在はない。だからこそ、セージは強いのだ。
「ありがとうセージ。でも、無理はダメだからね?」
 カトリアはセージに感謝しながらもたしなめる。
 最後は、アストだ。
 ニーリンは個人的な理由で、ツバキはユリのため、セージはカトリアのため。
 では、自分はどうか?
 アストは何も考えることなく、答えた。
「俺は世界だとか大層なことは分かりません。でも、俺はこのミナーヴァを守りたい。そのために戦います」
 アストのその言葉で、周りが沈黙に包まれた。
「え?俺、なんか変なこと言いました?」
「いや、まぁ、なぁ?セルジュくん?」
 ニーリンはどこか笑いを堪えているように見えるのは気のせいだろうか。
 ニーリンに話を振られてか、ツバキは目を逸らしながら、呆れたような溜め息混じりで答えた。
「はぁ……アスト。何でお前って、そんな恥ずかしいこと平気で言ったりするんだよ?こっちまで恥ずかしいっての……」
「お、俺、そんな恥ずかしいこと言ったのか?普通に正直に答えただけなんだけど……」
「自覚ニャし、と……だからお前はバカニャんだ」
 とどめを指すかのようなセージの容赦ない「バカ」呼ばわり。
 その様子を見て小さく笑うカトリア。若干その頬が赤いのは内緒。
「決定、かな。では、本日の夕方にここを出航します。準備を早急にお願いします」
 最後をしめるカトリア。
「はい」
「うむ、問題ありませんぞ」
「了解です」
「承知したニャ」
 ハンター三人はそれぞれの馬車へ戻っていく。
 ふと、セージはカトリアに近付いた。
「カトリア。自覚はしてるのニャ?」
「何が?」
「お前の、アストへの……ム、ニャ?」
 セージはいきなりカトリアに口を塞がれる。
「今はそれを言わないで、セージ。私が自分でそうだって分かるまで見守ってほしいの。まだ、私だって分からないから。それに……」
「ワワッニャ、オウイイニャ」
 くぐもった声でセージは答える。
 カトリアはセージの口から手を離す。
「さっ、私だって今から忙しいんだから、手伝って」
「ウンニャ」
 カトリアとセージは、馬車へ向かっていく。

 その日の夕方、ワルキューレはチコ村を出航し、赤く燃える大海原に旅立った。
 行き先はバルバレ付近の港町。そこからは徒歩だ。
 戦いの時は、刻一刻と迫りつつある……。