Re: モンハン小説を書きたいひとはここへ!二代目!( No.336 )
  • 日時: 2014/05/09 18:01
  • 名前: ダブルサクライザー ◆4PNYZHmIeM (ID: s6WtQog3)

 モンスターハンター 〜輪廻の唄〜

 五十一章 アストとツバキ

 バルバレに到着したのは、日が顔を出して間もなくだった。
 そこまでの間、アストはずっとツバキのことを考えていた。
「……俺は、『嘘つき』なんだ。『嘘つき』がユリを守るなんて、ちゃんちゃらおかしい話だったんだ」
 その言葉がアストの心にへばりつき、眠れない夜をさらに眠らせてくれなかった。
(あいつは、何に嘘をついてるって言うんだ……?)
 自分か、ユリか、他人か。
 朝になったら、もうツバキはいつも通りに振る舞っていた。
 ユリのことを一番に考える、生真面目で自己犠牲な少年にだ。
 しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。
 今は、バルバレの集会所の席に座っている。
 カトリアとセージがギルドマスターと向かい合って真剣に話し合っている。
 現在状況、ゴア・マガラに関する情報、ユリの保護について……話始めればキリがないだろう。
「んー?どうしたアルナイルくん。辛気臭い顔などして、間抜け面が余計に間抜けに見えるぞ?」
 ニーリンは眉間に皺を寄せていたアストの顔を指でつつく。
「……ニーリンはいいよな。考えることが少なそうで」
 言うつもりはなかったのだろうが、アストはつい卑屈になってしまう。
「おや?いつものアルナイルくんには見られない態度だな。いつも私が挑発的な言葉を口にすれば、いつもの君ならムキになって言い返してくるはずだが、今日はそうもいかないか?」
「っせーな……眠いんだっての」
 アストは机に突っ伏した。
「事と理由が噛み合ってないぞ、アルナイルくん。何があったか知らんが、お姉さんに相談してみるがいい」
 ニーリンは上から見るようにアストの突っ伏している後頭部を見下ろす。
 ちなみに、今このテーブルにはアストとニーリンしかいない。
 ツバキはユリの護衛でここにはいない。
 だったら話してもいいか、とアストは頭を上げると、ニーリンに昨晩の事を話した。
「ふむ……意味深だな。『嘘つき』か……」
 さすがのニーリンも、これには眉を歪ませざるを得ないようだ。
「ツバキは、一体何に嘘をついてるんだろうな……?」
 アストは先程から三回ほど溜め息をついている。
「そう腐るな。溜め息をつくと幸せが逃げるぞ?」
「…………」
 そんな迷信など信じているわけではないアストだが、今だけは何となく信じてしまう。
 もうしばらくして、カトリアとセージが戻ってくる。
「アストくん、ニーリンさん。ツバキくんは、ユリちゃんのところ?」
 カトリアがツバキの所在について訊いてくる。
「アヤセくんの護衛以外何も聞いてませんぞ、イレーネ殿」
 それを答えるのはニーリン。
「そっか。現況を報告するから、ユリちゃんとツバキくんの所に行こうか」
 カトリアはアストとニーリン、セージを連れて集会所を出る。

「え?ツバキくんですか?」
 今ユリとツバキは、寝室用の馬車で住み込みさせてもらっている。
 しかし、今ここにいるのはユリだけだった。
「ツバキくんでしたら、さっきマガレットさんの所に行ってくるって出たばかりですよ」
「マガレットさんの所に?」
 カトリアは目を丸くした。
 なぜ彼がマガレットの診療所に行くのかが分からなかった。
 そのなぜを考えても仕方無いので、カトリア達はマガレットの診療所に向かった。

「ぅっ、んっ……なぁ、もっとギッチギチにしてくれないか?」
「は、はい」
「くっ、うぅっんっ……うん、これくらい、だな」
「本当に、いいんですか?ツバキさん」
 診療所の中で事を終えると、マガレットとツバキは話し込んでいた。
「あぁ。その方が俺にとっても都合がいいし、余計な混乱を起こしたくない。悪いな、マガレット。俺のために付き合ってくれて」
「いえ……でも、大丈夫なんですか?下手をしたら……」
「俺はハンターになってから分かったんだよ。ユリを守るためにも、変わらないといけないってな。こんなことを話せるのはユリと、俺を診たマガレットぐらいなんだ」
 ツバキはその身体にフルフルシリーズを身に付けていく。
「こんなことするくらいなら、最初から……」
 不意に診療所のドアがノックされる。
「あ、はい!」
 マガレットは駆け足で出入り口に向かう。
 ドアを開けると、カトリアが待っていた。
「マガレットさん、ツバキくんいる?」
「は、はい。呼んできますね」
 マガレットが踵を返そうとすると、既にツバキはマガレットの背中にいた。
「俺に何か用ですか?カトリアさん」
「えぇ。先程、ギルドマスターから依頼状を受け取りました。これ」
 カトリアはツバキにその依頼状を見せた。

 未知の樹海に滞在する、ゴア・マガラの狩猟

 ついにこの時が来たのだ。
 これさえ乗り越えれば、ユリは無事に家に帰れる。
「ゴア・マガラの狩猟ですね。カトリアさん、ユリに関する手筈は……」
「ギルドマスターを通じて整えさせています。未知の樹海への出発は、今日の昼過ぎです。何か都合があれば、私の方から打診してみるけど……」
「問題ないですよ。昼過ぎからなんでしょう?」
 ツバキはフルフルアーム同士をぶつける。
「えぇ。アストくんとニーリンさん、セージは大丈夫だから、ツバキくんだけだったの」
 カトリアは後ろに控えさせていたアスト、ニーリン、セージに向き直る。
「予定に変更なし。定時通りです。いいですね?」
 カトリアの言葉に全員が頷く。
 その後は解散となったが、アストはツバキに声を掛ける。
「なぁツバキ、ちょっと来いよ」
「え?いいけど、手短にな」

 診療所を出て、バルバレの外れに来ていた。
「ツバキ、正直に答えてくれよ」
 アストはツバキと向き合う。
「お前さ、無理してるだろ?」
 その言葉で、一瞬だがツバキの肩が動いた。
「ツバキが何にたいして嘘ついてるか知らないけどさ、辛かったらすぐに言ってくれよ」
 アストのその言葉を聞いて、ツバキは動揺する。
 だが、答えるわけにはいかない。
「無理はしてないって。アストが心配するようなことじゃないし」
「そっか……」
 話したくもないことを無理に問い質すほど、アストは強引になれない。
 本人が大丈夫なのだからきっと大丈夫だと、信じるしかない。
「で、用件はそれだけか?アスト」
「あ、うん。邪魔したな」
 アストはその場から立ち去っていった。
 そのアストを見送ってから、ツバキはフルフルメイルに手を押し付ける。
「本当に大丈夫なわけないだろ……お前、優しすぎるんだよ……」
 今日の昼過ぎにはもう出発だ。
 ツバキも準備のためにその場から立ち去った。
「辛かったら、すぐに言ってくれよ」
 その言葉を反芻しながら……。